日本語の中には、意外と間違った使いかたをしている人のほうが多い言葉もいくつかあります。『煮詰まる』もそのうちの一つですが、場合によってはビジネスにも支障をきたすことにもなりかねません。
煮詰まるのではなく行き詰まる
最初に、会話例をご紹介します。
『煮詰まる』という言葉の使いかたを間違えると、こんなチグハグな会話になってしまいます。
煮詰まるには2つの意味がある
言葉は生き物ですので、間違った使いかたをする人が増えてくると、それが主流になってきたりします。
そして、結局はどちらの意味にとっても正解とされるようになってしまいます。
以前は誤用とされていた使いかたも、それでも正しいとなってしまうのです。
『煮詰まる』の本来の意味は、「十分に計画が寝られて、既に結論を出せる状態になっている」というような意味です。
しかし、誤用により広まり市民権を得た意味は、「時間が経つばかりで進展が見られない状態」という意味です。
でも、どちらも正解となると、先にあげた会話例だと、上司は「部下はもう資料を既にほぼほぼ完成させているんだな」と思っていて、部下は「資料の作成が思うように進まず、そのことを上司にちゃんと連絡した」と思い込んでしまっています。
どちらの意味でも通ってしまうとなると、場合によっては会話がチグハグになり、お互いに誤解した状態で、ビジネスにも支障をきたすことにもなりかねません。
こうした場合は、誤解を避けるためにも、「すっかり行き詰まっています」と言うべきでしょう。
煮詰まるの意味が2つでてきてしまった理由
『煮詰まる』の本来の意味は、煮物で煮詰まるというところからきています。
煮物などで煮詰まってくるとどうなるでしょうか。煮汁が少なくなっていきます。そしてもうすぐ出来上がりです。
つまり、話し合いで十分に意見が交わされて、結論を出す段階にきているということになるわけです。
しかし、煮詰まってくると焦げたり味が濃くなったりしてくることから、ネガティブな受け取り方も出てきて、そこから時間ばかりいたずらに過ぎて、もうこれ以上新たな展開が望めない状況になっている」と解釈する人が増えていったのです。
昔の辞書には、本来の意味しか載っていない場合もありますが、最近の辞書では両方の意味が載っています。
特に『煮詰まる』に関しては、2つの意味が相反するような内容になっているので、きちんと相手に伝わるように別の言い方をしたほうが無難なのかもしれません。