認知の歪みと社会的推論 | 薬剤師トピックス

人間は社会的生き物といわれ、自分が心の中で様々な体験をしていきます。

そうした自己過程の中で、人は周囲の人との接し方をどのように作り上げ、身の回りの出来事の原因をどのように考えていくかといった考え方ができあがっていきます。

社会的自己とは

自分についての意識、つまり全自我を、主体としての自己である主我と、他者に知られる自己である客我に分けてとらえると、面白いことがわかってきます。

自我でない客我、つまり他者に知られる自己は、体や衣服などの物理的自己、他者から受ける認識によって形成されている社会的自己、自身の意識状態などの精神的自己の3つで構成されています。

もう少し『社会的自己』についてわかりやすくまとめると、周囲の人たちが自分について抱いているイメージに基づいて、自分の中で形成される自己イメージになります。

つまり、自分の好きな服を着るというのが物理的自己、好きな服を着た上で、周りの人から「その服似合ってるね。」と言われるのが社会的自己になります。

認知の歪み

アメリカの心理学者であるアーロン・ベックは、うつ病患者の治療において、患者たちが現実を歪めて捉えていることから、認知のゆがみについて興味をもち研究をはじめました。

そして、『認知のゆがみ』として10パターンに分類しています。

その10のパターンとは、次のようになっています。
1.全か無かの思考
2.一般化のしすぎ
3.心のフィルター
4.マイナス化思考
5.結論への飛躍
6.拡大解釈と過小評価
7.感情的決めつけ
8.べき思考
9.レッテル貼り
10.個人化

認知の歪みのクセ

『全か無か思考』は、ものごとを0か100、または白か黒かで考える極端な思考で、白黒思考とも言われたりしますが、完全主義がベースになっています。
失敗しちゃったら何もかも無意味だという思考パターンに陥りがちで、ちょっとしたミスでも許せなくなってしまったり、ささいなことで挫折を感じてしまったりする他、他人に対しても同様に厳しい対応を取るようになったりもします。

『一般化のしすぎ』は、1つの出来事や経験を、他のすべての出来事や経験にも当てはめて考えてしまうクセで、1回失恋しただけで、誰も私のことなんか愛してくれないと考え、人間不信になってしまったりします。

『心のフィルター』とは、自分に都合の悪い情報や出来事は排除し、自分に都合の良い情報や出来事だけを見てしまうクセです。
例えば、仕事でミスをした時、自分のミスばかりに目を向けてしまい、良い点を全く見ようとしなかったりといった具合に、ものごとのポジティブな面を意識できず、ネガティブな面ばかりに目がいってしまい、事実を客観的に見れなくなってしまいます。

『マイナス化思考』は、ものごとを全てマイナスにとらえ、ポジティブな面でさえ、自らネガティブにすり替えてしまいます。
例え良いことがあっても、これはたまたまで、次はうまくいかないと考えてしまったり、ブスと言われただけで落ち込んだりしてしまいます。

『結論への飛躍』は、十分な根拠がないにもかかわらず、事実と異なる結論をくだしてしまうクセで、例えばある社員がたまたま仕事でミスをしたことを聞き、それだけで、この人は仕事ができない人だと決めつけてしまったりします。
たまたま会ったけど気づかなかった知人に、無視されたのは自分が嫌われてるからだと心の読みすぎをしてしまったり、先読みしすぎて絶対に状況は悪くなると決めつけてしまったりします。

『拡大解釈と過小評価』は、自分の失敗や欠点を過大に捉え、他人の成功や長所を過小評価する考え方をするクセです。
物事の悪い面を必要以上に過大にとらえる一方、良い面を実際よりも過小にとらえてしまう傾向で、例えば、仕事でプレゼンに失敗したときに、もう二度とプレゼンなんてできないと過度に心配したり、同僚がプレゼンに成功すると、たまたま運がよかっただけと過小評価してりします。

『感情的決めつけ』は、自分の感情を客観的に捉えられず、その感情を事実だと捉えてしまう傾向で、気分の良し悪しによってものごとを判断したり、自分の感情が事実を裏付ける証拠であると考えてしまいます。
例えば、「この仕事をする気力が湧かない。きっと私は一生この仕事はできないんだ」などと考えて、苦手なことから目を逸らしたり逃げたりします。

『べき思考』は、すべき思考とも言われ、~すべき、~せねばならないと考えてしまう思考パターンで、この考えが強いと、必要以上に自分にプレッシャーをかけえ追い込んでしまいます。
もし自分の思い通りにならない相手を強く責めてしまうことがあったら、「すべき思考」にとらわれている可能性があります。

『レッテル貼り』は、自分や他人の価値を、その人の性質や行動の一部分だけを見て決めつけてしまうクセです。
例えば、失敗した時に、「私はダメな人間だ」、「出来損ないだ」と、そのまま自分の価値であるかのような思考で、これが他人に対してのレッテル貼りとなると、衝突の原因にもなりかねません。

『個人化』は、悪い出来事が起きた時に、たとえ自分にその責任がなくても自分のせいにしてしまうクセです。
例えば、子供の成績が悪いのは、親である自分の責任だと思い込んでしまうことなどがこれに当たります。

最新情報をチェックしよう!