「肝」の文字が入った漢方処方 | 健康トピックス

「肝」の文字が入った主要な漢方処方には、鶏肝丸(けいかんがん)、柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)、柴胡疎肝湯(さいこそかんとう)、洗肝明目湯(せんかんめいもくとう)、伏竜肝湯(ぶくりゅうかんとう)、抑肝散(よくかんさん)、抑肝散加芍薬黄連(よくかんさんかしゃくやくおうれん)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)などがあります。

抑肝散関連の処方

『抑肝散(よくかんさん)』は、その名も「肝」を「抑える」といった処方名になっていますが、「肝」と何か関係があるのでしょうか。

抑肝散の効能を見てみると、「体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症」となっています。

実は、これらの症状は、肝の気・血の流れが悪化して起こってくるもので、抑肝散はこの「肝」での気・血の流れの悪化を改善してくれる漢方処方になっています。

漢方でいう「肝」は、全身の気をめぐらせ、精神状態を安定させる働きがあると同時に、血の流れを調整する働きがあります。

西洋医学でいう肝臓というイメージよりも、自律神経や情緒などをコントロールする働きをイメージしたほうがわかりやすいかもしれません。

抑肝散の構成生薬の働き

抑肝散を構成している川?と当帰は、肝での気・血の流れをサポートする働きがあり、白朮・甘草は肝の気の流れが悪くなったことにより悪化した脾胃の働きを補い、茯苓は、脾胃の働きが悪化したことによる胃内の余分な水分を除いて、胃の働きを高める作用があります。

肝の気・血の流れが悪くなると、肝が熱を持ち、それが心に伝わることで不眠症や神経症、更年期障害や高血圧につながりますが、柴胡が肝の熱を冷まします。

『抑肝散』は、その名にふさわしく、肝の気・血の悪化からくる症状を改善することにより、いろいろな症状に効果が発揮されているのです。

竜胆瀉肝湯

『竜胆瀉肝湯(りゅうかんしゃかんとう)』は、その効能をみると「体力中等度以上で、下腹部に熱感や痛みがあるものの次の諸症:排尿痛、残尿感、尿のにごり、こしけ(おりもの)、頻尿」となっています。

邪気により、また内部で発生した火が、気や血の通り道である三焦(さんしょう)に侵入して全体的に熱がでて、水の流れが悪くなり、肝・胆に湿熱がこもり、それが経絡を通り陰部に湿熱が及ぶことで泌尿器や生殖器が炎症を起こすと考えられ、こうした病態に効くのが竜胆瀉肝湯になります。

処方の名前に出てくる竜胆は、君薬(くんやく)にあたり、洋薬でいう主薬にあたりますが、肝・胆にこもった湿熱を冷やす働きがあります。

それでは、瀉肝(しゃかん)とは何かというと、精神情緒や生理機能の調整をつかさど「肝」の失調により生じた病邪、特に熱邪を除去することをいいます。

処方名を見ただけで、君薬とその作用が一目瞭然となっているのです。

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