フレイル、ロコモ、サルコペニアのチェック法について

フレイル、ロコモ、サルコペニアのチェック法について

「最近、歩くのが遅くなった?」「何でもない場所でつまずく…」それは体からのサインかもしれません。そこで、健康寿命を延ばすために欠かせない『フレイル』『ロコモ』『サルコペニア』の自宅で今すぐできる簡単なセルフチェック法を詳しく解説します。

サルコペニア・ロコモ・フレイルの関係性

フレイル、ロコモ、サルコペニアの関係性を図解するとこんな感じになります。
一言でいうと、フレイル虚弱ロコモ移動機能の衰えサルコペニアは、筋力・筋量の衰えの指標になっています。


サルコペニア、ロコモ、フレイルは似ている言葉で、なんとなく違いもわかりにくいですが、その目的や視点をみると違いがみえてきます。


サルコペニア、ロコモ、フレイルは似ている言葉で、なんとなく違いもわかりにくいですが、その目的や視点をみると違いがみえてきます。


サルコペニアは、筋減少症という疾患名でもあり、筋力・筋肉量の減少という視点から、将来的に移動障害や要介護となる可能性を考え、予防していく目的があります。


ロコモは、幅広い年齢層の移動機能、特に立つ・歩くという動作に焦点をあて、その機能が保たれているかという視点から、移動機能低下、将来的要介護のリスク低減のために早期発見・早期対策を行うことが目的になっています。


フレイルは、健常と要介護の境界線にいる人を、身体的のみならず、精神・心理的、社会的視点も踏まえ、要介護になるリスクを減らし、対策をして健常な状態に戻れるようにしていくことが目的になっています。


全体を俯瞰できるように図でまとめると、先ほどの図のようになります。

フレイルだけどロコモではないという状態は、COPDや糖尿病などで体重減少や疲れやすいといった症状があったり、「滑舌が悪くなった」「食べこぼしが増えた」「噛む力や飲み込む力が低下した」といった全身フレイル・虚弱につながるオーラルフレイルなどが該当します。


一方、ロコモだけれどサルコペニアではないという状態は、いわゆる筋量はあるものの、移動しにくいという状態で、骨粗鬆症・変形性膝関節症などの関節症などがあげられます。


さて、関係性やおおまかな全体像がわかったところで個々のチェック法にうつっていきたいと思います

サルコペニアのチェック法

『サルコペニア』とは、加齢や疾患により筋肉量と筋力が低下し、歩行困難や転倒リスクを高める「筋減少症」を指し、2016年10月には国際疾病分類に「サルコペニア、筋肉減少症」として登録され、疾患に位置付けられています。


サルコペニアは、ギリシャ語で筋肉の意味である「サルコ」と喪失の意味である「ペニア」からくる造語で、「加齢性筋肉減弱現象」と呼ばれることもあります。


サルコペニアになると、歩く、立ち上がるなどの日常生活の基本的な動作に影響が生じ、介護が必要になったり、転倒しやすくなったります。
た、各種疾患の重症化や生存期間にもサルコペニアが影響するとされ、現在は様々な診療科にまたがってサルコペニアが注目されています。
サルコペニアについては、日本サルコペニア・フレイル学会と国立長寿医療研究センターが中心となって『サルコペニア診療ガイドライン』を発表しています。


現在では、AEGSが発表しているサルコペニアの診断アルゴリズムが、アジア人の体格に合わせた診断指針として、日本の医療・介護現場で最も広く使われています。


AWGS 2019 によるサルコペニアの診断アルゴリズム

項目 男性 女性
【症例抽出】
SARC-F質問票 4点以上 4点以上
下腿周囲長(CC) 34cm未満 33cm未満

該当ならSARC-Fに10点加点し
SARC-Calf

SARC-CalF 11点以上 11点以上
【評価】
握力 28.0kg 未満 18.0kg 未満 筋力
歩行速度 1.0m/秒 未満 1.0m/秒 未満 身体機能
5回椅子立ち上がり 12秒以上 12秒以上 身体機能
SPPB 9点以下 9点以下 身体機能

骨格筋指数 (BIA法)
生体電気インピーダンス法

7.0kg/m²未満 5.7kg/m²未満 骨格筋量

骨格筋指数 (DXA法)
二重エネルギーX線吸収法

7.0 kg/m²未満 5.4kg/m²未満 骨格筋量

サルコペニアの早期発見のため、専門施設でなくても、地域社会で早期発見ができるよう、診断の入り口を広くした診断アルゴリズムになっているのが特徴です。


まず診断の第一ステップとして、症例抽出を行います。
握力、歩行 、椅子から立ち上がる、階段を昇る、転倒に関する質問が書かれているシートであるサルコペニア質問票に記入し、4点以上だとサルコペニアの可能性ありということになります。
この質問票は、それぞれの項目の頭文字を取って、SARC-F(サーク・エフ)と呼ばれています。
SARC-F質問票の具体的な内容は、このようになっています。

内容 質問 スコア

握力
(Strength)

4~5kgのものを持ち上げて運ぶのがどのくらいたいへんですか

全くたいへんではない=0
少したいへん=1
とてもたいへん、または全くできない=2

歩行
(Assistance in walking)

