痰に効く漢方処方 | 健康トピックス

『痰』は気管支粘膜から分泌される粘い液体ですが、普段は気道から入ってきたホコリや細菌をくるんで、繊毛運動の働きによって喉まで運ばれ、最後にはペッと吐き出されるもので、痰がちょうど掃除のモップのように働いてくれることで、気道は清浄に保たれています。

しかし、この痰の量が多くなったり、粘りけが強くなってくると、咳や咽の不快感となって表れてきます。

漢方でいう痰

『痰』というと、肺や気管支を連想する人が多いと思いますが、漢方では、「肺は貯痰の器、脾は生痰の源」という言葉があります。

漢方では、『痰』とは、もちろん西洋医学でいう痰も含まれますが、体の中に滞っている余分な物質のことを指し、水分代謝は胃腸の機能低下が原因で発生することが多く、肺はその影響を受けやすいという考え方から、「肺は貯痰の器、脾は生痰の源」という言葉になっています。

漢方でいう脾は、消化器官にあたり、何等かの原因でこの脾の機能が低下したため、飲食物が十分消化されずに、湿がうっ滞して、それが痰や飲に変化し、こうしてできた痰飲は、脾ではなく肺に貯留して、それが痰や咳を引き起こすのです。

いろいろな痰

痰にも、黄色くて粘っこい痰や、ねばねばした痰、水様性でさらさらしているけど大量に出てくる痰などがあります。

漢方でも、痰はいくつかの種類があります。

『寒痰(かんたん)』は、『寒飲(かんいん)』とも言われ、肺や脾が冷えることによって水湿が停滞するために起こってくる痰で、粘稠度の低い透明な痰のことを指し、こういった痰に関しては、小青竜湯苓甘姜味辛夏仁湯による処方がよく行われます。

『熱痰(ねつたん)』は、黄色くてどろどろとした粘稠度がある痰で、肺に湿熱や痰熱がうっ滞して起こってくる痰で、こうした痰については、清肺湯などが処方されます。

『燥痰(そうたん)』は、粘稠度が高く粘り気が強い痰で、喉にからんでなかなか出てこない痰のことをいい、津液の不足が原因と考えられていて、貝母か楼散などの漢方処方が用いられます。

痰に効能がある主な漢方処方13選

痰に効能をもった漢方処方をご紹介します。

①杏蘇散(きょうそさん):体力中等度以下で、気分がすぐれず、汗がなく、ときに顔がむくむものの次の諸症:せき、たん、気管支炎

②柴陥湯(さいかんとう):体力中等度以上で、ときに脇腹(腹)からみぞおちあたりにかけて苦しく、食欲不振で口が苦く、舌に白苔がつき、強いせきが出てたんが切れにくく、ときに胸痛があるものの次の諸症:せき、胸痛、気管支炎

③柴胡枳桔湯(さいこききつとう):体力中等度以上のものの次の諸症:せき、たん

④滋陰降火湯(じいんこうかとう):体力虚弱で、のどにうるおいがなく、たんが切れにくくてせきこみ、皮膚が浅黒く乾燥し、便秘傾向のあるものの次の諸症:気管支炎、せき

⑤滋陰至宝湯(じいんしほうとう):体力虚弱なものの次の諸症:慢性のせき、たん、気管支炎

⑥小青竜湯(しょうせいりゅうとう):体力中等度又はやや虚弱で、うすい水様のたんを伴うせきや鼻水が出るものの次の諸症:気管支炎、気管支ぜんそく、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症

⑦小青竜湯加石膏(しょうせいりゅうとうかせっこう):体力中等度で、うすい水様のたんを伴うせきや鼻水が出て、のどの渇きがあるものの次の諸症:気管支炎、気管支ぜんそく、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒

⑧神秘湯(しんぴとう):体力中等度で、せき、喘鳴、息苦しさがあり、たんが?ないものの次の諸症:小児ぜんそく、気管支ぜんそく、気管支炎

⑨清肺湯(せいはいとう):体力中等度で、せきが続き、たんが多くて切れにくいものの次の諸症:たんの多く出るせき、気管支炎

⑩竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう):体力中等度のものの次の諸症:かぜ、インフルエンザ、肺炎などの回復期に熱が長びいたり、また平熱になっても、気分がさっぱりせず、せきやたんが多くて安眠が出来ないもの

⑪竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう):体力虚弱で、かぜが治りきらず、たんが切れにくく、ときに熱感、強いせきこみ、口が渇くものの次の諸症:からぜき、気管支炎、気管支ぜんそく、口渇、軽い熱中症

⑫麦門冬湯(ばくもんどうとう):体力中等度以下で、たんが切れにくく、ときに強くせきこみ、又は咽頭の乾燥感があるものの次の諸症:からぜき、気管支炎、気管支ぜんそく、咽頭炎、しわがれ声

⑬苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう):体力中等度又はやや虚弱で、胃腸が弱り、冷え症で薄い水様のたんが多いものの次の諸症:気管支炎、気管支ぜんそく、動悸、息切れ、むくみ

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