人と人とがコミュニケーションをとる時、いろいろな技法があります。その中でも、今回は繰り返しについて述べていきたいと思います。
繰り返しのコツとは
よく、繰り返しというと、一般的なコミュニケーションの手法として、相手が言ったことをオウム返しのようにして言い返すというようなことを連想する人もいるかもしれません。
確かに繰り返しは、相手が言ったことをそのまま繰り返すわけですが、何でもかんでもただ繰り返せばいいというものではありません。
相手が言っていることをそのまま繰り返すだけであれば、園児だってコミュニケーションの達人になれてしまいます。
何でもかんでも、自分が言ったことを繰り返されたときのことを考えてみてください。あなたはきっと、相手に馬鹿にされていると思うのではないでしょうか。
まずは、何でもかんでも繰り返すのではなく、何を繰り返すのかということが大切なのです。相手の感情が強く動いたところを察知して、そこを相手が言ったとおり繰り返すことこそが、 「繰り返し」ということになります。
したがって、相手の感情が強く動いたところを察知しなければなりません。
そして、相手の感情が強く動いたところを察知できたら、その部分を相手が言ったとおりに、そのまま繰り返すのがコツです。
「もう、腰が痛くて痛くてたまらないのよ~!」という言葉に対して、
「腰が痛くて痛くてたまらないんですね!」とかぶせるわけです。
そして、この繰り返しをするときには、できるだけ声の強さや高さ、しゃべるスピード、表情や身振り手振りまで、できるだけ同じように繰り返すようにします。
たとえば患者さんが腰に手をあてたのであれば、同じように腰に手をあてるようにします。
最初は照れ臭い部分もあるかもしれませんが、そうすることで、患者とのコミュニケーションがうまくいくようになります。
しかも、できれば少し大げさに繰り返したほうが良いでしょう。なぜならば、どうしても照れや遠慮というものがでてしまうからで、できれば大げさに繰り返したほうが、より硬化が高まります。
そして、ここがポイントだと思ったところに関しては、とにかく繰り返すと良いでしょう。
繰り返しといっても本当に効果があるの?
「あのね、この薬を初めて飲んだんですけどね・・・」
「ええ、初めて飲んだんですね」
「飲んで少ししたら・・・」
「飲んで少ししたら?」
「実は、なんだか気分が悪くなっちゃったんですよ。」
「へぇ~、なんだか気分が悪くなっちゃったんですね。」
「そうなんですよ。だから、それはこの薬のせいじゃないかって思うんです」
「はい、この薬のせいじゃないかと・・・」
「だから飲むの止めちゃったんですけど・・・」
「そうなんですね。飲むの止めちゃったんですね。」
「実はそうなんです。」
こんなことをやっていて、何か効果があるのかな・・・と思う人もいるかもしれません。
しかし、この繰り返しは意外にも効果があるんです。
例えば、繰り返しをするのが恥ずかしいし、面倒臭いし、うなづいたり、相づちを打っていればいいんじゃないかということになりますが、そこを繰り返しを行うことで、逆に相手がこちらの繰り返しに対して、うなずいたり、相づちを打ってくれるようになり、会話のリズムが良くなっていきます。
そして、相手は、繰り返してもらうことで、自分の言ったことが伝わった、わかってもらえたという気分になり、強い満足感を覚えます。これがやがて、この人はきちんと私の言うことを聴いてくれる人だという信頼感に変わっていきます。