
コグニサイズは、認知症予防・改善のための対策として知られていて、運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた認知症予防を目的とした取り組みの総称で、国立長寿医療研究センターによって開発されたものです。察しの良い人は、Cognicise(コグニサイズ)は、英語のCognition (認知) とExercise (運動) を組み合わせた造語だとピンときてるかもしれません。
国立長寿医療研究センターの研究では、認知症ではないが正常とも言えない状態であるMCIの人がコグニサイズを行うことで、認知機能の低下を抑えることができるということが明らかにされています。
もう少しわかりやすく言うと、数のカウントや計算、しりとりなど頭を使う作業であるCognition (認知)作業をしながら、ステップを踏んだり歩いたりという有酸素運動つまりExercise (運動)を同時に行う、つまり二重課題(デュアルタスク)で運動するというもので、脳の血流を増やし、記憶力の向上、脳内の記憶と学習能力に関係する海馬(かいば)の萎縮を食い止め、認知症の予防・改善を図っていくというものです。
コグニサイズを行うことで運動によって活性化される運動連合野と、計算などで活性化される前頭連合野の両方を活性化させることができます。
《関連文献》
1. 運動・身体活動による認知症予防 (2016) : BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 68(7), 799-808
2. 特集 認知症のケア 認知症の予防 (2014) : 公衆衛生 78(10), 698-702
コグニサイズは、基本的には運動作業と認知作業を同時に行うものですが、運動作業はステップしたり、歩いたりといろいろな有酸素の方法がりますし、認知作業のほうもステップの方法を変えたり、計算をしたりといろいろな方法があり、これらの有酸素運動と計算などの認知作業を組み合わせて同時に行うことになります。
コグニサイズとして多くの人に支持され、実際に行われているコグニステップと、ラダー(はしご状のヒモ)をつかったコグニラダーの方法について、簡単に動画で説明します。
あくまでもここにあげたものは一例であって、いろいろな工夫ができるかと思います。
<コグニステップ>
<コグニラダー>
コグニサイズは、ある程度体と脳に負荷がかかることが大切です。
同時に行うExercise (運動)とCognition (認知)の難易度も重要な要素で、これは個人個人によって違ってきます。
目安としては次のような感じです。
Exercise (運動) : 有酸素運動、つまり軽く息がはずむ程度の全身を使った中強度程度の負荷で、脈拍数が上昇する程度の運動。
Cognition (認知) : 簡単にできるものではなく、運動の手順や課題自体をたまに間違えてしまう程度のある程度難度がある負荷がベスト。
コグニサイズを開発した国立長寿医療研究センターの堤本先生によると、コグニサイズは週に2~3回、1回20~30分程度行い、半年は続けることが大事だといいます。
ゲーム性を持たせながら楽しみながら行うというのも、脳の活性化につながり、継続して行うためにも重要なことです。
何でも、継続は力なりです。
2000年代中ごろ、今は桂三度という落語家に転身している世界のナベアツというピン芸人のネタが大ブレイクしましたが、そのネタというのは、「3の倍数と、3が付く数字のときだけアホになる」というものです。
1、2、3、・・・と数を数えていきながら、まさに3の倍数と、3が付く数字のときだけアホづらをするというものです。
1、2、3(アホづら)、4、5、6(アホづら)、7、8、9(アホづら)、10、11、12(アホづら)、13(アホづら)、14、15(アホづら)、16、17、18(アホづら)、19、20、21(アホづら)、22、23(アホづら)、24(アホづら)、25、26、27(アホづら)、28、29、30(アホづら)、31(アホづら)、32(アホづら)、33(アホづら)、34(アホづら)、35(アホづら)、36(アホづら)、37(アホづら)、38(アホづら)、39(アホづら)、40、41、42(アホづら)、43(アホづら)、44、45(アホづら)、46、・・・
同時は、小学生などが算数の授業などでふざけて真似をして、先生が困ったというような話もありました。
授業中ふざけるのはいかがなものとして、実はこの3の倍数と、3が付く数字のときだけアホになるというのは、脳の認知機能を高め、脳を活性するのに役立つと考えられるのです。
はじめて3の倍数と、3が付く数字のときだけアホになる(別にアホづらしなくても手を叩くというようなことでも良いのですが)結構、油断していると間違えたりするものです。
3の倍数のときだけとか、3の付く数字の時だけというのであれば、まだ単純なのですが、3の倍数と3の付く数字という2つの制約となると、うっかりしていると飛ばしてしまったりするものです。
逆に言えば、それを間違えないようにしようとするということは、それだけ脳に負荷がかかっているということになり、このとき脳は活性化され、脳血流量が増加しています。
実は、この世界のナベアツの3の倍数と、3が付く数字のときだけアホづらをするというネタは、認知症予防に効果があるとして最近注目を浴びているコグニサイズというものに共通した部分があります。