人間には、間違いを認めたくないというしんりがあります。
これに関連して、『認知的不協和』という言葉がありますが、どのようなことなのでしょうか。
認知的不協和
ランチに定食屋に入ったとします。
天婦羅定食にするか、刺身定食にするか迷ったあげく、あなたは刺身定食を注文したとします。
しかし、それほど美味しくなかったり、あるいは後から入ってきた人が隣で天婦羅定食を注文し、美味しそうに食べていたといった場合、「ああ、天婦羅定食にしておけばよかった」と後悔したりします。
さて、ここで「自分の判断は正しい」と信じたいので、人間は自分の判断が間違っていたことを示す証拠に直面したときに、「そんなはずはない」という思いが強くなります。
そして、そのことにより不快感や葛藤などが起きてきますが、これが『認知的不協和』ということになります。
認知的不協和が起こるとどうなる
さて、天婦羅定食か刺身定食かで迷ったあげく、刺身定食を注文し、それほど美味くなかった、隣の客が食べてた天婦羅定食がものすごく美味しそうに見えたといったケース、「いやいや、そんなはずはない」という思いが強くなるのが認知的不協和ということになりますが、その場合、不快感を避けようとして「自分の判断は正しかった」と思い込もうとします。
例えば、このケースだと、天婦羅定食はカロリーが高いので体に悪いから、やめておいて正解だったというような感じで、自分に都合がいい言い訳や理屈を考えて、自分を納得させたりします。
経済においても、例えば投資家が保有する株が下落したときに、その株を売って損切りできないのも、この認知的不協和の影響だと言われています。
つまり、損切りをすれば、過去の自分の判断がまちがっていたことを認めることになります。
「下落したけどこれは一時的なもので、いずれ株価は上がってくるはず」というように考えてしまいます。
健康面においてもそうで、喫煙者が「タバコは体に有害」という情報を得ることによって、健康のためにタバコをやめたいと考えた場合、タバコは吸いたいけど、健康でいたいという葛藤、つまり認定的不協和が生じます。
認知的不協和の解消
認知的不協和となったとき、その解消方法はいくつかのパターンがあります。
まずは、行動の変更で、例えば喫煙者がタバコは体に悪いという情報によって禁煙するというパターンです。
もっとも理論的な解消方法なのですが、禁煙することは苦痛なので難しい場合もあります。
次に認知の変化で、これは少しくらいタバコを吸ってもそれほど健康には害はないはずといったふつごうな認知を否定して変化させてしまうパターンです。
新しい認知の追加というパターンもあり、喫煙者にだって長寿の人がいるじゃないか、タバコはストレスの解消になるといったことで、認知的不協和の解消を図ります。
最後に情報の選択的接触というパターンがあり、タバコは有害というニュースを見ないようにするといったように、意図的に情報に接触しないで解消する方法があります。
人間には、このような心理が働くのです。