人間は、新たなものを作り出していくようなクリエイティブな仕事をする場合、怠惰思考・睡眠が大切だと言われています。
『怠惰』というと怠け者みたいな感じで、あまりイメージが良くありませんが、クリエイティブな仕事のためには怠惰思考が大切なのです。
怠惰思考とは
怠惰思考とは、仕事をやらずに寝かせるということです。
お酒づくりにも、熟成期間が大切というわけです。
真面目な人からすると、仕事をせずに放置するというのは非常に勇気がいることですが、クリエイティブな仕事、創造するためには相応の熟成期間が必要なのです。
熟成期間がないお酒はあまり美味くないのと一緒です。
人には、身の回りにあるものごとや自分が経験したことの中から規則を見出す能力があり、さらに自分の経験と他人から聞いたりしたことを結びつけて視野を広げていく能力もあります。そしてはじめての問題やわからないことにぶつかり考えます。その過程で熟成期間が必要になってくるのです。
参考:Wallas, G. The Art of Thought. Harcourt Brace 1962.
ひらめきと怠惰思考
アイデアを一生懸命考えろ!と言われて、ディスクに座りパソコンと睨めっこしていても、ありきたりのアイデアしか出てこないという経験をしている人もいると思います。
どうせ思いつかないんだったら、息抜きに喫茶店にでも行くかと勤務時間内に職場を抜け出して、ゆったりとBGMのかかった喫茶店で珈琲を飲んでいるときに、思わぬアイデアがひらめいたというようなこともあります。
イギリスの政治学者、社会学者であるグレアム・ウォーラスによれば、人がアイデアをひらめいたり、創意工夫に満ちた着想を得るためには『王道』があり、それは4つのステップから成り立っているのだそうです。
ステップ1:課題に直面する
ステップ2:課題を放置することを決断する
ステップ3:休止期間を置く
ステップ4:解決策をふと思いつく
特にこの中で重要なのがステップ3の休止期間を置くことです。
この休止期間を置くという行為こそが、『怠惰思考』なのです。
アイデアが必要となってくるような仕事は、時間的に十分な余裕をもって手をつけることが大切です。
書類とかは『締切が先だから』と封もあけずに放置するよりも、とりあえず一度目を通してから放置していたほうがいいのです。
そのほうが何かのきっかけで、良いアイデアや解決法を思いつくチャンスが高くなります。
睡眠と能力
カリフォルニア大学のメドニク博士らは、与えられた3つの単語に共通する言葉を探すというRATテストという試験を77人に対して行っています。
たとえば、『動物・オーストラア・ユーカリ』だったら、『コアラ』などが正解というようなテストです。
このテストでは、解答のために長い時間を与えたのですが、ずっと起きていた人よりも、睡眠をとった人の方が成績は良いという結果になっています。
しかも、長く眠ればよいというわけではなく、『レム睡眠』が多い人ほど成績が高かったという結果がでているのです。
参考:Proc Natl Acad Sci U.S.A., 106: 10130-10134, 2009.