
私たちが日頃、元気に動き回っているのはしっかりと体でエネルギーをつくることができるからです。ロボットであれば電池が切れれば止まってしまいますが、人間もエネルギーが0になってしまえば動けなくなっています。もちろん、ちょっと食べなかったくらいでは、体に充電されている脂肪というエネルギー源がありますので、すぐに電池切れになるということはありません。
体を動かすエネルギーをつくりだす元と言えば、ブドウ糖があげられます。人体の燃料であり、人間を自動車に喩えるならガソリンみたいなものです。ブドウ糖は、肺から吸い込まれ血液中のヘモグロビンによって運ばれてきた酸素と反応して燃焼することで、エネルギーを生み出します。
もう一つ体のエネルギー源といえば脂肪があり、やはり燃焼して運動エネルギーになります。
しかし、『脳』にある神経細胞は、細胞の中にエネルギー源を蓄えておくことができません。つまり人間が消費しているエネルギーの約20%を消費している脳のエネルギー源となるのは、食事から摂取され消化吸収されたブドウ糖と、肺から吸われた酸素ということになります。
もし脳にブドウ糖の供給がされなくなってしまうと、脳はたった数分で機能を失ってしまうと言われています。だからこそ、たとえ糖尿病の人であっても、エネルギー全体の50%~60%は炭水化物から摂るようにという指導がされています。
記憶力に関していうと、ブドウ糖は神経活動が行われる際に消費されることから、ブドウ糖が血中にしっかりあるときは記憶力が増すという実験結果もでています。ブドウ糖が賢脳に良いとされる所以です。
またうつ病の人は、セロトニンの分泌が少ないと言われています。セロトニンは、脳内物質の一つで精神安定や満足感をもたらす働きがありますが、トリプトファンという必須アミノ酸が脳内に取り込まれて生成されますが、この時に必要となるのがホルモンのインスリンです。
そしてインスリンが多く分泌されるにはブドウ糖を摂ることで大切です。
言いかえると、ブドウ糖を摂取することは、ストレスを抑え精神的安定を得ることにもつながるというわけです。もちろん摂りすぎはいけません。
ブドウ糖など糖質を過剰に摂取すると“糖質依存”になります。
ブドウ糖を摂り血糖値が上昇すると、膵臓から多量のインスリンが分泌されブドウ糖を除去しようとします。すると低血糖の状態が起こり、脳のエネルギー源となるブドウ糖が不足し、逆に脳がエネルギー不足に陥ってしまいます。
よく午後一の会議は眠くてしかたないという経験をした人も多いのではないかと思いますが、これは血液が消化管に集まり脳に回る分がともいえますが、昼食で炭水化物を摂った結果ともいえます。
さらにブドウ糖など炭水化物を摂ると脳のA10神経系というところが刺激され、強い快感をもたらすドーパミンが分泌されてきます。これが炭水化物がクセになる原因にもなります。
絶食したり、炭水化物を食べないでいると、当然糖質が摂られませんので血糖値があがってきません。そうすると、体内の脂肪酸が細胞のミトコンドリアで代謝されケトン体というものができ、それが脳のエネルギーになります。
マウスを使った実験では、ケトン体を誘導するエサを与えることで、脳の認知能力が20%伸びたという結果が得られているほどです。
ケトン体は、糖質を断って5時間ほどで発生するので、大きなプレゼンや商談など、「どうしても脳を活性化させたい」という機会があれば、その前に炭水化物やブドウ糖の摂取を控えるという考え方もあります。
ブドウ糖も適度(エネルギーに占める炭水化物の比率として50%~60%)には必要ですが、賢脳のためと過剰に摂取するのは逆効果ということです。