2020年6月、日本のスーパーコンピュータ「富岳」が世界のコンピュータの性能ランキングの4部門で1位を獲得しました。
しかも計算速度を指標とする「TOP500」で2位に倍以上の差をつけていて、総合的な性能の高さが示されています。
一方で、日本は量子コンピュータの開発は世界に遅れをとっていると言われています。
スーパーコンピュータの評価の指標や、量子コンピュータについて解説していきます。
コンピュータ性能を比較する4つのランキング指標
世界一のコンピュータの性能となった日本の「富岳」ですが、ランキングでチェックされた4部門の基準とはどのようなものなのでしょうか。
その4つの基準とは、『TOP500』、『HPCG』、『HPL-AI』、『Graph500』です。
『TOP500』は、計算速度の指標で、行列計算による連立一次方程式の解法プログラムを処理する際の実行性能になります。
『HPCG』は、産業利用にどのぐらい利用しやすいかの指標で、 産業利用など実際のアプリケーションでよく使われる、まばらな係数行列から構成される連立一次方程式を解く計算手法である共役勾配法の処理能力になります。
『HPL-AI』は、人工知能(AI)のディープラーニング(深層学習)でなど主に用いられる単精度や半精度演算処理性能になります。
『Graph500』は、ビッグデータ解析の重要指標である 大規模グラフ解析に関する性能になります。
スパコンと量子コンピューターはどう違うの?
富岳などをはじめとしたスパコン(スーパーコンピューター)は、基本構成は会社や自宅にあるパソコンと同じです。
それに対して量子コンピューターは、全く異なる原理でできています。
2019年、Googleを中心とする研究グループが、量子コンピュータを開発し、その時にその当時最速だったスーパーコンピュータが1万年かかる計算を。たった3分20秒でこなしたことを発表しています。
こうしてみると、量子コンピュータは、その計算速度が桁違いに速いことがわかります。
そして、スーパーコンピュータは1京個を超える半導体素子を持っていますが、量子コンピュータはたった53個の量子素子で、その速い計算速度を実現しています。
こうなると、量子コンピュータのほうが圧倒的に計算処理速度が速いから優れていると考えられがちですが、それぞれ得手不得手があるのです。
量子コンピュータは、特定の計算処理に関しては明らかに計算処理速度が次元が違うほど速いのですが、能力が発揮できるのは特定の計算処理に限られてしまいます。
これに対して、スーパーコンピュータは、あらゆる分野に対応・応用できるという強みがあります。
さらに、量子コンピュータは、量子素子がきわめて脆弱で、演算を繰り返すうちにエラーが出たりします。
スパコンと量子コンピュータの原理の違い
スパコン(スーパーコンピューター)は、パーソナルコンピュータを同じく、ビットと呼ばれる情報を0と1の組み合わせで表します。
ビットは情報を入れる箱のようなものとイメージするとわかりやすいのですが、その1つのビットには0か1のどちらか1つの情報しか入れることができないのです。
しかし、これが量子コンピュータになると、超電導回路が使われ、それを―273℃近くに冷却して動作させることで、1つのビットの箱に、0と1を同時に入れることが可能になり、これは量子ビットと呼ばれています。
量子コンピュータでは、1つの量子ビットの中に、2つの情報が入っていることになります。
50ビットなら50の情報しか入りませんが、50量子ビットであれば、2の50乗の情報が入ることになり、そのため従来のコンピュータが何年もかかる計算を、瞬時に終わらせることができたりするようになるのです。
遅れている日本の量子コンピュータ開発、リードしている量子暗号
残念ながら、日本の量子コンピュータ開発は、欧米中に比べてはるかに遅れてしまっています。
また、開発予算も海外に比べて少なく、だいぶ遅れをとってしまっている感は否めません。
一方、量子コンピュータではその処理能力の速さ故に、セキュリティの問題があります。
現在の公開鍵暗号方式でのセキュリティでは、その処理速度ゆえに、すぐにパスワードなどが解析されてしまうので、セキュリティ技術を向上させる必要があるのです。
そこで量子暗号という技術が必要になってくるのであるが、その分野については日本はかなりリードしています。
また量子コンピュータに関しても、アプリケーションの面で技術を磨き、世界をリードしていこうとしています。