香りと脳というと、アロマテラピーを連想する人も多いと思います。
アロマテラピーは古くより行われていて、そのメカニズムやアロマの効果について、いろいろと研究がされてきています。
アロマテラピーで効果があるというのは、精油(エッセンシャルオイル)成分の持っている薬理作用と、心理作用によるところが大きく、特に心理作用については、精油成分が気分やムードに影響を及ぼしています。
五感の中で感情やムードと関係が深い嗅覚
人間は五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を持っていますが、この中で嗅覚だけが特殊なのです。
嗅覚は、解剖学的に言うと、情報の伝わり方が独特で、嗅覚以外の視覚・聴覚・味覚・触覚は、脳の大脳皮質に届くまでに視床を中継点として通るのですが、嗅覚は視床を経由せずに大脳皮質や扁桃体に送られてきます。
寝ていても嗅覚の情報は脳に届いていて、嗅覚系に近い脳部分の偏桃体は、感情に関係しています。
だからこそ、アロマテラピーが香りという嗅覚刺激によって、感情やムードに影響を及ぼしやすく、これは男性よりも女性に強い傾向があります。
珈琲豆でやさしくなれる?
珈琲ショップの前を通りかかったとき、そこから薫ってくる焙煎された珈琲豆の香りを嗅ぐだけで心地よく感じる人も少なくないと思います。
実は、この焙煎された珈琲豆の香りには、他人に対して親切な気持ちにさせる効果があるようです。
多くの買い物客でにぎわう大型ショッピングモールで、炒った珈琲豆や焼いたパンなどの香りが漂っていると、見知らぬ人が落としたペンを拾ってくれたり、両替を快く費い受けてくれたりする確率が高くなるという報告があります。
珈琲豆を焙煎した心地よい香りをかぐことで、相手に対して良い印象をいだくようになり、そこから生まれたポジティブな感情が、相手を手助けしたいという心理になっていくとのことです。
もしかしたら商談で珈琲が出されるというのも、そういったことから来ているかもしれませんね。
香りと感情
香りの正体は、におい分子と言われる分子量約300以下の低分子化合物で、その分子構造によって香りの種類や強さが異なってきます。
ヒトの嗅上皮(鼻腔上部にある粘膜)に広く分布している嗅細胞の嗅繊毛が、香りの分子を感知し、嗅細胞が電気的に興奮し、それが脳に伝わります。
このにおい分子による電気刺激が大脳辺縁系に伝達され、喜怒哀楽などの感情を結びついていきます。
香りに対する感じ方、感情は人それぞれで、一般的にリラックス効果があるとされているラベンダーの香りも、苦手な人ではリラックス効果は期待できないということになります。