逆境にめげず、耐えて努力したからこそ、今の成功があるというようなことを言うときに、植物も寒い冬があるからこそ、春に綺麗な花が咲くなどという言い方をします。
小麦には2種類ある
小麦は、春に種をまいてその年に収穫する春まきのものと、秋に種をまいて翌年の初夏に収穫する秋まきのものがあります。
同じ小麦なのですが、秋に種をまく秋まきのものは、寒い冬を越さなければなりません。
秋まきの小麦のほうが、春まきのものより収穫量が良く品質にも優れているのですが、秋まきの小麦は、秋に種をまき、冬に発芽しますが、このとき麦踏みといって、発芽したばかりの小麦を足で踏みつけたり、トラクターで踏みつけたりします。
麦踏みをすることで、根が霜で切れないようにするためとも、踏みつけることで強い芽生えにするためとも言われています。
それじゃ、寒い中、麦踏みしなければいけないなんて面倒くさいしといって、春に秋まきの小麦の種をまいたらどうなるでしょうか。
結果は、葉が茂るだけで、つぼみをつけません。
秋まきの小麦は、寒さを受けて、つぼみができるようになるのですが、この現象は春化と呼ばれるのです。
それじゃ、春に秋まきの小麦の種をまいて、初夏に花を咲かせる方法はないのかというと、春に種をまく前に、少し芽を出した種子を冷蔵庫に入れて、そこで0℃から10℃ぐらいの低温を経験させます。
数週間くらい低温にすることで、つぼみをつけるようになりますが、この処理が春化処理(バーナリゼーション)と呼ばれています。
幼い時の冬の寒さ
大根や人参、白菜、ほうれん草などの野菜は、冬の畑では茎をのばさず、地表面に近い高さで冬の寒さをしのぎ春化されます。
収穫されず畑に残った野菜は、冬の間寒さをしのぎ、春になると、茎を急速に伸ばし花を咲かせます。
実は、低温を受けることで、つぼみができるのを抑制していた状態が解除されることにより、つぼみがつき始めるということがわかってきています。
最近では、外気の変化がズレることによって、春じゃない時期に花が咲いてしまったりすることもあります。
桜の開花には冬の低温が必要ですが、花芽を形成した桜が冬に低温にさらされることで春化され、その後、春になり気温が上昇してくることで、いっきに開花していきます。
つぼみを作らせるジベレリン、エチレン、オーキシン
植物には、花を咲かせるため、つぼみを作らせる成分がありますが、ジベレリン、エチレン、オーキシンなどがそれにあたります。
キャベツ、人参、セロリなどは、低い温度を一定期間受けなければ、つぼみは作りません。
しかし、ジベレリンを与えると、低温刺激を受けなくても、つぼみができるようになります。
パイナップルは、エチレンの発生を促すエスレルを散布することで、つぼみの形成がいっきに起こります。