
医療保障は、国民が病気になってしまった際に、必要とする医療を効果的に受けることができるようにという保障をする制度になっています。
日本の場合は、国民皆保険となっていて、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入しています。
このことで、世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準が達成できているとも言われています。
保険を受ける側(被保険者)、つまり一般国民は、保険料を納めることで、万一病気になってしまった場合、保険医療機関を通して、医療の給付を受けることができ、その給付の残り分を医療費として原則3割負担の自己負担で支払っていることになります。
日本においては、公的医療保険制度となっていて、保険組合を作り、その加入者である被保険者から保険料を徴収し、万一のときに医療費を助け合うしくみになっています。
公的医療保険といおうと、全国民対象となる医療保険、75歳以上あるいは65歳以上の障害認定者が対象となる後期高齢者医療、さらには、低所得者や戦傷病者など経済的・社会的配慮が必要な人や感染症患者など社会防衛的手段が必要な人が対象となる公費負担医療などがあります。
日本と同じように、公的医療保険が中心となっている国には、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギーなどがあります。
一方、アメリカでは、医療保険の大部分は民間の医療保険によって行われていて、民間の医療保険の契約ごとに保険料やカバーされる範囲が異なってきます。
その他、イギリス、スウェーデン、カナダ、イタリア、スペインなどでは、医療が行政サービスとして行われ、税収がその主な財源になっています。外来の処方薬を除いては、患者の窓口負担はありません。
公的医療保険は、大きくわけると職域保険と地域保険、それと独立した後期高齢者医療制度に分けることができます。
職域保険とは、一般の会社員やその扶養家族を対象とした健康保険、さらには船員や公務員といった特定の職種の人とその扶養家族を対象とした共済組合や船員保険などの各種共済組合があります。
健康保険は、大企業のサラリーマンを対象とした健保組合と、中小企業のサラリーマンを対処とした協会けんぽ(全国健康保険協会)があります。
地域保健としては、国民健康保険があり、特定業種の自営業や一般住民などが被保険者となっていて、個々の市区町村が運営しています。
医療機関を受診すると、実施にかかった医療費のうち、原則3割負担となっています。
残りの7割はどうなているのかというと、保険者から医療機関に支払われていますが、この保険者から医療機関に支払われる負担分が「給付」と言われているものです。
通常は、医療給付は、医療サービスという現物で給付されるという形になっています。
一方、出産費用や死亡の際の埋葬料などは、サービスではなく現金で支給される現金給付になっています。
医療機関受診の場合でも、例えば急病であったり、旅行中のケガなどで保険証をやむを得ない事情で定時できないといった場合や、医師が必要であると判断し認めた装具代などは、療養費ということになります。
医療給付(現物給付)
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療養の給付
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病気などの治療にかかった金額に対して、一定の割合を保険者が負担するもの
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高額療養費
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長期入院などによって治療費が規定の自己負担限度額を上回った場合、上回った分が給付されるもの
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療養費
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急病や旅行中のケガなどのやむをえない事情により保険医療機関で保険診療を受けることができなかった場合に支給されるもの
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所得保障(現金給付)
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傷病手当金
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病気のために働けなくなってしまった被保険者の所得を補償するために、給与の2/3相当が現金給付されるもの
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出産手当金
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女性が産休中に、約100日にわたり、給与の2/3相当の所得が保証され、現金給付されるもの
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出産育児一時金
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子供を一人出産するごとに、原則42万円が現金給付されるもの。(これは正常分娩が保険診療外のため、これを補完するもの)
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埋葬料
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被保険者が死亡した場合、家族または埋葬を行った者に対して約5万円が現金給付されるもの
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移送費
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病気のため移動が困難な場合、医師の指示でやむを得ず移送された場合に現金給付されるもの
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