医薬品の治験と医薬品情報 | 薬剤師トピックス

医薬品の開発にあたっては、まずは医薬品の候補となる化合物が出され、それについて動物や培養細胞、微生物などを用いた前臨床試験つまり非臨床試験が行われます。

その後、治験いわゆる臨床試験に入っていきます。

通常は長い道のりの医薬品開発

医薬品を開発するにあたっては、まずは薬の種となる新規物質の発見や創製が必要になってきます。

この基礎研究の段階でだいたい2~3年かかると言われています。

この基礎研究を経て選ばれたものに対して、動物や培養細胞、微生物などを用いた非臨床試験が行われ、新規物質の有効性・安全性がチェックされていきます。
この段階をパスする確率は、約1/2500とも言われています。

非臨床試験である程度の有効性や安全性が推測されるものに関して、今度は治験、つまり臨床試験が行われていきます。

臨床試験で問題がないとされて、承認され薬価収載までこぎつけられる確率は、もちろん薬の種類にもよりますし、開発の仕方にもよりますが以前は約1/12500と言われていました。

現在ではAIなどをつかって、候補となる化合物をみつけだすことによりこの確率もかなりあがってきているとは思いますが、それにしても低い確率であることには違いありません。

そして、承認を得て、薬価収載されたからといってOKというわけではありません。
実際に発売後、医療現場においての安全性がチェックされ、問題があれば発売中止になってしまうのです。

四段階の治験

治験には、第Ⅰ相から第Ⅳ相まで、四段階あります。

まず最初に行われる『第Ⅰ相試験』ですが、これは初めてヒトに投与される試験になります。
原則少人数の健常者に対して投与され、薬の薬物動態、毒性や副作用がチェックされ、安全性や忍容性がテストされます。

この段階をパスすると、次に『第Ⅱ相試験』に移ります。
今度は実際に少数の患者に対して投薬され、治療効果や適切な用法・用量が検討されます。

次に『第Ⅲ相試験』が実施されます。
多くの患者に投与されることで、第二相試験で示された有効性の証明や確認、安全性の確認が行われます。

この第Ⅲ相試験までパスされると、いよいよ承認され、薬価収載されるということになります。

しかし、承認され薬価収載されてからも、『第Ⅳ相試験』にあたる市販後調査が待ち構えています。

実際に医療現場でより多くの患者さんに投与された場合について、使用調査、頻度の低い副作用の検出、薬物相互作用などの検出が行われていきます。

特例承認

通常、ゼロから薬を開発していこうとすると、基礎研究段階で2~3年、非臨床試験に3~5年、臨床試験に3~7年、承認申請に1~2年かかってしまいます。

臨床試験が終わっていたとしても、承認申請に1~2年かかってしまいます。

しかし、新型コロナウイルスが全世界に蔓延しはじめて、既に日本ではレムデシビルが承認を得て、さらにアビガンをはじめとする多くの薬が承認間近と言われています。
それには、『特例承認』という裏技があるのです。

『特例承認』とは、健康被害の拡大を防ぐために、他国で販売されている日本国内未承認の新薬を、通常よりも簡略化された手続きで承認して使用を認めていこうというものです。
多くの死者や感染者がでているのに、薬の開発に何年もかかっていたのでは全く役に立ちません。
今すぐ薬が欲しいときに、効果とリスクを考え、リスクよりも効果がはるかに上回るというのであれば、どんどん使うべきなのです。

『特例承認』となるケースは、
*健康被害が甚大であったり、蔓延の可能性があったり、緊急の対応が必要な場合となります。
*そして特例承認以外に、適切な方法がない場合・特例承認対象の新薬が、日本と同じ水準の承認制度を持った国で販売・使用されていることが条件となります。

レムデシビルの場合は、2020年5月7日、米国FDAが緊急使用許可を出したことを根拠に重症患者のみを対象として新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症の効能・効果で特例承認が出ています。

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