覚えたのに思い出せないをなくす、記憶の4段階を理解した学習法

覚えたのに思い出せないをなくす、記憶の4段階を理解した学習法

「昨日あんなに時間をかけて暗記したのに、テスト本番でどうしても思い出せない・・・・・・」 そんな悔しい経験はありませんか?
なぜ「覚えたはず」が「思い出せない」のか? 努力を無駄にしないための記憶の仕組みについて解説します。

覚えたのに思い出せないのは、記憶に対する誤解からくる学習法

「昨日あんなに時間をかけて暗記したのに、テスト本番でどうしても思い出せない・・・・・・」 そんな悔しい経験はありませんか?

それは、あなたが頭が悪いわけではなく、勉強法、覚え方、記憶の方法が正しくなかっただけなのです。
そこで、単なる一時的なテストだけではなく、「一生モノの知識」を定着させる具体的な学習法について詳しく解説していきます。


実はテスト前は覚えていたのに、本番で思い出せないのは、あなたの記憶力が悪いわけではなく、単に記憶の「深さ」・「段階」を正しく把握できていなかっただけの可能性が非常に高いのです。


多くの人が似たような失敗をする原因が、記憶というものを「覚えているか、忘れているか」または「覚えているか、覚えていないか」二択で考えているという点にあります。


日本のカリスマ予備校講師である出口汪氏は、記憶には以下の『記憶の4段階』があると提唱しています。
『記憶の4段階』

第1段階:『ファミリア』で、見覚えがあるけど全然覚えていない、忘れているものになります。
第2段階:『リコグニション』で、見ればわかるし、選択肢があればわかるものになります。
第3段階:『リコール』で、最初から何も見ずに自力で思い出せるものになります。
第4段階:『オートマティック』で、ストレスなしに無意識に即答できるレベルのものになります。


その上で、私たちがテストで「解けない」「思い出せない」となる最大の原因は、「リコグニション(見ればわかる)」の段階で「覚えた!」と満足して学習を止めてしまうからです。


よくありがちなのが、過去問などを解いてみて、選択肢の中から正しい答えを選択できたから、もうこれは覚えたと認識してしまい、復習を怠ってしまうパターンです。
「リコグニション」の段階では、まだ記憶が弱く、時間が経てば忘れてしまいますし、自力で思い出す必要がある記述式の問題が出題されたら思い出せません。
本当に使える知識にするためには、少なくとも自力で思い出せる「リコール」レベル、できれば「オートマティック」まで引き上げなければならないのです。


英単語1つとってみても、その単語の自分の記憶がいまどのレベルにあるのか、その現在地を客観的に知ることで、勉強の効率は劇的に変わってくるのです。

学習のために体系化された記憶の4段階について

『記憶の4段階』である「ファミリア(familiar)」「リコグニション(recognition)」「リコール(recall)」「オートマティック(automatic)」について具体的に一覧表にしてみるとこのようになります。

段階 レベル 状態の定義 具体的な例
Level 1 ファミリア (Familiar) 「見覚えがある」と感じる。内容は思い出せない。 テストで「これ、教科書の右下に書いてあった気がする…」と感じる状態。
Level 2 リコグニション (Recognition) 選択肢やヒントがあれば、正解を選べる。 選択式のテストなら解けるが、記述式では書けない状態。
Level 3 リコール (Recall) ヒントがなくても、自力で思い出すことができる。 白紙の状態から、用語や公式を書き出せる状態。
Level 4 オートマティック (Automatic) 無意識・反射的に答えが出てくる(習熟状態)。 「1+1=2」や、自分の名前、呼吸するように自然に使える知識。

この『記憶の4段階』については、海外の論文も含め、心理学や脳科学の学術雑誌に掲載された「査読付き論文」があるわけではありません。
しかし、それぞれの段階において、二重プロセス理論スキル習得理論といった心理学や脳科学の確立された理論に基づいた論文発表がいくつかされています。
『記憶の4段階』は、日本での教育の立場から、これらの二重プロセス理論スキル習得理論といった心理学や脳科学の確立された理論に基づいた海外の論文などをもとに、記憶の段階・仕組みを統合的に体系化して、一般学習者向けの書籍や教育プログラム用として広く提唱されているものと考えられます。


『奇跡の記憶術 脳を活かす奇跡の「メタ記憶」勉強法』(出口 汪 著、フォレスト出版)
『出口汪の「最強!」の記憶術』(出口 汪 著、PHP研究所/水王舎)


この記憶の段階について、4段階に分けて学習していくと言う方法は、石井貴士氏の『本当に頭がよくなる1分間記憶法』という本でも似たような方法が推奨されています。
そこでは、次のように分類していますが、記憶の4段階と考えかたが類似しています。

段階 レベル
Level 1 見たことも聞いたこともない
Level 2 見たことはあるがわからない
Level 3 見て3秒でわかる。うろ覚え
Level 4 見て0秒でわかる

『本当に頭がよくなる1分間記憶法』(石井貴志著 SBクリエイティブ)

記憶の各段階における海外の参考論文のご紹介

実際、海外で心理学や脳科学の学術雑誌に掲載された論文をご紹介します。


ファミリアからリコールへ

心理学における記憶研究の金字塔ともいえる重要なレビュー論文として、以下の論文があります。
Yonelinas, A. P. (2002). "The Nature of Recollection and Familiarity: A Review of 30 Years of Research.  Journal of Memory and Language.


