
日本人の死亡の原因の3位になっているのが肺炎で、年間10万人以上が肺炎でなくなっています。
死亡者のほとんどが高齢者で、肺炎で死亡した人の9割が誤嚥性肺炎が原因ともいわれています。
話題の本に、西山耳鼻咽喉科医院理事長の西山耕一郎先生がかかれた、『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』という本があります。
人間は、歳とともに飲み込む力が衰えてしまいますが、この衰えが進むと、誤嚥性肺炎のもとになり、命を落としてしまうこともあるということで、それを防ぐためにはのどを鍛えなさいと提唱しています。
実際に嚥下のメカニズムについて、みていきましょう。
食べ物を食べると、咀嚼します。そして、口腔から喉の奥のほうへ食べ物が移動すると、口腔は閉じられます。
次に、鼻と喉もつながっているので、鼻に食べ物が逆流しないように、鼻咽腔が閉じます。
そして、そのつぎに、ごっくんと食べ物を飲み込む動作が起こります。
このとき、咽頭挙上筋群という筋肉が働き、これによりのど仏が上にあがります。
のど仏を触りながら、ごくんと唾を飲みこむと、のど仏があがるのが確認できると思います。
これに呼応する形で、声帯や気管にフタがされ気管がフタされ、咽頭が収縮して自然と食べ物は食道の方へ入っていきます。
嚥下、つまり飲み込みがうまくいかない場合は、喉ほとけがあがるタイミング、つまり気管にフタがされるタイミングと食べ物が入っていくタイミングがずれてしまっています。
そのため、食べ物が気管の方へ入り込んでしまいます。
この飲み込みの間の時間は、0.8秒です。
たった0.8秒の間に、口腔から入った食べ物が食道へ送り込まれていきます。
嚥下がうまくいかない場合はどうしたら良いかというと、のどを鍛えるということが最近よく言われています。
嚥下反射の神経は鍛えられませんが、のどの筋肉であれば、歳をとってからでも鍛えることができます。
わかりやすく、動画にしてみましたので、ご参考にしてください。
誤嚥性とは、普段はきちんと食べ物が食道に入っていくところを、気管のほうに入ってしまうもので、それで、むせたり、咳払いがおき、食べ物や唾液に含まれている細菌が無菌状態の肺に入り込み、炎症を起こして肺炎になってしまいます。
嚥下力、飲み込む力が落ちているかどうかのチェック法を示します。
次の11の項目のうち、4つ以上当てはまる人は、嚥下する力が弱くなっていて要注意です。
誤嚥を防ぐには、のどの嚥下神経は鍛えられないのですが、のどの筋肉は鍛えられるので、のどを鍛えることが大切です。
それと同時に、有酸素運動も心肺能力を高めるので、体にとって有用です。
のど仏を意識的に動かすことで、筋力をアップし、のどを鍛えようというものです。
やり方は、ア・エ・イは高い音を、ウ・オは低い音で発音し、高音と低音を繰り返すことで、のど仏を上下させます。
そうすることにより、嚥下機能が高まっていきます。
おでこに手の手根部を当てて、手と頭で押し合います。
そうするとのど仏に力が入るので、その位置で5秒間キープします。
これを5~10回繰り返します。
下を向いてあごを力いっぱい引きます。
あごを引いたら、下あごに親指を当てて押し返します。
1回5秒間、これを5~10回繰り返します。
空のペットボトルを用意して、それを吸ってペシャンコにします。
その後、息を吐いてパンパンに膨らませます。
これを5回繰り返して肺活量をアップさせます。
枕なしで、リラックスした状態で仰向けになります。
そして、頭だけを持ち上げつつ、つま先を見るような姿勢を30秒~1分間キープします。
1セットあたり5~10回行います。
(首に疾患がある人、高血圧症の人は禁止です。)
のどに負担がかからないようにと、食べ物をよく噛む人がいます。
よく噛むことは良いことなのですが、噛み過ぎると、かえって誤嚥しやすくなります。
なぜならば、食べたものを飲み込むことと、噛むことは同時にできないからです。
噛み過ぎるということは、なかなかゴックンと食べた物を飲み込まないということですので、長時間にわたってのどの奥に食べ物が残り続け、それが誤嚥の原因になるリスクを高めてしまいます。
また、噛むことによって唾液がよく分泌されますが、それによって食べ物がバラバラにくずれた状態になりやすく、飲みにくくなってしまいます。
何事も、過ぎたるは猶及ばざるが如しです。