「おもむろに」というと、早いのか遅いのか | 賢脳トピックス

日本語には、普段何気なく使っている言葉であっても、正確に意味を言うように言われると、うまく言えないといったような言葉もあります。

「おもむろに」と「やおら」の速さとは

「彼女はおもむろに席を立ち、私のほうを見た」

小説などにも出てきそうな感じの文章ですが、この文章からどのようなソーンが想像できるでしょうか。
スクッと勢いよく席を立ったのか、落ち着いてゆっくりと席を立ったのか、どちらなのでしょうか。

「おもむろに」を漢字で書くとその答えがわかります。
「おもむろに」を漢字で書くと、「徐に」となります。つまり徐々にの「徐」です。
この「徐」という感じには、少しずつ変化するという意味があります。徐行運転という言葉からもわかるように、ゆっくりとというニュアンスになります。

「彼はやおら話を始めた」
おもむろによりは使われないかもしれませんが、「やおら」も日常会話の中で使われたりすることはあります。

「やおら」は、静かに体を動かすさま、また徐々に行うさまということになるので、こちらも、ゆっくりと話を始めたという意味になります。

「やおら」は源氏物語にも登場する言葉で、人に知れぬように物音を立てずにするさま、そっと、こっそりとという意味で使われています。

それでは、ゆっくりとではなく、いきなりという場合はどんな言葉を使うのかというと、「やにわに」という言葉になります。

取りつく〇〇がない

せっかく訪問したのに、相手につっけんどんにされ、話を進めるきっかけすら見つからないようなとき、「まったく、取りつく暇もないんだから」という人がいます。
しかし、これは誤用なのです。

忙しそうにしているから、つっけんどんにされ、話をはじめるタイミングがつかめないというようなイメージから、相手にしてくれる暇すらないぐらい忙しいのだろうということで、「取りつく暇もない」と思い込んでいる人もいるようです。

しかし、正しくは、「取りつく島もない」となります。

これは、船で海に出てはみたが、たどりつく島がないと困ってしまいます。その困った様子を喩えたのが、「取りつく島もない」ということなのです。

暇がなくて相手にしてもらえないのではなく、頼れるところがなくて困った、話が進まなくて困ったという様子を「取りつく島もない」と言っているのです。

小心者でも破天荒になれる

破天荒というと、規格外れの豪快な人をイメージする人も多いかと思います。
その文字からしても、そのようなイメージを持つ人が多いのですが、破天荒はけして大胆で豪快な様子や人を言ったものではありません。

「破天荒」は、「破」+「天荒」で考えないといけないのです。
「天荒」は、まだ開かれていない未開の地という意味になります。それを破っていくわけですから、誰もできなかったことを初めて成し遂げることを破天荒というのです。

中国の唐の時代、難しい役人の試験に合格する人が100年以上も現れていなかったのですが、そのため未開の地という意味でその試験は「天荒」と呼ばれるようになりました。

ところが、とても優秀な人物が現れて、見事合格したのですが、人々は「天荒」を破ったと絶賛し、その合格した人のことを「破天荒」と称したというのが語源になっています。

つまり、小心者で臆病であっても、それまで誰もなしえなかったことを成し遂げれば、破天荒な事業を成し遂げたということになるのです。

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