
東洋医学とヨガの視点から、「丹田の鍛え方」
そこで、東洋医学とヨガの視点から、「丹田の鍛え方」を解説していきます。

「最近、なんだかやる気が出ない」 、「テストや試合の前になると、緊張してガチガチになっちゃう」、「姿勢が悪いって言われるけど、どう直せばいいかわからない」。
そんな悩みを持っている人に、ぜひ知ってほしい魔法のような「体のメインバッテリー」があります。それが「丹田」なのです。
東洋医学でいえば、気が一番集まるスポットとも言えます。
日本語には、「肚が据わった人」という言い方があります。
これは、心身ともに安定している人を称える言葉として用いられます。
この「肚」という言葉のルーツは、実はヨガや東洋医学にあり、それが実は「丹田」なのです。
物理的にも生理的にも心理的にも、身体の中心点とされるのが丹田です。
そもそも「丹田」ってどこにあるの?という話ですが、丹田は東洋医学においては、気、つまりエネルギーが一番集まるスポットであり、「丹田」という臓器が体の中にあるわけではありません。
実は丹田には3つの場所があるのですが、ヨガや呼吸法などで一般的に「丹田を意識して!」と言われるのは、おへその下にある「下丹田(げたんでん)」になります。
なぜ「丹田」を意識するとスゴいのか? そのメリットを科学的に見ていきましょう。
多くのスポーツがありますが、どんなスポーツでも、パワーの源は「下半身」と「体幹」の連動になります。
これはスポーツに限らず、日常の歩行についても言えます。
野球、サッカー、ダンス、格闘技、ランニング、ウォーキング、ラジオ体操……どんな運動でも、パワーの源は「下半身」と「体幹」が中心で、丹田を軸に動けるようになると、力がスムーズに手足に伝わって、パフォーマンスが劇的に上がってきます。
生理学的にも、丹田がある場所には、私たちの体を支える専門用語ではインナーユニットと呼ばれている4つの重要な筋肉が集まっています。
その4つの重要な筋肉とは、お腹をぐるっと一周囲み「天然のコルセット」とも呼ばれている腹横筋、背骨を一つひとつ支える細かい筋肉である多裂筋、呼吸を司るドーム状の筋肉として知られる横隔膜、 胴体の底を支えるハンモックのような筋肉である骨盤底筋群です。
「丹田に力を入れる」ということは、これら4つの筋肉を同時に、かつバランスよく活動させることになり、ここが安定すると、体の中心につよさが生まれ、身体の構造的な安定性の向上につながります。
したがって、重い荷物を持っても、激しいタックルを受けても、軸がぶれなくなります。
また丹田を意識することで重心を低く保つことができ、地面からの反発力を効率よく全身に伝えることができるようになり、その結果無駄な筋力を使わずに立てるため、疲れにくくなってきます。
緊張すると、呼吸が浅くなって肩が上がってきますが、いわゆる「浮き足立っている」状態といえます。
逆に、意識を丹田に落とすと、自律神経が整って「どっしりと構えた状態」になれます。
本番に強い人は、無意識に丹田に力が溜まっていて、いわゆる胆力がある人になります。
最新の脳科学では、自分の体の中の状態を感じ取る力を「内受容感覚(ないじゅようかんかく)」と呼んでいて、「丹田を意識する」という練習を繰り返すと、脳にある「島皮質(とうひしつ)」という部分が活性化され、この感覚がするどくなることがわかっています。
具体的には、感情のコントロールがきいて自分の感情に振り回されにくくなる、直感力が鋭くなっていわゆる「腹に落ちる」「腑に落ちる」という感覚がでてくる、自己肯定感が高まり 自分の体の中心がどっしりしている感覚がでてきて心理的な「自分を信じる力」に直結すると言った効果が表れてきます。
仕事や勉強をするのには、集中力の持続が必要になってきますが、脳に血がのぼりすぎるとイライラしたり疲れたりしてしまいます。
しかし、エネルギーが一番集まるスポットである「丹田」を意識して、エネルギーを丹田に下げることで、頭はクールで体はエネルギッシュな、いわゆる「上虚下実(じょうきょかじつ)」という理想の状態を作ることができるので、勉強や仕事の効率もアップにもつながります。
丹田は、体幹つまりインナーマッスルの要の位置になるので、ここに意識が通ると、骨盤が正しい位置にセットされて、猫背や反り腰が自然と改善されていきます。
お気に入りの服もビシッと決まるようになります。
丹田を意識して呼吸を整えることは、自律神経つまり交感神経と副交感神経のバランスを自分でコントロールすることにつながり、寝る前に丹田を意識した深い呼吸を行うことで、迷走神経を介して「副交感神経」へスイッチがオンに切り替わります。
すると、成長ホルモンがしっかり分泌され、深いノンレム睡眠に入りやすくなるため、脳の疲れが取れて、「朝スッキリ」となり、翌朝の集中力がキープできるようになります。
胃腸などの消化器官は「副交感神経」が優位な夜に一番活発に働きます。
丹田を意識してリラックス状態を作ってあげることで、消化液の分泌がスムーズになり、栄養の吸収が良くなってきます。
そして腸内環境が整うことにより、腸脳相関で脳もリフレッシュできます。また、血行が良くなって老廃物が流れるので、肌のコンディションも整いやすくなるのです。
自律神経は、体の中に侵入したウイルスと戦う「免疫システム」とも深く関わっています。
ストレスがかかっているときは、呼吸が浅くなって肩で息をしていたりします。
すると自律神経が乱れ、免疫細胞の働きが鈍ってしまいます。
丹田呼吸を行って心身をニュートラルな状態に保つことは、いわば「天然のワクチン」を打っているのと同じようなもので、病気に強い体作りにつながります。
根拠論文
インナーユニット(腹部深層筋群)に関する根拠
「丹田=インナーユニット」という解釈は、現代のリハビリテーション医学やスポーツ科学において広く支持されています。
Hodges, P. W., & Richardson, C. A. (1997).
