上品・中品・下品というと、良品が上品、粗悪品が下品で、普通の商品が中品というようなイメージで捉えがちですが、全然違います。
漢方での上品・中品・下品
漢方でいうところの上品・中品・下品は、中国最古の本草学書、一つの漢方のバイブルともいえる神農本草経(しんのうほんぞうきょう)において生薬の分類になります。
この神農本草経では、生薬の薬効について述べられていて、1年の日数と同じ365種の生薬を、上品・中品・下品に分けて分類しています。
しかし、この分類は、良品とか粗悪品の別というのではなく、薬効で分類しているのです。
神農本草経では、365種の生薬の内訳として、上品(じょうほん)120種類、中品(ちゅうほん)120種類、下品(げほん)125種類となっていて、薬効別の分類となっているのです。
また、上品・中品・下品のことを、上薬・中薬・下薬ということもあります。
上品
上品は、一言で言えば、養命薬。つまり生命を養う目的の薬です。
生命を養うものなので、長期間服用されることを想定としていて、元気を補い、不老長寿の作用があるとされています。
作用が穏やかで長時間服用しても副作用がほとんど起こらず、体質を強化するもので、他の薬の副作用を軽減する働きなどもあります。
該当する主な生薬としては、甘草・大棗・人参・地黄・五味子などがあげられます。
中品
中品は、一言で言えば、養性薬。つまり体力を養う目的の薬です。
使い方次第では毒にもなってしまうもので、注意が必要ですが、病気を予防し、虚弱な身体を強くする目的で用いられます。
少量で短期間の服用ならば、副作用も気にするほどでもなく、新陳代謝を高めて病気を水際でせき止める働きがあるものです。
該当する主な生薬としては、柴胡・当帰・芍薬・葛根・乾姜などがあげられます。
下品
下品は、一言で言えば、治療薬。
毒性が強いものが多く、長期にわたる服用は避けた方がよいもので、病気を治すために用いられます。
病気を治す作用は強いが、副作用も伴うこともあり、服用する量や期間に配慮が必要なものになっています。
該当する主な生薬としては、附子・大黄・烏薬・麻黄・半夏などがあげられます。
君臣佐使
漢方では、処方を組み立てるときに、君臣佐使(くんしんさし)という概念があります。
君は君主、臣は大臣、佐使は使用人にあたります。
漢方方剤の中で、実際に働いて薬理作用を発揮してくれるのは、仕事をする使用人、つまり佐使薬になります。
しかし、仕事をするだけあって、作用が強い下品が使われることが多く、副作用がでてくる可能性があります。
そこで、使用人を管理するための君主、つまり君薬が必要になってきます。
君薬は、副作用を防ぎ、本来の薬理活性が働くのを見守る役目を担い、上品が使われることが多くなっています。
その中間の臣薬は、君薬と佐使薬の間を取り持ち、バランスを保ち、佐使薬の作用の方向を導き、暴走を防ぐ働きをします。
上品は、君薬ですが、臣薬としても、佐使薬としてもオールマイティーに働ける性質があります。
中品は、君薬にはなれず、臣薬及び佐使薬といして作用する性質の生薬が多くなっています。
下品は、佐使薬としてのみ使われます。