ブランドというものに弱い人間の脳 | 賢脳トピックス

芸能人が高級ワインと普通のワインを飲み、どちらが高級ワインだったかを当てたり、プロの演奏と素人の演奏を聴いて、どちらがプロの演奏だったかを言い当てたりする番組がありますが、結構はずしていたりします。

また、普通のチョコレートを、「これはブランドのチョコレートだ」と言うと、「うん、やっぱりそのあたりのチョコレートとは全然違うね」と普通の市販されているチョコレートをべた褒めしたりするドッキリ風の企画もあったりします。

こういうのを見ていると、いかに人間の脳はブランドに弱く、ブランドというものがあまりにも過剰に評価されすぎている面もあります。

ブランドとプライドの間で

ブランドということでいうと、音楽関連でブランドに関係するリパッティ事件という事件がありました。

リパッティとは、ルーマニアの有名なピアニストで、彼の奏でる音おは一切の濁りがなくどこまでも透明な水晶のようだという評価を得ていました。

彼は若くしてこの世を去ってしまったためか、残された演奏録音は少なく、希少価値があるものでした。

驚異的な完成度の高い絶品とまで評されるリパッティの演奏でしたが、ショパンのピアノ協奏曲の演奏が出てきて、それを聞いた音楽家たちは、「最高のショパン演奏だ」と絶賛しました。

そして、LPはクラシック音楽のロングセラーとなったのですが、その数十年後、その録音は、知名度が低い女性ピアニストの演奏であることがわかり、さらに再調査した結果、本物のリパッティの録音が発見されて、改めて世に出されたのでした。

そこで、知名度が低い女性ピアニストの演奏を、リパッティの演奏だと思い込み絶賛していた音楽家たちの対応は2つにわかれました。

ある音楽家たちは、「あれはどう考えても女性の演奏だった。新しく発見された録音こそが、まさしくリパッティらしい演奏だ。」とプライドを捨て、ブランドをとりました。

一方で、別の音楽家たちは、「いや、あの知名度は低いのかもしれないが、その女性ピアニストの演奏こそが最高の演奏だった。」とブランドをすて、プライドをとりました。

ブランドとプライドの間で揺れ動く人間の心理の面白さがわかる事件でした。

普通のワインも高級ワインだといってだせば美味しくなる

ワインを飲むと、知的快楽を生み出す脳部位とされ『内側眼窩前頭皮質(ないそくがんかぜんとうひしつ)』という部位が活性化することが知られています。

そこで、テレビ番組のモニタリングでやりそうないかにもいじわるな実験が行われています。

3種類のワインを用意していないのに、実験参加者には「5種類のワインを飲み比べてほしい」と依頼し、しかも飲む前に各ワインの価格を教えます。

もちろんこの価格もデタラメなのですが、教えられた価格が高ければ高いほど、『内側眼窩前頭皮質』が強く活性化したという結果がでました。

この結果から、食事の美味しさは、単に成分の化学分子という理屈の世界だけではなく、「高級料理を食べている」という実感も重要なポイントになっているのです。

ブランド、オーラ、ムードといった、化学的なものではない力に反応してしまうのが人間の脳と言えます。

ブランドに対する脳の反応

このように、人間の脳は、そもそも「ブランド」に反応するようにできていて、そこが欠点でもあります。

だからこそ、ニセブランドに騙されたりしてしまうし、ブランドに全く興味がない人からすると、なんであんなくだらないものにお金をかけるんだろうということになってしまいます。

例えば、時計ですが、すごいブランド時計ともなると、ものすごく高額なものになりますが、時間さえわかればいいという本来の時計の機能性だけを考えれば、安いものだと1000円もだせば買えるはずです。

ブランドを否定することは簡単ですが、自分に宿るブランド意識を素直に認めたとき、自分の嗜好や判断に新しい展開が広がっていくのかもしれません。

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