
科学的な速く覚える・長く忘れない記憶学習法の実践
そこで、科学的に研究された方法も用いて、初めて出会う英単語でも、速く覚える、長く忘れない、大量に覚えるといった具合に効率的に覚えていく方法をご紹介します。


記憶に関する書籍や、記憶術の本には必ずといっていいほど登場するエビングハウスの忘却曲線ですが、ヘルマン・エビングハウスは、『記憶について――実験心理学への貢献』という本の中で、実験研究により「意味のある内容は、無意味なものよりもおよそ10倍習得しやすい」ということを結論づけています。
<参考>
『記憶について――実験心理学への貢献』 ヘルマン・エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)著
Über das Gedächtnis: Untersuchungen zur experimentellen Psychologie (1885)
(英訳:Memory: A Contribution to Experimental Psychology (1913))
※この本のChapter V(第5章)に、Rapidity of Learning Series of Syllables as a Function of Their Length(学習の速さとシリーズの長さの関係)に記載があります。
エビングハウスは、バイロンの詩『チャイルド・ハロルド』の一節、80音節分を暗記するのに必要な読唱回数と、同じ80個の無意味な音節を暗記するのに必要な回数を比較する実験を行っています。
◎バイロンの詩のシリーズを、最初の再現が可能になるまで学習するのに必要な読唱回数が10回弱であった
◎同じ長さである80個の無意味な音節を学習するのには、約80回から100回の復唱が必要であった。
これらの結果から、エビングハウスは、『意味のある内容は、無意味なものよりもおよそ10倍習得しやすいと言える』と結論づけています。
また、エビングハウスは、その後の「忘れにくさ」についても同様に詩の方が圧倒的に有利であると研究報告しています。
このことから、
無味乾燥な単語にも意味を持たせることによって、10倍速く覚えられるようになり、しかも忘れにくくなる
ということが言えます。
記憶術などでは、語呂合わせや意味付けで結びつけたものをイメージするとより強く印象に残り、速く覚えられ、長く忘れないとされています。
このことについては、エビングハウスの研究よりあとに、アラン・ペイビオが提唱した二重符号化説というものがあり、これによると、私たちが情報を処理する際には、「言語」と「イメージ」という2つの独立した、しかし互いに連携するシステムを使っているという理論が提唱されています。
ペイビオは、人間の認知には以下の2つのシステムがあると定義しました。
言語システム(Verbal System): 言葉、文字、音声などの言語情報を処理するルート。
非言語システム(Non-verbal/Imagery System): 図、映像、物体、感覚などのイメージ情報を処理するルート。
これら2つのシステムは機能的に独立しているので、もし一方の情報を忘れてしまっても、もう一方のシステムに情報が残っていれば、それを手がかりに記憶を想起、思い出すことができるのです。
つまり、どういうことかというと単語を覚える際、「文字(言葉)」だけで覚えるよりも、「文字 + イラスト(イメージ)」で覚えるほうが記憶に残りやすいということになります。
言葉・単語のみだと、記憶の回路が1本しかないため、そこが途切れると思い出すことができません。
しかし2つのルート(言葉 + イメージ)で覚えていると、脳内に「言語のコード」と「イメージのコード」の両方が生成されているので、情報の入り口が2つになり、脳への定着率が格段に高まるのです。
わかりやすく言うと、
単語を覚える際、「文字」だけで覚えるよりも、「文字 プラス イメージ」で覚えるほうがより記憶に残りやすい
ということになります。
たとえば、「phenomenon・現象、事象」という単語を覚える場合、「phenomenon・現象、事象」、「phenomenon・現象、事象」、「phenomenon・現象、事象」と繰り返して覚える方法があります。
これだけだと、「文字(言葉)」だけで覚えていることになります。
特に英単語のように外国語や、難しい専門用語の場合、多くの日本人にとっては初めて目にする意味を持たない無意味な記号です。
そこに語呂合わせを作ることで、意味のある言葉として関係づけられ、「具体的なイメージ」へと変換することができるようになります。
語呂合わせをつくり、イメージするということは、「文字 プラス イメージ」で覚えることになるので、このため記憶術などで語呂合わせをしイメージして覚えると、記憶に残りやすいということが科学的にもわかっているのです。
理論だけはピンとこないと思うので、少し実践例をみてみましょう。
phenomenon という日本語としては全く意味のない英単語は、笛のメノウというような意味のある言葉にして、笛にくっついているメノウを具体的なイメージとすることができます。
