充分な睡眠時間は、心身の健康には欠かせないものですが、現代人、特に働き盛りの年代の人達は、睡眠不足の人が多くなっています。
日本人は睡眠不足?
OECD(経済協力開発機構)によると、日本人の1日の平均睡眠時間は、442分(7時間22分)となっていて、これは世界33ヵ国中、最も少なかったという結果が出ています。
主要国と比較すると、アメリカ:528分、中国:542分、イギリス:508分、フランス:513分と、軒並み500分を超えています。
そして、日本人の睡眠時間は年々短くなってきています。
厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、1日の平均睡眠時間が6時間以上7時間未満の割合が最も高くなっていて、男女とも約35%の人が回答しています。
その一方で、男性で約36%、女性で約40%の人が、1日の平均睡眠時間が6時間未満であると回答しています。
さらにこれを年代別に見てみると、男性の30~50歳代、女性の40~60歳代では、4割を超える人が、1日の平均睡眠時間が6時間未満であると回答しています。
平均すると、日本の働き盛りの年代の人は睡眠不足であると言えます。
睡眠負債と睡眠不足は違う

『睡眠負債』は、『睡眠不足』とイコールではありません。
『睡眠負債』とは、「負債」という文字のごとく、日々のわずかな睡眠不足が少しずつ積み重なって借金のように溜まって、知らず知らずのうちに心身にダメージが蓄積している状態のことをいいます。
例えば、毎日8時間の睡眠を必要としている人が、なんらかの理由で6時間しか寝れなかったとすると、2時間の睡眠不足となります。
この場合は、単なる睡眠不足であって、睡眠負債ではありません。
このように一時的な睡眠不足は、自覚することができ、疲れているから今夜は早めに寝ようということになります。
しかし、睡眠不足が慢性的に続いていくと、睡眠負債になり、こうなると多くの場合あまり自覚症状がありません。
しかし、体や脳、特に脳の前頭前野は影響を受けやすいとされています。
脳の前頭前野は何をしているところかと言うと、認知や思考を担っています。また感情のコントロールや意志決定など重要な働きも担っています。
つまり睡眠負債で脳の前頭前野の働きが鈍くなってくると、判断力や集中力、注意力などが低下してしまったり、感情のコントロールが難しくなって怒りっぽくなるといったことが起きてきます。
睡眠負債は寝だめをすればいいというもんじゃない
睡眠負債だったら、休日の午前中に朝遅くまでたっぷり寝て、寝だめをすればいいじゃないかと思う人もいると思います。
「負債」つまり「借金」なら、休日に一気に溜まった分を返済すればOKという考え方ですが、睡眠に関してはそんな単純にはいかないのです。
休日にたっぷり寝だめをしたからといって睡眠負債の解消にはならないのです。
なぜならば、寝だめをすることで起床時間が遅くなります。
すると体内時計にズレが生じて、寝る時間が遅くなってしまうのです。
その結果、翌日の朝起きるのがつらくなるのですが、平日なので会社や学校へ行かなければなりません。
朝からすっきりした目覚めにならないまま通勤・通学となり、負のスパイラルに陥ってしまうのです。