企業では、いろいろな商品を販売して利益を得ていますが、その中でも、企業側がこの商品は売れると考えて見込んだ商品に対しては、特にPR活動に力を入れたり宣伝活動費を多くしたりします。
しかし、実際は、そのPR活動に注力した商品はあまり売れず、逆にほとんど期待もせずPR活動も行っていなかった商品がよく売れたりということがよくあります。
企業サイドの思い込み
なぜ、企業が売れると考えPR活動したにもかかわらず、あまり売れない商品がでてきたり、逆にほどんど期待すらしていなかった商品が予想外に売れたりするのでしょうか。
それは、企業側のマーケティングに携わる人たちが、自分たちの今までの経験や知識から、意見や考えを述べて会議をしたとき、その会議の出席者が、その企業のマーケティングに携わる人間としての経験や知識からの視点でものをみていたとき、同じような意見になりやすい点があります。
さらに、その意見について、我々マーケティングのプロ集団がこれだけそろって推しているんだから、当然一般消費者も、いや日本人全体が同じように感じるだろうと思い込んでしまうことから生まれてしまいます。
実際には、一企業のマーケティング関連部門の一部のグループに過ぎないのに、自分たちはプロだし、日本人を代表する感性の持ち主だと思い込んでしまい、調査を怠ったりしてしまうのです。
また、ワンマンな企業だと、決定権が特定の人に偏っていたりします。
決定権をもった人は、自分の意見や考えが常に多数派であり、正常であると思い込んでしまう認知バイアス、つまり認知の偏りに陥りやすいのです。
この認知の偏り、偽の合意効果は『フォールス・コンセンサス』と呼ばれます。
フォールス・コンセンサスの実態
スタンフォード大学の社会心理学者リー・ロス氏が面白い実験をしていて、学生にサンドウィッチマンの格好をしてキャンパスを歩き回るよう依頼しました。
引き受けた学生も、断った学生もいましたが、両方に「同じことを別の学生に頼んだら引く受けてくれると思うか?」と質問をしました。
そうしたところ、引き受けた学生は、「引き受けてくれると思う」と回答したのが6割、「そうは思わない」と回答したのが4割という結果になり、断った学生は、「引き受けてくれると思う」と回答したのが3割、「そうは思わない」と回答したのが7割だったそうです。
つまり、自分が多数派であると思っている人が多いということです。
これは、自分にとって、自分の考えが一番わかりやすく、一番納得がいくので、無意識に他人に対してもそういう指向を投影してしまっているのと同時に、自分は多数派であると思うことで安心するという心理が働いているのだそうです。
これもフォールス・コンセンサス
例えば、仕事を欠勤するときにメールで連絡するのは非常識であり、必ず電話で報告をするのが望ましいと思っているといったことも、フォールス・コンセンサスになります。
人は、正常化バイアスによって、自分とは異なる他人の意見や言動を受け入れにくくなってしまうのです。