私たちは、自分が良いと感じたたら、他人も良いと感じるだろうと思い込んでしまう傾向があり、それを勧めたりします。
例えば、ある映画やドラマを見て面白いと感じたりすると、それを友達などに話して、是非見るべきだよというような感じでオススメします。
これは、「私が面白いと思うんだから、みんなも面白いと思うはず」という思い込みがあるのです。
フォールス・コンセンサス効果の落とし穴
このように、人間には自分がこう思うから、当然みんなもこう思ってくれるはずと考えてしまう傾向、多くの人は自分と同じ意見をもち、同じように行動すると考える傾向があり、これを心理学用語で『フォールス・コンセンサス効果』と言います。
そして、フォールす・コンセンサス効果は、相手が自分とより親しい関係であればあるほど、こうした思い込みは強くなっていくものです。
親や兄弟、恋人や親友となると、より自分と同じような考えを持ち、同じように行動すると考えてしまいがちです。
そして、親しい間柄だからこそ、ちょっとした意見の違いが許せなくなってしまったりするといったケースもでてきてしまうのです。
みんな同じとは限らないという実験
ロスという心理学者が面白い実験をやっています。
学生を被験者としてサンドイッチマンになってもらいます。
サンドイッチマンといっても、お笑い芸人コンビのサンドイッチマンの物まねをするというのではなく、いわゆる体にボードをつけて、歩き回るサンドイッチマンです。
その結果、サンドイッチマンになることを承諾してくれた人、承諾しなかった人の両方のグループに、「他の人に同じことを頼んだらやると思いますが?」という質問をしたのです。
サンドイッチマンになることを承諾したグループの人は、自分と同じようにサンドイッチマンをやると答えた人が58%でした。
一方、サンドイッチマンになることを断ったグループの人は、やはり自分と同じように断ると思うと回答した人が70%になっていました。
つまり、いずれの場合においても、自分と同じように考え、自分と同じように行動するだろうと考えているのです。
「みんなも同じように思っている」の説得力は
人を説得する時、「これは私だけの意見じゃなくて、みんなも同じように思っているんだ」、「これはみんなの意見なんだ」というように言う人がいます。
たしかに、みんなもそう思っているんだったら、確かにそうかもねと納得してくれる人もいるから、こうした手法がよく使われるのですが、『フォールス・コンセンサス効果』のことを知っていると、「みんなも同じだよ」というのは、疑ってみてしまう面もあります。
もちろん、ウソは論外ですが、ウソをつくつもりがなくても、たまたま1人か2人、同じ意見を持っていた人がいると、みんなも同じ意見だと思い込んでしまったり、あるいは、ろくに確認もしていないけど、みんな自分と同じ考えをもち同じように行動すると思い込んでいると、つい「みんなも同じなんだ」と言って説得しようとしてしまうことがあります。
「それじゃ、みんなっていったい誰と誰と誰なんだ!」と質問されると答えられなかったりします。
「みんなも同じだから」という言葉は、鵜呑みにしないほうがいいかもしれません。