なぜ脳は、エピソード記憶を重視するのか | 賢脳トピックス

学生時代が終わり、就職したとしても、昇進試験を受けたり、資格試験を受けたり、TOEICテストを受けるように言われたり、そういうことがなくても、新しい仕事に関連する専門書を読んで、必要な事項を頭に入れていかなければなりません。

しかし、学生のころ記憶力まかせでどんどん覚えていた人も、さすがに10代・20代の頃のようには覚えられなくなってくるものです。

年とともにエピソード記憶

年とともに、丸暗記する能力は低下してきてしまいますので、同じことを覚えるにしても、昔は1回で覚えられたのに、3回反復しないと覚えられなくなってきたりします。

しかし、その代わりに、年とともにいろいろな経験をつみ、エピソード記憶で覚えることが得意になってきます。

記憶には、意味記憶エピソード記憶があり、意味記憶とはいわゆる丸暗記になります。

そして、どちらが脳に定着させやすいかというと、圧倒的にエピソード記憶なのです。

よく覚えているエピソード記憶

エピソード記憶がいかに強い記憶かというと、例えば、受験の時に一生懸命覚えた英単語も、何年も使わずにいると、かなりの量忘れてしまったりします。

しかし、特に覚えるつもりがなくても、昔いった旅行でのちょっとした会話を一言一句覚えていたり、細かな風景を覚えていたり、食べたものを覚えていたりするものです。

たった1回、しかも覚えるつもりがなくて経験したことなのに、鮮明によみがえってきたりします。

人類は原始時代からエピソード記憶

一つの仮説ですが、人間は意味記憶よりもエピソード記憶が強く鮮明に覚えているというのは、人間の進化の過程における脳の進化に深く関係しているのではないか、その必要性に関係していたのではないかという考え方があります。

人類は、長い歴史の中で、言語というものを手に入れましたが、これはかなり進化の遅い時期に発達したもので、人類が言語というものを獲得したのは、せいぜいここ数万年のことと言われています。

これは約700万年とも言われる人類の歴史からすると、言語を獲得したのは本当にごく最近とうことになります。

こういうことをすると危ない目に会うとか、ここに行けば美味しい食べ物があるというのをエピソード、つまり経験として覚えておいてほうが生きていくためには得であると脳は判断します。

すると、言語(意味記憶)よりも、エピソードを規則しておいたほうが、生きていくには有用であると脳が判断し、そのために、意味記憶よりもエピソード記憶のほうが優先されるようになったとも考えられます。

逆に言えば、受験だ、試験だといって、意味記憶が大きなウェイトを占める現代は、人間の歴史の中で考えても、人間の脳ということを考えても、かなりイレギュラーな時代といってもいいのかもしれません。

最新情報をチェックしよう!