漢方薬で一番有名な処方というと、多くの人が『葛根湯』をあげるのではないでしょうか。
認知率が高いということもあり、葛根湯は多くのメーカーから製品が出ています。
葛根湯は製品によって成分分量が違う?
ところが、葛根湯はメーカーによって成分分量が違っているのです。
漢方薬と言えば、傷寒論などに基づき、中国の長い歴史の中で処方が決められてきたものであり、ましてや葛根湯などのメジャーな処方であれば、どの製品も成分分量は同じと思ってしまいます。
日本薬局方でも4パターンもある葛根湯
葛根湯は日本薬局方にも収載されていますが、この日本薬局方に収載されている葛根湯だけでも、4つのパターンがあります。
葛根湯を構成している生薬は7種類あるのですが、桂枝湯に使われている5生薬に該当する桂皮・生姜・芍薬・甘草・大棗に加え葛根・麻黄が配合されています。
同じ葛根湯でも、クラシエの葛根湯とツムラの葛根湯では処方が違っています。
そんなに処方内容が違っているんだったら、効能効果に大きな差が出てくるのではないかとも考えられますが、実際の治療効果にはそれほど大きな差はないと考えられています。
処方1 | 処方2 | 処方3 | 処方4 | |
葛根 | 8.0g | 4.0g | 4.0g | 4.0g |
麻黄 | 4.0g | 4.0g | 3.0g | 3.0g |
桂皮 | 3.0g | 2.0g | 2.0g | 2.0g |
生姜 | 1.0g | 1.0g | 2.0g | 1.0g |
芍薬 | 3.0g | 2.0g | 2.0g | 2.0g |
甘草 | 2.0g | 2.0g | 2.0g | 2.0g |
大棗 | 4.0g | 3.0g | 3.0g | 3.0g |
全量 | 25g | 18g | 18g | 17g |
日本薬局方どおりではない処方も
日本薬局方で示されている4つのパターンどおりに処方されているものは、「満量処方」と呼ばれているものです。
しかし、漢方薬は副作用を減らす目的などで生薬の分量を減らしたり、抽出したエキスをすべて薬に使わなかったりすることがあります。
こういった処方は、減らした割合によって、3/4処方とか、1/2処方といった言い方をされたりしています。
葛根湯の場合は、もともと日本薬局方に示されているパターンが4パターンもあり、さらに満量処方の他にも3/4処方や1/2処方が存在すると、実際には同じ葛根湯でも、かなりの種類のものが存在することになります。
生薬が多ければ良いとは限らない
漢方薬は、いわゆる西洋薬とはちがい、植物や動物といったさまざまなものを原料としています。
これを乾燥・抽出しているのであり、天然のものには含まれる有効成分の量がその産地や生育状況、時期などによっても個体差がでてきてしまいます。
加工の工程でも違いがでてきます。
実際に、西洋薬がmg単位で大きく薬効薬理が影響してくるのに対し、漢方薬の場合は、配合されている生薬のgにそこまでこだわる必要もないと言えます。
日本の葛根湯は中国の葛根湯と違う?
結論をいうと、日本の葛根湯と中国の葛根湯では、大きく異なっています。
構成生薬は同じですが、配合量が違っています。
これは、日本と中国では、気候などが大きくことなり、また生薬の抽出に使う水が、中国は硬水なのに対し、日本は軟水であることなどからきています。