歳とともに変化する免疫システム | 薬剤師トピックス

歳とともに免疫力は低下してくるというイメージを持っている人が多いと思います。

加齢とともに、足腰の弱り、筋力が落ち、視力なども衰えてきます。

こうした体の衰え、つまり老化現象から、免疫力も落ちてきて、病気にかかりやすくなるというイメージがあります。

歳とともに変わる免疫システム

ところが、免疫力が落ちてくるというよりは、免疫の質が年齢とともに変化しているのです。

人間の免疫システムには大きく分けて、古い免疫システム新しい免疫システムがあり、若いうちは新しい免疫システムが、歳をとってくると古い免疫システムがメインに働くようになるのです。

子供の免疫システム

子供のころの免疫は、胸腺の発達と深く関係しています。

この胸腺は、心臓よりやや上に位置している木の葉の形をしたものですが、10代半ばでその大きさは最大となり、それ以降は年とともに小さくなり、20代をピークに急速に萎縮していってしまいます。

そして40代にもなれば、その大きさはピーク時の10分の1になってしまい、70代ではほとんど脂肪の塊という感じになってしまいます。

この胸腺は、どのような働きをしているのかというと、いわゆる新しい免疫システムを担っています。

胸腺は、マクロファージより抗原提示を受けて、侵入者を攻撃する司令塔としてのT細胞、そしてその命令を受けて抗体を量産していくB細胞をつくりあげていきます。

この新しい免疫システムは、人間が水中生活から陸上生活へ進化していく過程でつくられてきたものと考えられています。

えら呼吸から肺呼吸と変わり、花粉やほこりなどの抗原にさらされやすくなり、こうした抗原が体の中に入ってくるので、これに対抗して抗体をつくりだしていくシステムができあがっていったと考えられています。

しかし、加齢とともに、胸腺が委縮してくるので、そこで作られるT細胞の数も減少していき、さらに年齢とともに骨髄も脂肪かしてB細胞の数も減少してきます。
リンパ節や脾臓も萎縮してきます。

T細胞やB細胞を作る力が衰えてくるということは、抗原抗体反応を行う免疫力が弱くなってくるということになります。

加齢に伴うの免疫システムの変化

さて、抗原抗体反応を担う新しい免疫システムが衰えてきてしまったら、それこそ免疫力が低下し、免疫不全になってしまうという心配がでてきます。

ところが、加齢とともに新しい免疫システムが衰えてくる一方で、古い免疫システムが活発になってきます。

古い免疫システムとは何かというと、NK細胞や胸腺外分化T細胞、初期のB細胞などです。
人間の進化の過程において、はるか昔、単細胞生物から多細胞生物に進化をしていく中で、外部と接触する腸管や皮膚などにマクロファージが集まり、進化してリンパ球へと発展していきました。

胸腺外分化T細胞は、体の中の異常化した細胞を排除する働きがあります。こうした働きは加齢とともにより必要になってくるので、合理的な仕組みになっているといえるでしょう。

人間は進化の過程において、古い免疫システムに、さらに進化した新しい免疫システムを発展させ、加齢によってその両者のバランスを保ちながら、体を守り続ける素晴らしいシステムが作られているのです。

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