法律の文書を読んでいると、次のような記載をよく見かけます。
「この法律の施行の日以後における改正後のそれぞれの法律の適用については、・・・」
「以後」と「以降」の違いはあるのか
この中で注目したいのが「以後」という言葉ですが、「以後」と似たような言葉に「以降」という言葉があります。
例えば、「以下」と「未満」でしたら、多くの人がご存じのとおり、そのもの、つまり基準点を含むかどうかの違いがあります。
1,000円以下といえば、1,000円も入りますが、1,000円未満となれば、1,000円は入らず、999円以下ということになります。
この点、「以後」も「以降」も基準点を含んだ言い回しなので、どちらも「今を含めて今後」ということができます。
それならば、「以後」も「以降」も同じことにあるから、どちらかに統一したほうがいいのではないかという意見もでてきます。
しかし、「以後」と「以降」には、微妙なニュアンスの違いがあるのです。
例えば、取引先との商談に成功し、商品Aを注文してもらえるようになりました。
その時、あなたならお礼の手紙を次の2つのうちどちらで書くでしょうか。
1.「この度はご注文をいただき誠にありがとうございます。これ以降、どうぞよろしくお願いいたします。」
2.「この度はご注文をいただき誠にありがとうございます。これ以後、どうぞよろしくお願いいたします。」
この手紙で違っているのは、「以降」か「以後」かの部分だけです。
お礼の手紙であれば、
2.「この度はご注文をいただき誠にありがとうございます。これ以後、どうぞよろしくお願いいたします。」
と書く方が良いのです。
わかりにくいのですが、 「以降」の場合は、今後も定期的にずっとというニュアンスになりますし、「以後」の場合は、今後これからずっとというニュアンスになるのです。
「から」と「から起算して」の違いはあるのか
もう一つ、まぎらわしいけど意味が全然ちがってくる面白い事例を紹介します。
法律文を読んでいると、次のような形がよく出てきます。
「次に掲げる期間を経過した日から起算して三月以内の期間」
まずは三月以内、つまり三カ月以内ですが、これは「以内」ですので、ジャスト三カ月目も入るということになります。
問題は、「から起算して」の部分で、ただ単に「から」と書くのでは大きく違ってきます。
この言い回しは、法律の条文だけでなく、契約書などでもよく出てくる言い回しなので、覚えておいてもいいでしょう。
さて、ここで問題です。
次の2つの場合は、それぞれ何日までにという意味になるでしょうか
1. 1月1日から10日以内
2. 1月1日から起算して10日以内
結論を言うと、「1. 1月1日から10日以内」は、1月11日中までということになり、「2. 1月1日から起算して10日以内」は、1月10日中までということになります。
民法140条には、初日不算入の原則というものがあり、特段にこれといった異なる定めをしない限り、この原則が生きるので、初日はカウントされません。
したがって、単に1月1日から3日間とすると、1月1日を入れずに翌日の1月2日からカウントするので、1月4日中までということになります。
ところが、1月1日から起算して3日間とすると、「から起算して」ときちんと初日もカウントに入れなさいよ!としているので、1月3日中になるというわけです。