論客と言われる人たちの中には、いろいろとディベートをやると、時には相手に反論の余地すら与えないぐらい完璧に説得して得意げになっている人がいます。
しかし、ビジネスの社会では、自分が主張したことを通して、それを実現させていく力が必要となります。
ところが、なぜか論客と言われている人達の中には、ディベートは優れていて主張もなかなかのものがあったのに、なかなか物事の実現となると進まず、その結果、ディベート力の割には周りから評価されていないという人もみかけます。
説得よりも納得
論客と言われる人の中には、自分のディベート力を過信して、ビジネスを上手く進めていくという本来の目的を忘れてしまって、ディベートに勝つことが最終目的になってしまっている人がいます。
そして、自分の主張をひけちらかし、周りを説得し、どうだこれでもか、反論があるなら言ってみろというような態度になっていたりします。
例えば、顧客との打ち合わせで、売り込みたい製品をそのディベート力で説明し、ぐいぐい押し切っていたとしても、最終決定権は顧客側が握っているという一番大切なことを忘れてしまっているのです。
いくら相手を説得しても、人間という生き物は、納得しなければ動きません。
どんなに論理で説得したとしても、説得はできても納得させることができていないのです。
「納得=論理+感情」という公式を忘れて、感情という部分への配慮を忘れてしまっているのです。
これがわかっていないと、『議論に勝って、勝負に負けた』という結果になり、なんでだよーーー!ということになってしまうのです。
論理+感情、どちらだけでもダメ

相手を説得するのではなく、相手に納得してもらうことが大切なのです。
そして、相手に納得してもらうには、まずは明確な論理によって、きちんと話の筋道をたて、根拠を明確にし、相手が理解しやすい言葉を選び説明していくことが必要不可欠です。
でもそれだけでは不十分です。
それは人間は感情の動物だからです。
人間の感情は、理解や判断を行う思考プロセスに大きな影響を与えます。
論理がきちんとしていても、相手の感情を無視していると、「話の筋は通っているけど・・・」でそこで止まってしまいます。
かといって、感情に配慮して話していても倫理的でなければ、「気持ちはわかるけど・・・・」というようになってしまいます。
一つは、論理的な思考を磨くことが大切ですが、その一方で、相手との心理的な距離も縮めていかなくてはなりません。
そしてそこで重要になってくるのが、相手に対する共感なのです。
ロジカル・シンキングは必要だが十分ではない
取引先に納得してもらい売上を上げていくためにも、論理的思考を向上させる意味でも、ロジカル・シンキングに関連したセミナーや研修が行われたりしています。
確かに、クリティカル思考やロジカル・シンキングというものは大切です。
でもロジカル・シンキングは、各自一人一人の頭の論理的思考を鍛えることはできますが、それだけでは不十分です。
なぜならば、ほとんどの仕事が一人では進められないからです。
他人に働きかけて成果を出していかなければならない仕事がほとんどで、そこで必要になってくるのがコミュニケーション能力です。
論理だけでな吐く、感情や相手の心理状況を把握する必要があり、そういったことも含めてその能力を鍛えていく必要があるのです。