珈琲の香りは脳を刺激して人をやさしくする | 賢脳トピックス

珈琲というと、その苦味やコクといった味わいが、ティータイムを充実させてくれますが、実は珈琲の香りもそれに重要な役割を果たしています。

味だけじゃなかった珈琲の香りの力

1997年に米国ニューヨーク州にあるレンセラー工科大学のバロン博士らは次のような実験を行っています。

多くの買い物客で賑わう大型ショッピングモールで、炒った珈琲豆や焼いたパンなどの漂った香りが、人々の行動にどのような影響を及ぼすかが実験されました。

ショッピングモールの通行人232人に対して、見知らぬ人を助けるかどうかを調査したところ、珈琲豆を炒ったような香りがする場合は、そうした香りがない場合に比べて、同性の人を助ける割合が有意に高いという結果がでています。

珈琲豆を炒った香りがしていると、見知らぬ人が落としたペンを拾ってくれたり、両替を快く引き受けてくれたりする確率が高まったりするのです。

<参考>
Ers Soc Psycholo Bull. 23:498-503, 1997.
Baron, RA. The sweet smell of helping: effects of pleasant ambient fragrance on prosocial behavior in shopping malls.

人をやさしくする珈琲の香り

珈琲は、飲んででてくる体に対する作用もありますが、飲まなくてもその珈琲豆を炒った香りだけでも、脳に影響を与えるのです。

珈琲豆を炒った心地よい香りを嗅ぐと、人間はそれだけで相手に対してよい印象を抱くようになり、そのポジティブな感情が、そのまま相手を手助けしたいという心理に転じるようです。

もしかしたら、出張先や商談、また会議でよく炒れたての珈琲が出されたりしますが、こうした心理的な効果を狙っているのかもしれませんね。

マウスと珈琲

珈琲の香りについては、マウスでも面白い実験が行われています。

寝不足の状態にされた鼠に、珈琲豆の香りを嗅がして、その結果、脳内で、どのような遺伝子やタンパク質の発現が変化するかを調査しています。

寝不足にしたマウスでは、脳内から神経栄養因子受容体、グルココルチコイド誘導受容体、熱ショック蛋白といった、ストレス応答から脳細胞を守り、ニューロンの成長維持を促す因子が減ってしまいます。

しかし、この睡眠不足にさせられたマウスに珈琲豆の香りを嗅がせるために、コロンビア種の豆をローストした香りを噴霧してみると、これらの遺伝子の発現が部分的ですが回復しました。

マウスは、人間とは違い、珈琲豆の香りにより心理的効果は大きくないと考えられるので、珈琲豆の香りがマウスの脳に与えて影響としては、精神的なリラックス効果というよりも、薬理的影響である可能性が高いと思われます。

さらに、珈琲を飲まなくても、こうした変化がみられたことから、珈琲豆の芳香になんらかの作用があったと言えます。

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