睡眠の質には、普段の生活習慣も深く関係していますが、実は遺伝的要因もあり、睡眠の質が良いか悪いかは、遺伝型によっても違ってくるようです。
睡眠時間が短い日本人
睡眠時間が少ないと言われている日本。2021年の調べでは約7.3時間でOECD加盟国30カ国中最下位になっていて、日本人の睡眠時間は、2021年の調べでは平均7時間42分で、OECD加盟国30カ国中最下位となっています。
しかも過去20年間ずっと減少を続けていて、特に40~50代の働き盛りの年代層の睡眠時間をみると7時間そこそこで、女性も睡眠時間が短くなっています。
各国の睡眠時間をみてみると、欧米は長く、特に東アジアは短い傾向があり、韓国が7.85時間、イギリスが8.4時間、フランスが8.5時間、アメリカが8.8時間となっています。
寝不足や睡眠の質の低下は、生活習慣病を引き起こしたり、認知症にも関係するなど、健康状態を悪化させることが知られています。
一方で、睡眠時間が7時間未満の短い人よりも、睡眠時間が9時間~10時間以上の長い人の方が心臓病や脳卒中のリスクが高いという研究報告もあります。
必要な睡眠時間には個人差があり、睡眠時間は何時間だから良いというようには一概には言えないのですが、十分睡眠時間を取っている場合でも、睡眠の質が悪いために睡眠時間が長くなっている場合もあるので、睡眠時間だけでなく、睡眠の質ということも重要になってきます。
睡眠の質にも遺伝子が関与
ブラジルのリオグランデ・ド・スル連邦大学の研究グループは、RORA遺伝子に存在するSNPであるrs782931に「AA」または「AG」の遺伝子型をもつ人は、「GG」の遺伝子型をもつ人よりも睡眠の質が悪い傾向にあるということを発表しています。
この研究は、参加者に、過去1か月間の睡眠について、主観的な睡眠の質・入眠する時間・睡眠時間・睡眠の効率・睡眠の困難さ・睡眠薬の使用・昼間の眠気の状況についての質問をし解答してもらい、入眠する時間・睡眠時間・睡眠の効率に対する回答を除いた結果を睡眠の質と判断して、その得点が高い人ほど、睡眠の質が悪いという判定をした結果、RORA遺伝子に存在するrs782931と睡眠の質に関連が深いという結論になっています。
睡眠の質が悪い遺伝子でも大丈夫
睡眠の質が悪いタイプの遺伝子型であったとしても、悲観する必要はまったくありません。
鳥取大学をはじめとする研究グループの研究では、女子大学生の睡眠の質に関する要因を調査した結果、不安傾向・足先の冷え・起床時刻の遅れの3つが特に睡眠の質の低下に大きく関与していることがわかっています。
不安になりやすい性格だと自覚している方や、冷え性の方は特に注意をし、足先を温める、起床時刻を定め規則正しい生活をすることで、睡眠の質を改善していくことができます。
また、厚生労働省では、「健康づくりのための睡眠指針2014」というものを出していて、ここには睡眠を整えて健康的な生活を送るための12か条が提案されていますので、参考にしてみると良いでしょう。
<参考:「健康づくりのための睡眠指針2014」(厚生労働省)>
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf