ヒルドイドの有効成分、ヘパリン類似物質とは

ヒルドイドの有効成分、ヘパリン類似物質とは

ヒルドイドの有効成分であるヘパリン類似物質は、角質の水分保持作用に優れていて、皮脂欠乏症(乾皮症)の治療に用いられます。美容目的にはヘパリン類似物質を配合した薬用化粧品があります。

ヒルドイドの有効成分、ヘパリン類似物質とは

 

D-グルクロン酸とN-アセチル-D-ガラクトサミンからなる二糖を反復単位とする多糖体をSO3で多硫酸化したもので、その構造中に硫酸基、カルボキシル基、水酸基等、多くの親水基を持ち、高い保湿能を有します。

ヒルドイドが処方される皮脂欠乏症(乾皮症)とは

 

皮脂欠乏症(乾皮症)は、加齢や季節などの環境、アトピー性皮膚炎などが原因で、皮膚の表面の皮脂が減少してしまうことにより、肌表面、つまり角質の水分量が減少して肌がカサカサしてきてしまうものです。

 

肌に白い粉がふいたような鱗屑(りんせつ)がみられ、肌表面をさわると、まるで魚の鱗をさわっているようにザラザラしています。そして、痒みに敏感になってきます。

 

この症状が進むと、皮膚にひび割れが生じたり、痒みが強くなったりして、皮脂欠乏性湿疹、いわゆる湿疹を伴うようになり、ひどい場合は、夜も眠れないほどの痒みになったりもします。

 

ヒルドイドは、こうした皮膚の乾燥に対して、すぐれた保湿力をもつことから治療薬として使われています。

 

私たち人間は、歳をとるとともに、肌表面の皮脂分泌量が減り、角質細胞間脂質や天然保湿因子なども減少してきてしまいます。

 

皮膚のうるおいは皮脂、天然保湿因子、角質細胞間脂質の3つの物質によって一定に保たれています。これらが減少したりバランスが崩れたりすると、皮膚は乾燥して表面の角質細胞がはがれて、隙間ができ、水分が逃げやすくなっていってしまいます。

 

昔は、本を読むとき難なくページをめくることができたのに、歳をとってからなかなかうまくページがめくれないなんていうことがあると思いますが、こういった皮脂欠乏症の症状がひどくなっていきます。

 

秋から冬にかけて空気が乾燥する時期も、外気の乾燥に加え、気温低下による発汗量低下のため、皮脂が少なくなってしまいますので、秋から冬にかけては、皮脂欠乏症の症状が起きやすい季節といえます。

 

またアトピー性皮膚炎をもった人や、糖尿病などの人もこうした乾燥を伴う皮脂欠乏症を起こしやすいと言われています。

ヘパリン類似物質の実力とは


ヘパリン類似物質は、医療用医薬品のヒルドイドには0.3%の濃度で配合されていますが、この医薬品としての濃度では、動物実験によってその優れた保湿作用が認められています。

 

乾燥皮膚モデルのモルモットを使った実験で、角質水分保持増強作用に優れていることが確認され、乾燥性の皮膚疾患の治療薬に用いられるようになりました。
特に、皮脂欠乏症、進行性指掌角皮症、凍傷、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療によく用いられます。

 

ヘパリン類似物質なので、血液凝固抑制(血液が固まるのを防ぐ)作用があり、また血流量を増加し、角質水分保持増強作用があります。

 

肌のラメラ構造

 


加齢やアトピー性疾患などにより、天然保湿因子や皮脂、角質細胞間脂質が減少し、そこに外部から刺激などが加わると角質にうまく水分を保持できなくなってしまいます。
特に、角質細胞と角質細胞の間にある角質細胞間脂質は、油分の層と水分の層が交互に存在しているラメラ構造という構造になっています。

 

 

