コレステロールが高い人は、コレステロールを多く含む食品、例えば卵などの摂取を控えるようにと言われていました。
コレステロールは食事による摂取だけではない
コレステロールを多く含む食材の摂取を抑えれば、体に入ってくるコレステロールの量が少なくなるのだから、コレステロール値も下がってくると思ってしまいますが、実はそんなに単純なことではないのです。
コレステロールは、食事による摂取の他に、肝臓でも作られているのです。
アセチルCoAから、メバロン酸を経て、コレステロールが合成されているわけですが、これは、口から入ってくるコレステロールが少なくなると、コレステロールが少なくなってきたのでコレステロールを合成しないということで、肝臓が働きだすのです。
実際に、食事から摂取するコレステロールは、血中コレステロール値にほとんど影響をしないことがわかっていて、食事で摂るコレステロールを1日900mgまで増やしても、血中のLDLコレステロール値は上がらなかったという研究データもでています。
LDL-コレステロールは本当に悪者なのか
よくLDLコレステロールは悪玉、HDLコレステロールは善玉というような言われ方をします。
コレステロールは、脂溶性成分なのでトリグリセライド、リン脂質、アポ蛋白などと一緒になりリポ蛋白という形で血液中を流れています。
このリポ蛋白の比重や、構成成分の比率によって、LDLコレステロールやHDLコレステロールが分かれてくるのです。
そして健康診断などで測定されているコレステロールの値は、比重が違うこれらのコレステロールを超遠心分離によって比重による分画に分け、その分画の中でのコレステロールの量を測定しているのです。
LDLコレステロールは、心筋梗塞などの血管系疾患を引き起こす悪者というイメージがありますが、本当に悪いのはLDLコレステロールそのものではなく、酸化したり糖化した変性LDLなのです。
もちろん、LDLコレステロールが増えれば、変性LDLが多くなる可能性が考えられますが、本当の悪者は、『変性LDL』ということになります。
新たな指標、ApoB/ApoA1
最近では、動脈硬化の進行度合いの最適な指標ではないかと言われているのが、ApoB/ApoA1です。
このApoB/ApoA1の数値が、0.8以上になると心筋梗塞や狭心症の発症率が高まると言われています。
この数値は何なのかというと、コレステロールは血中をリポ蛋白という形で流れていて、そのリポ蛋白は、コレステロールの他に、トリグリセライドやリン脂質、アポ蛋白が一緒になっているということをいいましたが、このリポ蛋白に含まれているアポ蛋白です。
LDLコレステロールと一緒にリポ蛋白を形成しているのがApoB、HDLコレステロールと一緒にリポ蛋白を形成しているのがApoA1で、ApoB/ApoA1はその比になります。
このApoB/ApoA1の数値は、糖質を多く摂取すると悪化し、脂質を摂ることで改善することも前向き都市農村疫学(PURE)調査でわかってきています。
<参考: THE LANCET VOLUME 5, ISSUE 10, P774-787, OCTOBER 01, 2017>
急性心筋梗塞リスクの指標として、コレステロール値またはそれらの比よりも、アポリポ蛋白質B100(ApoB)/アポリポ蛋白質A1(ApoA1)比の方が有用であることが示された。カナダMcMaster大学のMatthew J McQueen氏らの報告で、詳細はLancet誌2008年7月19日号に掲載されています。
ApoBはLDLの輸送蛋白質で、アテローム生成誘発の指標だ。HDLの代謝にかかわるApoA1は、これを阻止する役割を担う。
これまで、ほとんどのガイドラインが、コレステロールを指標とするアプローチを推奨しており、日常診療においてアポリポ蛋白質が顧みられることはありませんでした。
最近になって、ApoBとApoA1が、それらを構成成分として含むLDL、HDLよりマーカーとして有効かどうかに関する議論が行われるようになりました。
しかし、マーカーとしてのそれらの有効性を厳格に比較した研究はなかったのです。