共犯が成立するウソのしくみ | 薬剤師トピックス

東京五輪に関連した贈収賄事件で、逮捕されたほとんどの人が、自分は何もやっていない、法に触れることはしていない、知らなかったなどとウソをついていました。

どうしてこのようなウソをついてしまうのでしょうか。

2つのウソ

ウソには、2種類のウソがあると言われています。

自分のためにつくウソと、他人のためにつくウソです。

他人のためにつくウソは利他的で、他人を傷つけたくない、相手に負担をかけたくないという気遣いからでてくるウソです。

他人のためにつくウソの具体例としては、サボっていた部下の仕事ぶりを上司に聞かれ、「とてもよく頑張っています。」と答えるようなウソです。

こんなウソをついても自分のためにはなりませんが、部下に利益をもたらすウソになります。

自分にとっては利益にならないものの、むしろ善い行いをした気分になることすらあります。

他人のためにつくウソは、社会的にも許容されやすい傾向があります。

自分のためにつくウソは、利己的なうそで、ほとんどが自分が儲けたい、あるいは自分が受ける罰を回避したいというウソです。

東京五輪の贈収賄事件に関連した容疑者のウソも、自分が受ける罰を回避したいというウソになります。

単純ではないウソ

ウソは、自分のためにつくウソと他人のためにつくウソの2つがあると述べましたが、実社会ではそんな単純なものではありません。

もっと複雑でいろいろな思惑が入り混じり、多様な背景を持っています。

特に多いケースが、ウソをつくことが他人の利益にもなるけど、自分の利益にもなるというケースです。

東京五輪の贈収賄の件にしても、協力することによって双方に利益が得られるという条件がそろっていたわけで、オリ・ウィーゼルとシャウル・シャルヴィが行っている実験においても、こうしたケースではウソが劇的に増加するという結果が得られています。

双方に利益がある場合のウソ

オリ・ウィーゼルとシャウル・シャルヴィが行った事件では、参加者AとBがペアになってサイコロを振り、先にAが出た目を申告し、次にBが出た目を申告します。

これを20回繰り返すのですが、結果は本人以外は確認することなく、自己申告になっています。

さらに、AとBの出た目が鳴地だった場合には、目の数に応じた現金が支払われるというルールで行われました。

AとBがサイコロを振って同じ目が出る確率は、1/6になります。

そして20回繰り返すのであれば、同じ目が出る期待値は平均すると3.3回になるはずです。

ところが、報告された回数は平均16.3回で、しかも報告された目の数の平均は5でした。

つまり共犯が成立しているのです。

より多くのお金をもらいたいからAは出た目より多い数の5とか6とかと言ってウソをつきます。

Bもお金をもらいたいからウソをつき、Aと同じ数をいいます。

AはBが同じ数を言わなければ、自分がウソをついたって仕方ないと罪悪感が薄れますし、Bも自分も利益を得るけど、Aも利益を得られるんだからと罪悪感が薄れてしまうのです。

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