例えば、「今度のスピーチコンテスト、優勝したら温泉旅行が当たるみたいだよ」 「いやいや、私はムリムリムリ 雑務でいろいろと忙しいし、それにそもそも話すの苦手だし、そんな自信なんかないもん」といった具合に、私はダメという人がいます。
私はダメは謙遜?
日本人は奥ゆかしいとよく言われ、本当はすごくできるのに、能ある鷹は爪を隠すではないですが、でしゃばらずにいたりします。
欧米だと、自分をアピールして売り込んでなんぼというところがあり、多くの人が自分の実力以上にアピールしすぎたりします。
日本人からすると、そんなにアピールしちゃったら、周りの期待値が上がりすぎちゃって、後からツラくならない?と心配になってしまうほどです。
「私はダメよ」というのは、日本人の美徳である謙遜だと思うのですが、心理学者からすると、謙遜? とんもない、単なる予防線を張っているにすぎないと言われたりします。
セルフ・ハンディキャップ
心理学の用語に『セルフ・ハンディキャップ』という言葉があります。
なんか「ハンディキャップ」というと、格下の人がアドバンテージポイントをもらうようなことで、それをセルフ、自分自身に与えちゃっているというようなイメージであまり聞こえは良くないのですが、どういうことなのでしょうか。
『セルフ・ハンディキャップ』とは、何かに取りかかる前に、その成功を妨げるような障害を公言したり、アピールしたりすることを言います。
そして、もし失敗したとしても、予防線を張っているのでショックを和らげる効果があるため、大きな傷を負わないで済むというわけです。
久しぶりにテニスをしようとか、将棋をしようとか、麻雀をしようとか、まあ何でもいいんですが、このようなことを言われたときに、「いやー、ここのところ仕事が忙しくてね、全然やってなくて、久しぶりなんだよな」と言い訳するのが、まさに『セルフ・ハンディキャップ』なのです。
結果が悪かったとしても、いやいや仕事が忙しくて久しぶりだったんだから仕方ないよねって、ショックをやわらげることができます。
結果が良ければ、仕事が忙しくて全然練習もしてなかったのにと、自分の価値を高めることができます。
いずれにしろ、どちらにころんでも自分にとって好都合なわけです。
セルフ・ハンディキャップのデメリット
なんだ、結果が悪くても良くても、ショックをやわらげることができるし、自分の価値を高めることができるんだった、言うことないじゃないか。
どんどん積極的に『セルフ・ハンディキャップ』を多用してやればいいんだよと思うかもしれませんが、実はそこが落とし穴なのです。
『セルフ・ハンディキャップ』を多用する人は、達成欲求が弱いと言われています。
達成欲求が強い人というのは、成功か失敗か五分五分のことにどんどんチャレンジしていきます。
努力すれば手が届く五分五分の勝負に、チャレンジしていくのです。
失敗して傷つくこともありますが、それを繰り返して努力していくうちに成功をして、成長していきます。
『セルフ・ハンディキャップ』を多用する人は、やる前から言い訳を作りたいわけですから、言い訳しやすいように、成功する確率が極端に高いか、極端に低いことを好み、五分五分のチャレンジを避ける傾向があります。
成功する確率が極端に高ければ、失敗して傷つくことは極めて少ないわけですし、成功する確率が極端に低ければ、あんなもの成功するほうがめずらしいし、失敗して当たり前だよねとなれば、失敗してもショックが小さくて済むわけです。