
実践!効率的な試験対策:「記憶の4段階」を活用して「速く・大量に・長く」覚える勉強法
できるだけ、元の形を崩さずに、訂正箇所は最低限にしてください。

多くの試験は「知識量」が合否を分けます。
膨大な範囲を効率よく速く覚え、本番まで長く忘れないためには、記憶を「覚えているか否か」の二元論ではなく、『記憶の深さ(記憶の4段階)』で捉えることが重要です。
記憶には、習熟度に合わせて以下の4つのステップがあります。
説明・おさらいのため、一覧表にまとめたものを載せておきますが、各段階の詳細は以下の記事をご参照ください。
参考記事:覚えたのに思い出せないをなくす、記憶の4段階を理解した学習法
ファミリア(Familiar): 見覚えがある
リコグニション(Recognition): 見れば意味がわかる(選択肢があれば正解できる)
リコール(Recall): ヒントがなくても自力で思い出せる
オートマティック(Automatic): 無意識に、即座に引き出せる
| 段階 | レベル | わかりやすい状況 | 推奨目標 |
|---|---|---|---|
| Level 1 |
ファミリア |
・見たことあるけど |
━ |
| Level 2 |
リコグニション |
・見ればわかる |
選択肢から選ぶ |
| Level 3 |
リコール |
・自力で思い出せる |
記述式・一般の試験 |
| Level 4 |
オートマティック |
・ストレスなく、反射的に出てくる |
語学系の試験 |
すべての知識を最高レベルまで引き上げるのが理想ですが、大量の知識を速く覚えるには、試験形式に合わせて「どのレベルまで到達させるか」の目標設定が不可欠です。
選択式試験の場合
最低限見ればわかる、選択肢から選択できる「リコグニション」まで到達していれば対応可能です。
しかし、確実に得点源にするなら、最低でも自力で思い出せる「リコール」の段階まで引き上げておきたいところです。
記述式・一般知識の場合
自力で思い出せる「リコール」レベルまで習熟していないと、歯が立たず本番で点数に結びつく確率は低くなります。
語学系の試験・英単語などの場合
瞬発力を求められる試験などでは、例外的に「オートマティック」のレベルが求められると考えます。
よく「英単語テストするとマニアックな単語までいっぱい知っているのに長文読解になると時間切れで終わらないなどなかなか英語の点数に結びつかない」という人がいますが、その原因は、記憶が「リコール」止まりで、思い出すのに時間がかかりすぎている可能性もあります。
語学は言葉でスピード、つまり反射的に反応するくらい自由自在に使いこなせる必要があります。
この語学の特性を無視し、他の一般知識と同様に「リコール」レベルで自力で思い出せるので、覚えたと認識し、自由自在に使える「オートマティック」レベルにまで記憶の段階を引き上げていないと、高速リーディング、リスニング、スピーキングにおいてスピードについていけなくなってしまうのです。
英語を例に、それぞれの記憶段階のイメージとテスト・実戦での能力を一覧表にしてみました。
| 段階 | レベル | 状態の定義 | 具体的な例 |
|---|---|---|---|
| Level 1 | ファミリア (Familiar) | 「単語帳にあった」記憶はあるが、意味は出てこない。 | 意味がわからないため、得点には結びつかない。 |
| Level 2 | リコグニション (Recognition) | 選択肢の中から選んだり、文脈から意味を推測できる。 | 選択式の試験やスローペースでいい長文読解なら解ける。 |
| Level 3 | リコール (Recall) | 単語単独でも自信をもって思い出せる。 | 英単語テスト、リーディング、英作文、記述式テストで正解。 |
| Level 4 | オートマティック (Automatic) | 日本語を介さず直接イメージと結びついている。反射的に口から出る。 | 高速リーディング、スムーズな英会話にも対応できる。 |
時間制限がないリーディングであれば、リコグニションのレベルでいいでしょうし、英作文であればリコールレベルでもいいのでしょうが、時間制限があるスピードが要求される長文読解、よどみない英会話になると、オートマティックレベルの自由自在に使いこなせるレベルが必要になってきます。
時間制限がないリーディングであれば、リコグニションのレベルでいいでしょうし、英作文であればリコールレベルでもいいのでしょうが、リスニングやスピーキング、時間制限がある長文読解になると、オートマティックレベルの自由自在に使いこなせるレベルが必要になってきます。
記述式を含む一般試験の対策では、限られた時間で得点を最大化するために「どのレベルの記憶を、どこまで引き上げるか」の優先順位が重要です。
効率を重視したオススメの順序をご紹介します。
【最優先】リコグニション → リコール
(「見ればわかる」「選択肢があれば選べる」を「自力で思い出せる」に)