Feedforward contraction of transversus abdominis in relation to arm movements.
根拠の内容: 「腕を動かす際、実際の手足の動きよりも先に、腹横筋(インナーユニット)が 0.03〜0.05 秒早く収縮する」ことを証明した有名な論文です。これにより、「丹田(体幹)がすべての動きの始動点である」という科学的根拠としています。
Richardson, C., Jull, G., Hodges, P., & Hides, J. (1999).
Therapeutic Exercise for Spinal Segmental Stabilization in Low Back Pain.
根拠の内容: 腹横筋、多裂筋、横隔膜、骨盤底筋群を一つのユニットとして捉える概念(インナーユニット)を確立した、理学療法のバイブル的な文献
横隔膜と自律神経・迷走神経の関係に関する根拠
丹田呼吸がなぜリラックス(副交感神経の活性化)を生むのかの根拠です。
Gerritsen, R. J. S., & Band, G. P. H. (2018).
Breath of Life: The Respiratory Vagal Stimulation Model of Contemplative Activity.
根拠の内容: 深い呼吸(特に呼気の延長)が迷走神経を介して脳にリラックス信号を伝え、心拍変動(HRV)を改善することを体系化したレビュー論文
Porges, S. W. (2011).
The Polyvagal Theory: Neurophysiological Foundations of Emotions, Attachment, Communication, and Self-regulation.
根拠の内容: 「ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)」。呼吸と身体感覚のコントロールが、感情の調整にどう関わるかを説いており、「腹の据わった状態」が精神的安定に寄与する生理学的裏付けとしています。
さて、丹田の探し方についてみていきましょう。
丹田には、「上丹田(じょうたんでん)」、「中丹田(ちゅうたんでん)」、「下丹田(げたんでん)」があります。
3つの丹田の中で、一番上にあるのが、「上丹田」で、眉間(みけん)の奥。脳の「松果体」のあたりを指します。
「上丹田」は、「知性・直感・精神」を司る場所とされています。
探し方は、両方の眉毛の真ん中にある「印堂」というツボに指を置きます。
そこから頭の中心に向かって、数センチ奥に入った空間を意識します。
目を閉じて、眉間の奥に「静かな光」や「一点の空間」があると感じる場所が「上丹田」になります。
「中丹田」は、胸の中央。両方の乳首を結んだ線の中心の奥になります。
「中丹田」は、「感情・人間関係・心の安定」を司る場所とされています。
探し方は、胸の真ん中にある平らな骨である胸骨を指先で軽く押さえます。そこで不安な時や感動した時に、ジーンと熱くなったり、ギュッと締め付けられたりする感覚がある場所を探します。
深く呼吸をした時に、胸の奥で一番膨らみを感じる中心点が「中丹田」になります。
「下丹田」は一番重要で、一般的にただ単に「丹田」といった場合は、この「下丹田」を指します。
「下丹田」は、「生命力・意志・身体の軸」を司る最も一般的で重要な丹田です。
探し方は、おへそから指3本から4本下におり、そこからさらに指3本分ほど奥つまり体内に入った場所になります。
具体的には、おへその下に人差し指・中指・薬指を揃えて当てます。そして薬指が当たっている高さのまま、お腹の表面ではなく「お腹の中、背骨との中間くらい」を意識します。
鼻から息を吸い、口から吐きながら、お腹の底にグッと力が溜まる感覚がある場所が「下丹田」になります。
さあ、理屈がわかったところで、実際に丹田を鍛えていきましょう。
丹田呼吸とはどういう感じかを体験するために、簡単で基本的な方法をさらっとご紹介します。
道具はいりません、今すぐその場で数分でできます。
ヨガでも「腹式呼吸」をベースにするけれど、丹田呼吸も、お腹の奥を意識することが大切になってきます。
① まずは、いきなりココが一番重要なところなのですが、口から細く長く、お腹をへこませながら息を吐ききります。
「もう吐けない!」というところまで吐くと、自然とお腹の奥、つまり丹田に力が入るはずです。
② 次に鼻から吸っていくのですが、息を吐き切ったあと、力をふっと抜くと、自然に空気が入ってくる感じで、この時、おへその下がぷくーっと膨らむのを感じるようにします。
③ 自然に空気が入ってきたら、吸った息を少しだけ丹田に溜めるイメージでキープします。
これを5回繰り返すだけで、丹田が刺激され、頭がスッキリして体がポカポカしてきます。
最後に、まとめた動画をご紹介します。
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