健常な状態だと、きちんと角質細胞と角質細胞の間に規則正しく油分の層と水分の層が並び、角質の水分がうまく保持できるようになっていますが、皮脂欠乏症によって、皮脂や天然保湿因子が減少することにより、このラメラ構造が維持できなくなり、不規則になってしまいます。すると、角質の中に水分が保持できなくなり、水分が蒸発し、肌が乾燥しやすくなり、乾皮症の状態になってしまいます。

 

 

ヘパリン類似物質は、正常なラメラ構造を維持して角質の水分保持を助ける働きがあります。

 

また、ヘパリン類似物質には、皮膚の血行を促す働きもあることから、皮膚の新陳代謝を助けて、肌の症状の改善を促します。

 

さらに傷跡改善作用も持っていることから、ケロイドや肥厚性瘢痕といった盛り上がった傷跡を治す効果もあります。

 

 

ヒルドイドで注意しないといけない人

 

ヒルドイドは、ヘパリン類似物質なので、血が固まりにくくなってしまいます。
従って、血友病や血小板減少症、紫斑病といった出血性血液疾患をもっている患者には禁忌になっています。

 

もちろん、医薬品であり過敏症などの副作用も報告されていますので、医師の処方によらず、専門家の判断なしに美容目的で乱用するものではありません。

ヘパリン類似物質が配合された医療用医薬品、OTC医薬品、医薬部外品(薬用化粧品)

 

ヘパリン類似物質は、医療用医薬品であるヒルドイドの有効成分ですが、OTC医薬品にも、医薬部外品(薬用化粧品)にも配合されています。
OTC医薬品では、アットノンなどにヘパリン類似物質が配合されていて、その濃度もヒルドイドと同じ0.3%になっています。

ヒルドイドとアットノン

 

ヒルドイドもアットノンも、有効成分としてヘパリン類似物質が0.3%配合されています。
しかし、医療用医薬品とOTC医薬品で、効能効果は違っています。

 

医療用のヒルロイドローションでは、効能は皮脂欠乏症という記載になっている一方、OTC医薬品(第2類医薬品)のアットノンでは乾皮症となっています。
皮脂が欠乏する皮脂欠乏症により、乾皮症の症状が出るので、この効能はOTCの効能としてわかりやすく乾皮症となっているとも言えます。

 

それでは、医療用のヒルロイドローションとOTC医薬品のアットノンでは、効能が全く同じかというとそうではありません。
添加物や製造方法も違いますので、ヘパリン類似物質が同じ0.3%だったとしても、その吸収や分布など全く同じではありません。
もちろん、副作用・安全性に関しても同じことが言えます。

 

乾皮症の場合、まずセルフメディケーションの一環として、アットノンなどのOTC医薬品を利用し、それでも症状の改善が見られなければ、医療機関を受診し、ヒルロイドなどの医療用医薬品を処方してもらうというような使い分けになるでしょう。

 

OTC医薬品であるアットノンの添付文書を確認すると、次のようになっています。

 

5~6日間使用しても症状がよくならない場合は使用を中止、医師、薬剤師または登録販売者に相談

 

この注意がポイントで、セルフメディケーションの一環としてヘパリン類似物質配合のOTC医薬品を使うという選択肢もあるが、5~6日使用してみて改善しない場合は、専門家に相談し、場合によっては医療機関を受診しなさいということになります。

 

また、症状がよくならない場合であり、化粧品のように肌がなんともないのに、ただ保湿クリームの代わりに、OTC医薬品を使うのはいけません。

 

その他に、アットノンには次のように、専門家に相談すべき場合について記載があります。

 

湿疹やただれのひどい人は、医師、薬剤師または登録販売者に相談
使用後、発疹・発赤、かゆみ、はれがあらわれた場合は、副作用の可能性があるので直ちに使用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談

ヘパリン類似物質が配合された化粧品

 

ヘパリン類似物質が配合された化粧品(薬用化粧品)には、へパソフト薬用 顔ローション (販売名:薬用保湿ローションh)があり、皮フの乾燥を防ぐ、肌あれ、あれ性、皮フにうるおいを与える目的で使用されます。

 