もっともコスパ(時間対効果)が高いステップです。
理由: ゼロから覚えるよりも、すでに「見ればわかる」「選択肢があれば選べる」知識を「自力で思い出せる」状態にする方が圧倒的に短時間で済みます。
効果: 記述式試験では、自力でアウトプットできる「リコール」レベルでないと得点に結びつきません。ここを強化するのが合格への最短ルートです。
【次優先】ファミリア → リコグニション
(「見たことある」を「選べる」に)
「正解の候補を絞る力」を底上げするステップです。
理由: 「なんとなく見たことがある」程度から「選択肢があれば正解がわかる」状態へ引き上げます。
効果: 英語の長文読解で「意味が全くわからない」という事態を激減させます。また、マークシート形式であれば、この段階へのレベルアップで確実に失点を防げます。
【余裕があれば】新規事項 → ファミリア
(「知らない」を「見たことある」に)
知識のフック(索引)を増やす、広く浅い学習です。
理由: 時間がない中で一つの知識を深追いするのは危険です。まずは「本のあそこに書いてあったな」という記憶の取っ掛かり(ファミリア)を脳内に作ります。
効果: 後の学習でリコグニション以上へ引き上げるための「足がかり」になります。
【優先度:低】リコール → オートマティック
(「思い出せる」を「無意識」に)
試験対策としては、基本的には不要なステップです。
理由: 「思い出せれば正解できる」一般試験において、無意識レベルまで磨き上げるのは時間がかかりすぎ、タイパ(タイムパフォーマンス)が悪いです。
注意: ただし、瞬発力が必要な語学系の試験(英単語など)は例外です。それ以外の科目は「リコール」まで到達していれば、よほど解答にスピードを要求される試験でなければ、十分といえます。
記憶を「ファミリア」の状態にするには、脳に「これは無視してはいけない情報だ」と認識させ、フック(記憶の取っ掛かり)を作る作業が効果的です。
高速スキャニング
全体像を把握し、脳に「慣れ(プライミング)」を生じさせる手法で、速読術や多読の書籍などで多く紹介されている方法です。
教科書や参考書、単語帳を薄く、速く、何度も回します。
内容を深く理解しようとせず、まずは全体をパラパラと眺めます。
「1回じっくり読む」よりも「5回短時間で眺める」方が、脳は親近感を抱きやすく、記憶のハードルが下がります。
キーワード・ハンティング
効果的な読書法として知られていて、まず全体を眺めて要点を探していきます。
太字、図解、目次、見出しだけを拾い読みしていきます。
その時、「この言葉、さっきも出てきたな」という感覚を作るだけで、脳内にその情報を入れるための「スペース」が準備されます。
無理やりなリンク
関連のない情報をイメージやストーリーで結びつける「ペグ法」や「場所法」といった方法が記憶術関連の書籍でいろいろと紹介されています。
その用語を一度ネットで画像検索したり、ニュースと関連がないか調べたりしてみます。
また自分の知っている世界と一瞬でもリンクさせることで、ただの記号が「意味を持つ情報」に変わります。
「未知」から「ファミリア」へ引き上げる段階では、慣れ親しむのが一番の目的なので、ここで「理解しよう」と立ち止まらないのがコツです。
「名前を聞いたことがある」「本のあそこに書いてあった」という状態を作るだけで、その後の学習効率は劇的に上がるのです。
<参考>
高速スキャニング
「東大首席弁護士が教える超速7回読み勉強法」(山口真由著、PHP研究所)
「フォトリーディング」(ポール・R・シーリ著、神田昌典訳、フォレスト出版)
キーワードハンティング
「Effective Study」(Francis P. Robinson著、Harper & Row)※SQ3R法の原典
「図解 使える読書術」(アッシュ・ラウ著、サンマーク出版)
無理やりリンク
「記憶力を強くする:最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方」(池谷裕二著、講談社)
「世界一の記憶術」(エラン・カッツ著、三笠書房)
「未知」から「ファミリア」へ引き上げる段階では、慣れ親しむのが一番の目的なので、ここで「理解しよう」と立ち止まらないのがコツです。
「名前を聞いたことがある」「本のあそこに書いてあった」という状態を作るだけで、その後の学習効率は劇的に上がるのです。
「見覚えがある」状態から「見れば意味がわかる」「選択肢があれば選べる」状態へ、脳内にある「情報のインデックス(索引)」に、正しいラベルを貼る作業になります。
チャンク化
短期記憶の容量(7つ前後)を効率化するため、情報を意味のある塊(チャンク)にまとめる手法として知られています。
バラバラの知識を共通点で3~5つのグループに分け、大きな「見出し(ラベル)」をつけ、「あの棚の、あのグループの1つだ」という意識が脳内の検索を助けます。
英単語帳などで分野別に単語をまとめたものがありますが、その方が覚えやすい、身につきやすいというのもチャンク化されているからかもしれません。