このレビュー論文では、私たちが過去のことを思い出す(再認する)とき、脳の中では「レコレクション(Recollection)」「ファミリアリティ(Familiarity)」という、性質の異なる2つのプロセスが働いているとしています。
『レコレクション(Recollection)』は、日本語にすれば『回想』で、「いつ、どこで、誰と」といった具体的な状況やエピソードを伴って思い出すことを言います。
これは「1か0か」の反応で、思い出せるときは鮮明ですが、思い出せないときは全く浮かびません。
『ファミリアリティ(Familiarity)』は、日本語にすれば『親近感』で、具体的な背景は思い出せないけれど、なんとなく「これ、見たことある!」と感じる感覚になります。
これは「強弱」があり、何度も見聞きしたものほど強く感じます。


私たちが単に「覚えている」といっても、実は脳が異なる2つのルートを使って情報を処理していることを証明していて、勉強においても、「なんとなく知っている(親近感)」と「根拠を持って思い出せる(回想)」を区別することが大切になってきます。


この論文は、学習・勉強する際には、一度は見たことあるという覚えた気になっている『ファミリア(familiar) 』ではなく、自力で引き出すことができる『リコール(recall)』のレベルまでしっかりと学習すべきという実践的な記憶の4段階の考え方に繋がっているものと考えられます。


リコグニションとリコールへ

リコグニション(recognition)リコール(recall)についても興味深い論文があります。
Shiffrin, R. M., & Schneider, W. (1977). "Controlled and automatic human information processing: II. Perceptual learning, automatic attending, and a general theory." Psychological Review.

一般的には「選択肢があればわかるリコグニション(recognition)」ほうが「自力で思い出すリコール(recall)」よりも簡単だと考えられています。
しかし、特定の条件下において、自力では思い出せるのに、選択肢を見せられると正解が選べないという現象が起こることが証明されています。


このことから、論文ではリコグニション(recognition)とリコール(recall)の違いを分けるのは、脳内の「記憶の強さ」そのものではなく、「覚える時に一緒に保存した情報(手がかり)」ではないかと結論づけています。


リコグニション(recognition)は、目の前の単語そのものがヒントであり、リコール(recall)は、覚えた時の状況や関連ワードがヒントになっていて、「ターゲットの単語」そのものを提示されるよりも、覚える時に強く関連付けた「特定のヒント」を提示されるほうが、記憶が引き出されやすい場合があるということが指摘されています。


最近ではマークシート式のテストも多く、多少うろ覚えで、はっきり思い出せなくても、選択肢が示されていれば正解をみつけることが多いため、選択肢があれば思い出せるリコグニション(recognition)の段階で学習をやめてしまい、自力で思い出せるリコール(recall)までやらないといったケースもあります。


しかし選択肢に頼って見ればわかるレベルでの学習だと、目の前の単語そのものだけがヒントになりますが、本番で少しひねった聞かれ方をしたり、緊張状態であったりすると、たちまちそのヒントが機能しなくなってしまいます。


一方で自力で思い出す訓練をしている人は、自分の中に強力な「引き出しの手がかり」ができているので、思い出せるようになります。
最低でもリコール(recall)の段階までは学習をすべきというのは、そういうところで、単に記憶を強くするためという以外に、どんな状況でも、自力で記憶の糸をたぐり寄せられる状態を作っておかなければ、なかなか本番では通用しないということなのかもしれません。


理想はオートマティック(automatic)

オートマティック(automatic)の段階における論文としては、次のような論文があります。
Shiffrin, R. M., & Schneider, W. (1977). "Controlled and automatic human information processing: II. Perceptual learning, automatic attending, and a general theory." Psychological Review.


