実は、セクハラやマタハラの成否を判断するのは簡単なことではありません。
そもそも、判断が簡単ではないものなのに、就業規則にセクハラの禁止規定があって、懲戒規定などにより安易に懲戒処分になってしまったり、逆にセクハラ被害があったにもかかわらず、会社側がきちんと対応しないといったケースもあります。
対価型セクハラと環境型セクハラ
それでは、セクハラの定義をみてみましょう。
セクハラ(セクシャルハラスメント)は、1997年の『男女雇用機会均等法』の改正に基づき、事業主にセクハラへの配慮義務が課されるようになり、それが2006年の改正で防止措置から義務化され、『セクハラ防止のために事業者が講ずべき事項』が示されています。
『セクハラ』は、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、言及などの不利益を受ける『対価型セクシャルハラスメント』、労働者の意に反する性的な言動が行われることで職場の環境が深いなものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じる『環境型セクシャルハラスメント』があります。
ここで、問題となるのが『労働者の意に反する』という言葉です。
相手の主観で基準を認定するのであれば、確かにセクハラなんて言うけど、相手の受け取り方次第だろというのは非常に論理的で正しいことになり、それは主観の問題だろということになってしまいます。
でも、本当にそうであれば、「目つきがセクハラだった」とか、「声がセクハラだった」とか、何でもセクハラとなり得ることになってしまい、これでは、ろくに相手の目をみて会話をすること事態、ままならぬことになってしまい、それこそ業務し支障を来して本末転倒です。
同じことでもイケメンは無罪放免、ブサメンならセクハラ?
よく言われるのが、セクハラかどうかは、やられた側の受け取り方次第ということが言われたりします。
逆に、セクハラをした加害者側も、セクハラと言ったって、それは受け取り方次第で、被害者側の受け取り方が異常なんだと言い訳や言い逃れをしたりします。
実際には、相手の被害者意識を参考にしつつ、具体的な事情から相手の性格は一旦おいておいて、年齢や立場が同じだったら、それが「意に反する性的言動」に当たるのかどうかが考えられます。
相手の主観と客観的な事情を両方加味して、セクハラかどうかの成否が判断されることになります。
つまり相手が性的言動について極端に敏感であったり、鈍感であったりというのは個人差があり、同じことをしても結果が違うというのは非論理的なので、これを修正して客観的にみて平均的なところで判断するというわけです。
しかし、相手が性的言動に対して敏感であることを知っているのに、あえて性的言動に及んだようなケースでは、「意に反する性的言動」であったと認定されたりします。
もちろん日頃の人間性ということも大きく影響すると思いますが、絶対に相手がイケメンとブサメンでは差が出てくる、または好みか好みでないかで差がでてくることもあるのかもしれず、なかなか判定が難しいのかもしれません。
何を言ったらセクハラなの?
セクハラになるかどうかは、人間関係にもよりますし、どこからセクハラ発言なのか、グレーゾーンでなかなか判断できません。
例え相手がニコニコしていても、相手があわせてくれていたり、愛想よくふるまってくれているだけの可能性もありますので、よほど人間関係に自信がなければ控えるべきでしょう。
ですので、グレーゾーンでも極力余分なことは言わないにこしたことがないのです。
「かわいいね」、「きれいだね」など、好意であっても、1回ぐらい言うのであればともかく、毎日のように言うなど言いすぎると「気持ち悪いと思われる可能性があるのでは」と思う感覚も大切です。
セクハラ発言にならないようにするコツとしては、次のような工夫があります。
食事へ誘うなら「みんなで食事にいきましょう」と言うようにする
育休・産休などについて聞くときは、法的な制度のために必要だと前置きする
褒める時は、外見・容姿ではなく、仕事ぶりやがんばり、態度をほめる
男性、女性のどちらかにしか通用しないほめ言葉は使わない