脳が「どの棚にしまってあるか」を特定できるため、ヒントを見た時に正解を導き出しやすくなります。
プレ・テストであえて間違える
学ぶ前にテストを受けることで、後の学習の注意力が上がり、記憶の定着が2倍近く向上するという研究があります。
覚える前にあえて問題に挑戦します。
「見覚えがあるもの」が「正解として選ぶべきもの」へと脳内で格上げされます。
間違えた時の「あ、これだったか!」という感情の揺れが、ただの情報を「エピソード記憶」に格上げし、記憶に残りやすくなります。
紐づけ
情報を深く処理(意味を考え、既存知識と関連付け)するほど、記憶が強固になるという理論になっています。
新しく知ったことを「自分の知っている何に似ているか?」と考え、既存の知識と結びつけます。
この時、簡単な図やイラストを添えるとより効果的です。
記憶の「フック(引っ掛かり)」が増えるため、選択肢を見た瞬間にそのイメージが呼び起こされます。
「ファミリア」から「リコグニション」へ引き上げる段階では、ただ眺める時間を減らし、「これとこれは何が違うのか」という差分を意識するだけで精度は劇的に上がります。
カテゴリー分け、フック・紐づけに意識を置くと良いでしょう。
<参考>
チャンク化
「思考の整理学」(外山滋比古著、筑摩書房)
「The Magical Number Seven, Plus or Minus Two」Psychological Review, Vol. 63, No. 2, pp. 81-97.
プレ・テスト
「進化する勉強法:漢字書き取りから英語スピーキングまで」(竹内理著、アルク)
「The pretesting effect: Do unsuccessful retrieval attempts enhance learning?」Journal of Experimental Psychology: Applied, Vol. 15, No. 3, pp. 243-257.
紐づけ(精緻化)
「図解 脳にまかせる勉強法」(池田義博著、ダイヤモンド社)
「Levels of processing: A framework for memory research」Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, Vol. 11, No. 11, pp. 671-684.
「ファミリア」から「リコグニション」へ引き上げる段階では、ただ眺める時間を減らし、「これとこれは何が違うのか」という差分を意識するだけで精度は劇的に上がります。
カテゴリー分け、フック・紐づけに意識を置くと良いでしょう。
「見ればわかる」から「自力で思い出せる」へ、受け身のインプットから、能動的なアウトプットへの切り替えを行う作業で、ここのステップが学習最大の壁と言えます。
能動的想起(アクティブ・リコール)
読むだけよりも「テスト(思い出す)」をする方が記憶に残るという、サイエンス誌などに掲載された有名な論文が根拠になっています。
教科書や参考書を1ページ読んだらすぐに閉じ、「何が書いてあったか」を3つほど口に出してみます。
実は「うーん、何だっけ?」と苦労する時間に、記憶はリコールのレベルへと強化され、脳の回路を太くしていきます。すぐに答えを見てはいけません。
白紙復元法(ブレンダンプ)
何のヒントもない状態で思い出す訓練で、日本において安河内哲也氏や多くの東大生勉強法などで紹介されている方法になります。
真っ白な紙に、学習テーマに関連するキーワードや因果関係を、何も見ずに書き出してみます。
最後に赤ペンで修正することで、自分の「記憶の穴」を可視化することができます。
自分の記憶の「抜け漏れ」が可視化されるため、脳が「次はここをリコールできるようにしよう」と強く意識するようになります。
セルフ・レクチャー(フェイマン・テクニック)
物理学者のファインマンが実践した「子供に教えるように説明する」手法で、認知心理学では「自己説明」と呼ばれています。
専門用語を使わず、子供に教えるつもりで説明する訓練を行います。
もし「説明できない部分」があれば、そこがまだ自分の知識(リコール)になっていない証拠になります。
「理解している」と「説明できる」の間には深い溝があります。説明しようとすることで、バラバラだった知識(リコグニション)が、自分自身の言葉(リコール)に変換されます。
「リコグニション」から「リコール」へ引き上げる段階は、学習最大の壁でエネルギーがいりますが、「思い出しにくい」という苦痛こそが、記憶が強くなっているサインです。
<参考>
能動的想起(アクティブ・リコール)
「短期間で結果を出す人の 科学的な学習法」(ピーター・ブラウン他著、依田卓巳訳、NTT出版)
「The Critical Importance of Retrieval for Learning」Science, Vol. 319, No. 5865, pp. 966-968.
