人間のモラルと甘い思い出・苦い経験 | 賢脳トピックス

人間は感情が顔に出ますが、その表情は、甘い思い出・苦い経験などと深い関係があると言われています。

人間のモラルと嫌悪の表情

人間は感情が顔に出ますが、マイナスの感情と言われている「悲しみ」「怒り」「嫌悪」について調べると、上唇挙筋の反応と最も強く相関するのは、『嫌悪』の感情であるという研究報告があります。

嫌な顔をするケースは、怒りよりも道徳的な嫌悪感から来ている場合が多いのです。

上唇挙筋の反応というと、苦味や悪臭を感じた時に反応する部分で、人間が生きていく上で本能的に都合が悪いものを拒絶するシステムとも言えます。

そして怒りなどではなく道徳的な嫌悪感からも、同じような反応を示したということは、人間が高い社会生活を送るのに必要なモラル・道徳に対して、本能的に都合が悪いものを拒絶するシステムを転用してきたということになります。

つまり、社会的生活を行っていく上で必要な道徳・モラルを自然と身につけていったと言えます。

苦味を感じた時と嫌悪感の表情は同じ

人は、気持ち悪い写真や嫌な写真を見せられたりすると、鼻のわきの筋肉である上唇挙筋が収縮することがわかっています。

そして、主観的に感じられた嫌悪感が強ければ強いほど、筋肉の収縮も強くなります。

この上唇挙筋の反応は、写真という視覚から入る刺激だけでなく、苦味という味覚でも同じようなことが起こります。

「苦味」・「酸味」・「塩味」の3種類の水溶液を舐めて表情を観察し、顔面の筋電図を測定したところ、この上唇挙筋の反応は、「苦味」の場合にのみ起こることが確認されています。

つまり、視覚的に嫌な写真を見せられたときと、味覚的に苦味を感じた時は、同じように鼻のわきの筋肉である上唇挙筋が収縮するという反応を示すのです。

よく、苦虫をつぶしたような顔といいますが、まさによく言い当てているなと思います。

苦味と苦い経験、甘い思い出

苦味という味覚を考えたとき、よく喩え表現として、苦い経験とか、甘い思い出と言うように、味にたとえた表現がされることがあります。

これは、日本独特のものではなく、英語でも同じような表現がされます。
松田聖子さんのヒット曲の中にも、「sweet memory」というような曲がありますが、まさに味覚と心理表現には本質的な関係があるかのごとくの表現になっています。

もちろん思い出に味があるわけがありません。
隠喩的なレトリックにすぎないのですが、説明されなくても「sweet memory」と言われると、誰もがイメージできる納得のいく喩え表現になっています。

もしかしたら、コピーライターの糸井重里さんの有名なコピーでもある『おいしい生活』というのも同じ発想からきているのかもしれません。

味覚と感覚、道徳・モラルは、人間の感情というところで意外にも深くつながっているのかもしれません。

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