大勢で協議した出した結論の危うさ | 薬剤師トピックス

民主主義社会、当然のことのように何の疑いもなくあちこちで行われているのが、大勢で協議をし、多数決で決定するというやり方です。

the greatest happiness of the greatest number (最大多数個人の最大幸福)

イギリスの哲学者・経済学者・法学者であるジェレミ・ベンサムは、功利主義の創始者として知られていますが、彼が残した有名な言葉が、『最大多数個人の最大幸福』というものです。

彼の考え方は、「個人の幸福の総計が社会全体の幸福であり、社会全体の幸福を最大化すべきである」というものです。

大勢で協議をして決定する『多数決』ですが、一見『最大多数個人の最大幸福』と非常によく似ているような感じがします。

しかし、本当に「最大多数の最大幸福」を目指すなら、「多数決」という方法に頼らず、全員が納得できるまで議論を尽くすというのがベストと言えます。

大勢で協議して決定するワナ

大勢で協議をし、多数決で決まったとなれば、多くの人が賛成して決まったようなイメージがあります。

しかし、大きな問題としては、大勢の人が賛成したからといって、それが必ずしも正しいものとは限らない点があります。

多数決をとる場合、大勢が集まって決定するわけですが、その中に、上司がいたり、大きな影響を及ぼすような人がいたり、押しが強い人がいると、その意見のほうに引っ張られてしまう傾向があります。

日本などでもよく問題となるのが、世論の流れというもので、大勢の人が持っている意見と違う意見をいうと、異端児扱いにされたり、仲間外れにされたりしてしまうことがあります。

そうすると、人々は、『寄らば大樹の陰』といわんばかりに、勢力のある者のほうが安心できるし利益もあるとして、その者の意見に乗っかってしまいがちになります。

そして、多くの人は、一人で決めるよりも、みんなで話し合って決めたのだから、より安全で無難な決定なんだという錯覚に陥ってしまうのです。

つまり、個人個人の本心の意見ではないということになってしまいます。

リスキー・シフトが起こる集団極化

アメリカのマサチューセッツ工科大学の大学院生であったジェームズ・ストーナーリスキーシストに関する研究を行っています。

「将来の保証はないけど高額な報酬が期待できる仕事に転職をするべきかどうか」という課題を上げ、リスクを伴う12の質問を行ったあとで、成功率が何パーセントであれば転職にチェレンジするかということを参加者に回答してもらっています。

その結果、一人で回答してもらった場合は、男性が55.8%、女性が54.7%の成功率がなければチャレンジすべきでないと結論を出しました。

ところが、男女6人のグループにして全員で協議して一つの回答を出してもらったところ、男性グループは47.9%、女性グループは46.8%の成功率でチャレンジするという結論を出しました、

つまり、個人のときよりも、集団で協議して出した結論のほうが、よりリスキーなものとなる「リスキー・シフト」が起こるとしたのです。

このように、個人の時と比べて、集団で協議して意思決定した場合、それが偏ることを『集団極化』といいます。

個人で決定するよりも、集団で決定したほうが、よりリスキーな選択をする傾向があるので、集団で意思決定する場合は、こうした傾向があるということも頭に入れておくと良いかもしれません。

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