この論文では、人間の頭の使い道には2つのモードがあるとしています。
その2つとは、『コントロール(制御)処理』『オートマティック(自動)処理』の2つのモードです。


『コントロール(制御)処理』とは、初めて自転車に乗る時などで新しいことを学ぶ時のモードで、意識を集中させる必要があり、疲れやすく、一度に一つのことしかできません。


『オートマティック(自動)処理』は、慣れた道で自転車を漕いでいる時のようなもので、練習を繰り返して「自動化」されたモードであり、もう無意識に、速く、疲れずに実行できる状態です。

実践! 記憶の4段階を『contribute 貢献する』で理解する

さて、この記憶の4段階の表を、実際の英単語の 『contribute 貢献する』 という単語を例にあてはめていくとどうなるのか、そのイメージをわかりやすく解説していきます。


第一ステージの『ファミリア』ですが、これは一度は見たことがあるということだけはわかるけど、全然思い出せない状態です。
ああ、このCで始まるこの単語、この前、単語帳の右ページの上の方に確かあったような。
なんだったかな。
こんな状態では、意味も全く分かりませんし、当然テストでも得点には結びつきません。


第二ステージの『リコグニション』ですが、手がかりがあれば思い出せたり、選択肢の中から選び出すことはできるけど、手がかりがなければ思い出せない状態です。
英文の中で contribute という単語を見れば、周りの流れから「あ、これは『貢献する』だ」とわかるけど、単語単独で見るなど、思い出す手がかりがなかったり、日本語から英語を思い出したりすることはできません。
選択肢があるテストであったり、リーディング問題なら解けるかもしれません。


第三ステージの『リコール』ですが、ヒントがなくても自力で思い出せる状態です。
単語単独でみても、『貢献する』ってわかるし、『貢献する』って英語で何だっけ?」
と考えた時に、「contribute」と自力で書き出したり発音したりできる状態です。
きちんと記憶されているので、記述式のテストでも、英作文でも、リスニングでも、対応できます。


第四ステージの『オートマティック』ですが、見た瞬間、反射的に反応できる状態です。
contribute という単語を見た瞬間、貢献するイメージが頭の中に浮かんでくる状態です。
激しい運動をしているとき聞かれても、何のストレスも感じず、とっさに答えられるレベルです。
貢献するということを言おうとしたときに、反射的にcontribute と口から出てくるため、英会話や速いスピードが要求されるリスニングや長文読解でも武器になります。

記憶の4段階を理解し、時間がない時の効率的な勉強法を考える

たとえば、英語のテストで、試験までに時間がない場合、効率的に点数を取るのに、この記憶の4段階を応用し、優先順位をつけて勉強していくことができます。


まずは覚える単語が、自分の記憶の中で4段階のうちのどの段階にあるのかをチェックします。
瞬時に反射的に出てきたら「オートマティック」、一呼吸置いてスムーズに出てきたら「リコール」、思い出せたけど少し時間を要したなら「リコグニション」、思いだせなかったら「ファミリア」又は、所見の単語というように分類します。


時間がない場合、自力でもきちんと思い出せるために、「ファミリア」の段階の単語を無理やり頑張って「リコール」の段階まで引き上げようとすると時間が足りなくなります。


もちろん「オートマチック」の段階の単語は、既に自由自在に使いこなせていて問題ないのでOKです。覚える必要はありません。


まずは「ファミリア」の段階の単語を大量に「リコール」ではなく、とりあえず「リコグニション」(見ればわかる)レベル、英文の中で思い出したり、選択肢があれば正解できるレベルの単語にしていきます。


英単語の意味だけを単独で問われる英単語テストならともかく、完璧でなくても、周りの英文や選択肢など、何かのヒントで思い出すことができれば、ある程度対応できます。


そして時間があれば、その中で特に試験に出やすい重要な単語から、リコール(自力で出せる)の段階に格上げしていくというステップで進めていくのが効率的な時間の使い方としてオススメです。


記憶のレベルを覚えている、覚えていないという二元で考えるのではなく、「ファミリア」から「オートマティック」までの4段階で捉えることで、ただ闇雲に繰り返す勉強から、「この単語はあと一歩で得点源になるから、今はこれに集中しよう」という戦略的な勉強に切り替えることができます。

科目によっても、試験内容によっても、必要とされる記憶レベルが変わってくる

理科・社会の暗記系科目、物知りクイズで、覚えたはずなのに、忘れて思い出せないというのは、選択肢などから選択できたことで覚えた気になって、リコグニションの段階で反復をやめてしまったため自力で思い出せない可能性があります。


また、語学に関して言えば、例えばTOEIC試験などで、単語はほとんど知っている、覚えている、でも長文読解に時間が足らないしものすごく疲れるという場合は、英単語をリコール(recall)の段階までは覚えているものの、オートマティック(automatic)の段階までは学習できていない可能性もあります。


他の科目の試験であれば、例えば、ノルウェーの首都を聞かれて、オスロが出てくるのに3秒かかっても問題ありませんが、語学の場合は、単語自体しっかり記憶されていても、長文を読み単語を見るたびに思い出すのに3秒かかっていたら、時間がかかってしまいかなりのロスになり時間切れになってしまいます。


理想的には、みんなオートマティックレベルというようになりますが、時間がない場合、試験がマークシートなどの選択肢なのか記述式なのか、どういった形式で問われるのか、語学にように瞬発力が必要な試験なのかということに合わせ、記憶の4段階のうちどの程度にまでしておけばいいかを考えていくことがオススメです。


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