おいしそうな食べ物をみると自然と唾液が出てきてしまったという経験はないでしょうか。
お腹がすいていたりしても同じようなことが起こります。
唾液の役割
唾液にはいろいろな役割があります。
唾液の役割というと、消化酵素のアミラーゼなどが含まれていて、でんぷんを分解するということが一番最初に思い浮かぶ人が多いと思いますが、それ以外にもいろいろな働きがあるのです。
消化酵素を含むことで消化活動を行う
唾液には、でんぷんを分解する酵素であるアミラーゼが多く含まれていることは有名ですが、マルターゼなどの酵素もあり、かみ砕いた食べ物と唾液が混ざることで消化活動が行なわれていきます。
口腔内の浄化作用
唾液は口腔内を浄化する作用もあります。
口内細菌が繁殖しないように殺菌作用を発揮したり、食べ物のカスを洗い流して口腔内を清潔に保ちます。
また歯が虫歯にならないように口腔内のpH値をほぼ中性に保っているほか、歯にカルシウムを供給する働きもあります。
さらに、ムチンという糖たんぱく質があるのですが、このムチンの粘り気により口内の粘膜が保護されています。
さらに唾液にはサイトカインをはじめとする生理活性物質も多く含まれていて、さまざまな病気や免疫作用にも影響を及ぼしています。
美味しく食べれるのも唾液の働き
また唾液は口腔内を潤すことで、咀嚼を助けます。そして、食物が唾液に溶けることによって、舌の味蕾は味覚を感じているのです。
美味しいものを見ただけで唾液が出てくるのは、そのものが美味しいということが後天的に記憶されていて、そのことにより唾液が出てくるのです。
唾液の実験で有名なものというと、パブロフの犬の実験があります。
エサを与える前に犬に特定の音を聞かせ続けることにより、音の刺激だけで、おいしいエサが食べれるということで唾液がでてくるように習慣化してしまうというものです。
これは条件反射と言われていますが、この条件反射によって美味しいものを見たり、匂いを嗅いだり、また学習によっては音を聞いただけで、そのものを食べているときのことがイメージされ、自然と唾液が出てくるのです。
唾液は2つのしくみで分泌される
こんなにいろいろな働きを持っている唾液ですが、2つのしくみで分泌されています。
口腔内の粘膜に食べ物が接触すると、その物理的な刺激によって延髄の唾液分泌を司っている部分が興奮します。すると自動的に唾液が分泌する反射が起こってきます。
また食べ物を見たり、匂いを嗅いだりすると条件反射によって唾液が分泌されてきます。梅干しをみると唾液がでてくるというのはこの条件反射によるものです。
食べ物を食べることにより、味覚によりその刺激で起こる反射反応と、食べ物を見たり匂いを嗅いだりすることによる視覚・嗅覚による条件反射の2つのしくみにより唾液が分泌されてくるのです。
唾液腺のいろいろ
唾液がでてくる部分は唾液腺ですが、この唾液腺はいろいろな部位に分布しています。
耳下には、耳下腺管という唾液を分泌する導管があり、耳下腺からは粘性が少ない唾液が、舌下腺からは粘性の強い唾液が分泌されてきます。それ以外にも、大臼歯の知覚にある顎下腺や、歯茎の周りにある小唾液腺などがあります。