介護という視点で入浴を考えた場合、その効果を知り、適切な環境で気持ちよくしてもらうことが大切です。
入浴の効用
入浴というと、まずは一番の目的が体の清潔介護です。
体の汚れを落として、清潔にすることで丈夫できれいな皮膚や毛髪を維持することができます。
さらに体を清潔に保つことで、感染所うの予防や、皮膚の損傷の防止、さらには褥瘡の予防にもつながります。
さらに、体がお湯で温められることにより、毛細血管が広がり血流が良くなり新陳代謝が促進されます。
そして水圧を受けることで、足に溜まっていた血液が、心臓のほうへ押し戻されていくので、血行が良くなり疲れも取れてくるのです。
入浴には、体と心のリラックス効果も期待できます。
温かい湯舟にゆったりと浸かりながら、リラックスでき、疲れも取れていきます。
介護という視点で考えると、入浴にはもう一つ重要な役割があります。
それが、リハビリテーション効果です。
お風呂の中は、浮力によって体が動かしやすい状態になりますし、下半身への負担が減ります。
お湯の温熱作用によって、筋肉を動かすのが容易になってきますし、関節可動域の維持にも役立ちます。
お風呂の中では、水の抵抗もあるので、体を動かすことで軽い運動と同じような効果も期待できます。
介護を考えた入浴環境
介護のことを考えると、風呂場での転倒や溺水といった事故に注意しなければいけません。
そのため、浴槽の脇の壁には手すりをつけることが望ましいでしょう。
浴槽の深さは50~60cmで、浴槽への出入りを考えると、浴槽は床面から40cm程度の半埋め込み式だと出入りするのに便利です。
床が滑りやすい場合は、滑り止めのマットなどを敷いておくと良いでしょう。
介護を考えた入浴前のチェック
入浴は、お湯につかること自体が大きなエネルギーの消費になるので、体には意外と負担になります。
従って、入浴前にはきちんと体調をよくチェックしておく必要があります。
特に高齢者の介護においては、
- 普段よりも体温が高くないか
- 脈拍や血圧は正常値か
- 顔色が悪くないか
- 風邪をひいていないか
- 皮膚や炎症や傷などはないか
- 極端に空腹状態ではないか
- 便は済ませたか
といった入浴前のチェックが重要になってきます。
また入浴中には汗をかきますので、脱水症状にならないためにも、入浴前にはコップ1杯飲んで水分補給をするようにします。
風呂場と脱衣所の温度差が大きいと、服を脱いだ時に体温が急にさがり血圧が上昇し、心筋梗塞や脳卒中の原因にもなりかねません。
したがって、特に冬場などは、入浴前に脱衣所を暖めておくことが大切です。
家族がいる場合などは、「これから風呂に入るよ」と一言、家族へ声をかける習慣をもつことも良いでしょう。