ゲキを飛ばすのは、活を入れるのとは違う | 薬剤師トピックス

言葉というものは生き物であり、本来の意味とは違った使われかたをして、それが逆に一般化されてしまうケースもあります。

ゲキを飛ばすとはどういうことなのか

『ゲキを飛ばす』という言葉は、どういったふうに使っているでしょうか。

「彼はここのところ遅刻ばかりしているな。ちょっとたるんでるんじゃないかな。」
「そのとおりなんですよ。だから課長、ここはひとつ、彼にゲキを飛ばしてください。」
「よし、承知した!」

だいたい、このような使われかたをしている人が多いのではないでしょうか。
つまり、「元気がない者に刺激を与えて元気づける」という意味や「激励をする」といった意味です。

しかし、この使い方は本来の『ゲキを飛ばす』とは違った使い方になっています。

『ゲキを飛ばす』の『ゲキ』とは、漢字にすると『檄』という字になります。

『檄』とは、古代中国で人民にお触れを告げるために役所で出した木札の文書、また仲間を集めるための触れの文のことです。

つまり、『檄』を飛ばすということは、お触れを方々に急いで出して、決起を促すことになります。

平たく言うと、「自分の考えや主張を広く訴え、同意を求めたり決起を促すこと」になります。

本来の意味での正しい『ゲキを飛ばす』の使い方は、
「彼は、卒業生に檄を飛ばして、母校のOB応援団を立ち上げた」
「社長は社員に檄を飛ばすだけでなく、関連会社の十要員にも経営方針をしっかりと伝えた」
というような使い方になります。

カツを入れる「カツ」とは

それでは、やる気がない社員を怒鳴りつけてカツを入れたという意味の場合はどうするのかというと、そのまま素直に「カツを入れる」でいいのです。
ここで、また間違いが起こりやすいのです。

「カツを入れる」となると、『喝を入れる』と『喝』いう漢字を使う人が多くいます。

『喝』とは、よくお坊さんの修行とかで、肩をたたかれているシーンを連想する人もいると思いますが、声がかすれるほどの大声を出す。禅宗でのはげましの声ということで、意味的に似ているので間違えてしまう人が多いのです。

しかし、元気がない人にカツを入れるという場合は、『喝を入れる』ではなく『カツを入れる』または『活を入れる』になります。

気絶した人の行きを拭きかえらせ、刺激を与えて気力を起こさせるという意味から、「活き活き」とさせる、「活力を与える」ということで、正しくは『活を入れる』となるのです。

多くの人が本来の意味と間違って覚えている『失笑』

もう一つ、多くの日本人が本来の意味と取り違えて覚えている言葉の例を挙げてみます。
『失笑』がそれにあたります。

『失笑』というと、
「上司がくだらないオヤジギャグを言ったので、周りはみんな『失笑』していた」
というように、あきれてポカーンとした表情をするとか、しかたなく顔の表情をこわばらせ作り笑いをするというニュアンスで覚えている人が多いかと思います。

読んで字のごとく、『笑いを失う』ということだから、笑えないくらいのくだらないジョークで、呆れて笑えねぇーーーー!と言う意味だと勘違いされてしまっているようです。

しかし、『失笑』の意味を考えるときに、『失言』という言葉を思い出すとわかりやすいかもしれません。

『失言』とは、言葉を言わないのではなく、言ってはいけないことを言ってしまうことです。

であるならば、『失笑』も、笑ってはいけないときに笑ってしまうという意味になります。

つまり、『失笑』の本来の意味は、笑ってはいけないシーンで、思わずプッっと吹き出したり笑ってしまうことを言うのです。
確かに、辞書を引くと、この意味しか載っていません。

言葉とは不思議なもので、『言葉は生き物』と言われるように、多くの人が間違った使いかたをしていると、本来の意味とは違って間違った使われ方のほうが浸透していってしまうものなのです。

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