白紙復元法
「結局、自習する人がすべてを手に入れる」(安河内哲也著、青春出版社)
「自学力の育て方」(齊藤孝著、NHK出版)
セルフ・レクチャー
「困ったときのファインマン先生」(リチャード・P. ファインマン著、岩波書店)
「Learn Better:頭の使い方が変わる学習の新しい常識」(アーリック・ボーザー著、月谷真紀訳、ダイヤモンド社)
「リコグニション」から「リコール」へ引き上げる段階は、学習最大の壁でエネルギーがいりますが、「思い出しにくい」という苦痛こそが、記憶が強くなっているサインです。
「思い出せる」から「無意識に反応できる」へ
意識的な努力をゼロにし、脳の容量(ワーキングメモリ)を空けるための訓練になります。
過剰学習(Overlearning)
完全に覚えた後も練習を続けることで、忘却を防ぎ、記憶を定着・自動化させる方法。
「完璧に言えた」ところで止めず、さらにその半分〜同等の回数を繰り返します。
例えば、覚えるのに10回かかったなら、さらに5~10回繰り返します。
「覚えるため」ではなく「素早く出すため」に練習の目的を変える段階です。
過剰学習により、神経の伝達効率が最大化され、脳が「これは生命維持に必要なレベルで重要な情報だ」と判断し、長期記憶に深く刻み込まれます。
タイムプレッシャー
期限や制限時間を設けることで集中力を極限まで高め、処理速度(自動化)を向上させる心理的効果があります。
「0.5秒以内に答える」「前回より1秒早く説明する」というように、制限時間を設けます。
「えーっと」と考える時間を削ることで、脳内の検索ルートが最短化(ショートカット)されていきます。
デュアルタスク
別の作業をしながらでも遂行できる状態を「自動化」の指標とする認知心理学の検証手法としても知られています。
散歩中や皿洗いをしながらといったように、机に座ってではなく「別のことをしながら」リコールします。
意識を他に奪われてもスラスラ出てくれば、自動化完了(オートマティック)になったサインです。
無意識レベルまで定着していない知識は、他の刺激(歩行や騒音)にリソースを奪われると出てこなくなります。これができれば「オートマティック」達成です。
<参考>
過剰学習
「記憶について」(ヘルマン・エビングハウス著、宇津木保訳、岩波書店)
「Does overlearning expend extra effort without payoff?」Applied Cognitive Psychology, Vol. 19, No. 1, pp. 111-124.
タイムプレッシャー
「脳を活かす勉強法:奇跡の強運を呼び込む」(茂木健一郎著、PHP研究所)
「フロー体験 喜びの現象学」(M.チクセントミハイ著、今村浩明訳、世界思想社)
デュアルタスク
「ファスト&スロー(上)」(ダニエル・カーネマン著、村井章子訳、早川書房)
「Controlled and automatic human information processing: I. Detection, search, and attention」Psychological Review, Vol. 84, No. 1, pp. 1-66.
リコールまでにかかった時間の1.5倍の時間、過剰学習をすると良いでしょう。
記憶の4段階と、各段階でのステップアップの意義、その効率的な方法についてまとめてみました。
| レベル移行 | オススメ学習法 | 意識ポイント |
|---|---|---|
|
未知 |
高速スキャニング |
理解しようとしない(慣れるだけ) |
|
ファミリア |
チャンク化 |
違いを意識してラベルを貼る |
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リコグニション |
能動的想起 |
「思い出す苦痛」こそが記憶強化のサイン |
|
リコール |
過剰学習 |
スピードと無意識化で万全 |
動画も作成していますので、参考にしてみてください。