食事にいって、割り勘などというときに、ささっと計算してくれる人がいたりするものですが、暗算しているときって、脳はどのように働いているのでしょうか。
暗算に必要な短期記憶
あまり難しい計算だと話がややこしくなってしまうので、適当な難易度として、「48×3」を計算するというシチュエーションで考えてみます。
するどい人なら、48=12×4なので、48×3=12×4×3=12×12=144と答えを出してしまうかもしれませんが、今回は正攻法で考えていくことにします。
「48×3」を計算する場合、まずは「8×3=24」と計算し、繰り上がる「2」をいったん頭に置きます。
つまり、この時に「2」という数字をいったんは記憶しないといけないということになります。
この「2」という数字は、脳のどこにしまわれるのかというと、記憶を司るということで有名な『海馬』に一時的に保存されます。
記憶するメモリーということで、側頭葉に保存するとなると、脳はパソコンで保存した不要なファイルをいつまでも削除しないような状態になり、意味のない数字であふれかえってしまいます。
そうならないためにも、一時的に海馬に保存されるのです。
さて、次に「4×3=12」を計算します。
ここで、すでに海馬で繰り上がって部分の数字である「2」が短期記憶として保存されているので、それを引き出してきて、「12+2=14」と計算をします。
従って、「48×3=144」となります。
海馬に繰り上がりの「2」という数字を記憶させていたことで、「48×3」の暗算が可能になったのです。
従って、暗算は海馬のおかげで可能になったということになります。
忘れっぽい海馬、忘れにくい側頭葉
海馬の記憶は、短期間の記憶に向いていて、その代わり、用がなくなってしまえばその場ですぐに忘れられてしまいます。
一方、側頭葉の記憶は、一定期間しっかりと保存されます。
海馬は脳の番人とも言われていて、例えば英単語でも、その英単語を見た時に、海馬でその単語を知っているかいないか、忘れちゃったのか忘れていないのかを判断しています。
新しい英単語を見た時に、海馬は記憶の司令塔である前頭葉に問い合わせ、記憶の保存場所である記憶の倉庫の側頭葉の中を調べ、その英単語が側頭葉に保存されていなければ、記憶されていないと判断し、前頭葉は側頭葉にとりあえずは保存するように支持します。
二重構造で情報を記憶する人間の脳
このように、忘れっぽい海馬、忘れにくい側頭葉を介して二重構造で情報を記憶している人間の脳ですが、受験勉強や資格試験では、はじめから側頭葉で記憶して、忘れない脳にあこがれてしまう人もいるかもしれません。
しかし、全ての情報を側頭葉が保存しはじめたら、頭の中が情報でいっぱいになり、頭が混乱して発狂したくなってしまうでしょう。
海馬がうまく情報整理して記憶するかどうかを決めているからこそ、人間は日常生活を快適に過ごすことができるのです。