ヘパリン類似物質の、皮膚のラメラ構造を維持して角質水分保持作用を発揮する効果を期待したものです。
医薬品の場合は、治療目的ですのでヘパリン類似物質が0.3%配合されていましたが、薬用化粧品の場合は濃度は不明ですが、医薬品よりも低い濃度で配合されています。

 

ヘパリン類似物質は、角質水分保持作用に優れた成分ですが、副作用もあり、皮脂欠乏症(乾皮症)でもないのに、美容目的、通常の保湿クリームの代わりにヘパリン類似物質を配合した医薬品を使うべきではありません。

 

美容目的の場合で、角質水分保持作用を期待してヘパリン類似物質の入った製品を使いたいということであれば、医薬品ではなく、薬用化粧品を使用していくということになるでしょう。

 

商品 ヒルロイドローション 0.3% アットノン HPローション へパソフト薬用 顔ローション (販売名:薬用保湿ローションh)
カテゴリー 処方箋薬 第2類医薬品 第2類医薬品 医薬部外品
有効成分 ヘパリン類似物質 0.3% ヘパリン類似物質 0.3% ヘパリン類似物質 0.3% ヘパリン類似物質、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン(ヘパリン類似物質の濃度は不明)
添加物 グリセリン、白色ワセリン、スクワラン、セタノール、還元ラノリン、セトマクロゴール1000、モノステアリン酸グリセリン、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、カルボキシビニルポリマー、ジイソプロパノールアミン カルボキシビニルポリマー、トリイソプロパノールアミン、プロピレングリコール、イソプロパノール、香料 カルボキシビニルポリマー、ヒプロメロース、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン、パラベン 白色ワセリン、濃グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、スクワラン、セリン、水添大豆リン脂質、フィトステロール、キサンタンガム、セタノール、無水クエン酸、クエン酸Na、パラベン
効能・効果 血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期) 手指の荒れ、ひじ・ひざ・かかと・くるぶしの角化症、手足のひび・あかぎれ、乾皮症、小児の乾燥性皮ふ、しもやけ(ただれを除く)、きず・やけどのあとの皮ふのしこり・つっぱり(顔面を除く)、打身・ねんざ後のはれ・筋肉痛・関節痛 手指のあれ、ひじ・ひざ・かかと・くるぶしの角化症、手足のひび・あかぎれ、乾皮症、小児の乾燥性皮ふ、しもやけ(ただれを除く)、きず・火傷あとの皮ふのしこり・つっぱり(顔面を除く)、打身・捻挫後のはれ・筋肉痛・関節痛 皮フの乾燥を防ぐ、肌あれ、あれ性、皮フにうるおいを与える、肌を整える、皮フをすこやかに保つ、皮フを保護する、あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ
用法・用量 通常、1日1?数回適量を患部に塗布する。 1日1~数回、適量を患部にすりこむか、又はガーゼ等にのばして貼ってください。 1日1~数回、適量を患部にすりこむか、又はガーゼ等にのばして貼ってください。 適量を手に取り、肌になじませてください。洗顔後、そのままお使いいただけます。お好みでクリーム等を重ねてお使いいただけます。
禁忌・主要な注意 禁忌(次の患者には投与しないこと)(次の患者には使用しないこと)1. 出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病等)のある患者〔血液凝固抑制作用を有し、出血を助長するおそれがある〕2. 僅少な出血でも重大な結果を来すことが予想される患者〔血液凝固抑制作用を有し、出血を助長するおそれがある〕 ■してはいけないこと(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなります)1.出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病など)の人は使用しないでください。(血液凝固抑制作用を有し出血を助長するおそれがあります。)2.次の部位には使用しないでください。目や目の周囲、粘膜(口腔、鼻腔、膣など) ■してはいけないこと(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなります)1.出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病など)の人は使用しないでください。(血液凝固抑制作用を有し出血を助長するおそれがあります。)2.次の部位には使用しないでください。目や目の周囲、粘膜(口腔、鼻腔、膣など)