受験勉強、就職活動、昇進試験、資格試験、この世はとにかく試験試験で、しかも知識偏重ともいわれる中、より多くのことを正確に覚えた者が勝者になるといった感じになっています。
だからこそ、魔法の杖ではないですが、一度見聞きしたことは全て正確に記憶できる高性能な脳を持てたらと夢みたりする人もいると思います。
忘れることは悪いことなのか
私たち人間は、『忘れる』ということに対してあまり良いイメージを持っていないところがあります。
学習というものが知識や技術の積み重ねであるとすれば、忘却は今まで苦労して得てきたものを喪失することになります。
これは学習だけにとどまらず、大切な恋人の誕生日をド忘れしてしまう、家に帰る道を忘れてしまうなんてことがあれば、生活に支障がでてきますし、テストのときに答えが思いだせないとなれば、一大事です。
しかし、この忘れることが『精度の高いスパムフィルター』としての脳の役割でもあるという考えかたもあります。
つまり、余計なことを忘れることによって、脳は大切なことに集中して、求めている情報を思い浮かべることができるというのです。
勘違いや間違いは知識が多いから起こることも
テストなどの問題で、勘違いしてしまったりするミスがあります。
特に似たような言葉などで起こったりします。
例えば、1つの例として、bleach(漂白する)と、breach(違反、破る)という英単語があります。
なまじ両方の単語を知っていると、頭の中で、あれ? bleachとbreachどっちだったかなということで混同が起きてしまいミスにつながりやすくなります。
もし、例えば bleachという単語を知らないで、breachしか知らなければ、混同することもないでしょうが、知識が豊富にありすぎたためにミスしてしまうというものです。
知識が豊富が故に、それが仇となってミスしてしまうことがあります。
例えば、記憶力を競う大会などに出場し、優勝を競うような人達に、アメリカ合衆国大統領の名前や、日本シリーズで優勝したチームなどを答えさせると、意外とミスしたりするものです。
この記憶力のスペシャリストたちのミスは、鍛錬された人たちでのことなので、うっかりミスや集中力の欠如というよりは、知識が豊富なことがかえって仇となってしまうケースです。
余計な記憶が邪魔になることも
例えば、以前使っていたメールのパスワードが、新しいメールを使うときにも浮かんできたり、自分の住所を書こうとして、以前住んでいた家の住所が思い浮かんできたら、それこそ生活に不便になってしまいます。
人間は忘れることで、今本当に大切な知識に集中することができるのです。
アメリカの心理学者であるウィリアム・ジェームズは、「人間が全てを覚えているとすれば、何一つ覚えていない場合と同様に都合が悪い場合がほとんどだ」と言っていますが、まさにその通りなのです。