ここに現象・事象という意味を強引に結びつけてストーリーを作ってしまい、それ全体をイメージすればいいのです。
例えば、「笛についているメノウが光る現象、この現象・事象はなんだ?」というようなイメージを頭の中に思い浮かべるのです。
語呂合わせや駄洒落の作成も厳密につくる必要はありません。
記憶に残るためには、鮮明さ、奇抜さ、能動性が重要です。
鮮明さとは、できるだけ鮮やかにイメージできればできるほと良いということです。
そのためには、いろいろ考えるより、とりあえず思いついたらすぐに強引でも結びつけてしまうと良いでしょう。
なぜならば、ファーストイメージが一番強烈だからです。
そして、ダジャレや結びつきがくだらなかったり、あり得ない設定だったりするほど、脳は「異常な事態」として強く記憶することができます。
そして、できれば能動性、つまり人から教わった語呂合わせよりも、自分で苦労して作った語呂合わせの方がより深く定着します。
縦えば、phenomenon にしても、笛についているメノウではなく、変な目の人たちというイメージが湧いてきたら、それを大切にすると良いでしょう。
変な目の人達が歩きまわっている、これってどんな現象?というようなイメージを頭に思い浮かべるのです。
そしてそのイメージを頭に浮かべながら、phenomenon と文字を見ながら発音してみると、それが耳からも入ってきて、より忘れにくくなります。
最初のうちは、phenomenon という単語をみて、変な目のから全体の突拍子もないイメージを思い出し、そこから現象・事象という訳が出てきます。
確かに速く覚えられるかもしれないし、長く記憶に残るかもしれないけど、文字だけであれば、「phenomenon・現象」 だけで済むのに余計なものばかりでかえって混乱しないのか、かえって効率が悪いのではと思われるかもしれません。
文字とイメージで覚えた場合、最初は phenomenon という単語をみて、変な目のからイメージを連想し、そこから現象・事象という訳が出てきます。
たしかにイメージは印象の残りやすいのですが、周りくどい感じがします。
しかし何回か反復していると、phenomenon という文字を見た瞬間に、イメージがパッと浮かび、すぐに現象・事象という訳がでてくるのに気づくと思います。
そして、さらに反復すると、イメージが思い浮かばなくても反射的に phenomenon という文字をみただけで、現象・事象という訳が頭に浮かんできて、途中の phenomenon と現象を結びつけるための媒体としていたイメージを介さなくても良くなっていることに気づきます。
すべての英単語をこの方法で覚えるのは邪道だという人でも、どうしてもなかなか覚えられないといった単語は10や20はあると思います。
そんな場合、この方法を用いて覚えると、しっかりと覚えることができるでしょう。
また、無味乾燥な文字のみを覚えるよりも、いろいろなイメージをいれて結びつけて覚えてほうが速く覚えられるし、長く忘れないし、楽しく覚えられるので、一石三鳥と言えるでしょう。
実際にどうやっていくかを簡単に見ていきましょう。
英単語以外の外国語や、他の暗記科目、専門分野の用語などを覚える際にも応用がききますが、今回は英単語でやってみます。
次のような英単語を覚えるとします。
語呂合わせや駄洒落を作りやすいように、これらの英単語をカタカナ表記にしてみます。
カタカナ表記する際には、英単語を列記したものの上に、次の英単語をカタカナ表記してくださいとAIにお願いすれば、数秒でカタカナ表記にしてくれます。
なんなら、トイック用の訳語もお願いすると簡単に英単語教材ができあがります。
教材ができあがり、覚える内容が決まったら、英単語のカタカナ表記を参考に、強引にここでいう赤文字で書いてある部分の語呂合わせを作ってしまいます。
そしたら、それを青字の意味と結びつけるだけです。
突拍子がないイメージでも、強引な結びつけでもかまいません。むしろそのほうが覚えやすいくらいです。
そして、この内容をイメージで思い浮かべるのです。
慣れてくれば、このように記載しなくても頭の中でできるようになります。
具体的には動画で示していますので参考にしてください。
これで覚えると、時間が経っても頭の中にイメージが残っていて、覚える努力もそれほどしていないのになぜか覚えているという感覚をもつかもしれません。
また、私はどうもイメージ力が弱く、イメージするのが苦手だという人もいると思いますが、今はAIが普及してイメージした内容をプロンプトに書き出し簡単にAIでイメージ画像を作ることもできます。
従って、メージするのが苦手という人は、AIにイメージを作ってもらうと良いかもしれません。
反復していくうちに、瞬時にイメージが浮かび、そのうちに覚えるために媒介にしていたイメージが消えて、英単語をみるとすぐに訳語が浮かんでくるようになります。
英単語と日本語を繰り返し唱えるだけよりも、速く覚えられて、長く忘れず、反復するときも面白いイメージを思い浮かべながら、飽きずに楽しみながら覚えることができ、覚えにくい単語もこれで覚えることができます。
この方法で大量に覚えるもよし、これだけはどうしても覚えられないというものにしぼって試してみてもよしです。