部屋の中を歩くのがどのくらいたいへんですか

全くたいへんではない=0
少したいへん=1
とてもたいへん、補助具を使えば歩ける、または全く歩けない=2

椅子から立ち上がる
(Rise from a chair)

椅子やベッドから移動するのがどのくらいたいへんですか

全くたいへんではない=0
少したいへん=1
とてもたいへん、または助けてもらわないと移動できない=2

階段を昇る
(Climb stairs)

階段を10段昇るのがどのくらいたいへんですか

全くたいへんではない=0
少したいへん=1
とてもたいへん、または昇れない=2

転倒
(Falls)

この1年で何回転倒しましたか

なし=0
1~3回=1
4回以上=2

さらに、ふくらはぎ周囲長を測定し、男性は34cm未満、女性は33cm未満の場合SARC-F(サーク・エフ)10点加点し、SARC-CalF(サーク・カーフ)とし、その点数が11点以上になれば、やはりサルコペニアの可能性ありということになります。
SARC-CalF(サーク・カーフ)のカーフは、ふくらはぎからきています。


ふくらはぎの周りの長さの測定に関しては、公益財団法人 長寿科学振興財団の『健康長寿ネット』において簡易チェック法が、『指輪っかテスト』として紹介されています。


実は、指輪っかでふくらはぎを囲んだ時、隙間ができる場合は、囲めないグループに比べてサルコペニアの発症率が数倍高いという研究結果が出ています。

「隙間ができる」からといって即座に病気と決まったわけではありませんが、食事、特にタンパク質摂取や運動・レジスタンス運動を見直す非常に良いサインと言えます。
以上が、症例抽出の段階ですが、ここでサルコペニアの可能性ありとなった場合、具体的な評価に入っていきます。


評価は、一般診療所や地域では、この一覧表の中で握力または5回椅子立ち上がりをチェックします。
もし該当すれば、サルコペニアの一種の予備軍ともいえる「筋肉量は普通なのに、力がでない」といったダイナペニアの状態、または、「筋肉量も減り、力もでないサルコペニア」の可能性ありとして、運動や食事の改善とともに受診勧奨の対象となります。


医療機関であれば、筋力として握力、身体機能として歩行速度または5回椅子立ち上がりまたはSPPB骨格筋量が測定され、骨格筋量が基準値未満でかつ、筋力もしくは身体機能のどちらか基準値未満であれば『サルコペニア』としての診断になり、骨格筋量、筋力、身体機能の3つとも基準値未満であれば、『重症サルコペニア』という診断になります。


SPPBとは

サルコペニアの評価の中で、身体機能の評価法としてSPPBについてわかりにくいと思いますので、もう少し詳しく解説します。
SPPBは、Short Physical Performance Battery の略で、高齢者の下肢の身体機能を客観的に評価するための世界的な標準テストになっています。
この一覧表のように、バランス検査・歩行速度・立ち上がりテストの3つの評価項目をそれぞれを0点から4点で採点し、12点満点中、9点以下だった場合、サルコペニアとして評価されます。

SPPB検査 バランス検査 歩行速度 立ち上がりテスト
内容 閉脚立位・セミタンデム立位・タンデム立位の3つの姿勢をそれぞれ10秒間保持できるかを確認します。 通常、4m(または3m)の距離を、普段通りの速さで歩いたタイムを測定します。 胸の前で腕を組み、椅子から「5回」連続で立ち上がるのにかかったタイムを測定します。
4点 タンデム立位 10秒保持 4.82秒未満 11.20秒未満
3点 タンデム立位 3〜9.99秒 4.82 〜 6.20秒 11.20 〜 13.69秒
2点 タンデム立位 3秒未満(かつセミタンデム10秒) 6.21 〜 8.70秒 13.70 〜 16.69秒
1点 セミタンデム立位 10秒未満(かつ閉脚10秒) 8.70秒超 16.70 〜 60.00秒
0点 閉脚立位 10秒未満、または実施不能 実施不能 60秒以上、または実施不能

SPPBは、予測精度が高く、合計点数が低いほど、将来の転倒リスク、入院リスク、介護が必要になる可能性が高いことが科学的に証明されています。


また握力だけでなく、歩行立ち上がりの機能を測ることで、下肢筋力に特化したより日常生活に近い「動ける能力」を評価できるのが特徴です。


バランス検査での立位は、閉脚立位・セミタンデム立位・タンデム立位の3つの姿勢をそれぞれ10秒間保持できるかを確認します。

閉脚立位は、両足を揃えて立ちます。
セミタンデム立位は、片方の足の土踏まずの横に、もう片方の足のかかとをつけて立ちます。
タンデム立位は、片方の足のつま先の前に、もう片方の足のかかとを一直線につけて立ちます。


以上が、サルコペニアの診断・チェックでしたが、サルコペニアには、一次性サルコペニアと、二次性サルコペニアの2種類があります。


一次性サルコペニアは、加齢による筋肉量の減少が原因で、加齢以外には明らかな原因がないものです。
二次性サルコペニアは、加齢以外に、活動量に関連するもの、疾患に関連するもの、栄養に関連するものといった原因があります。
例えば、20代でも「極端なダイエットで筋肉が激減した」「大怪我で長期間寝たきりになった」場合は、サルコペニアの状態に陥ることがあります。

ロコモのチェック法

さて、今度は、ロコモの解説をしていきます。


ロコモは、ロコモティブシンドローム、運動器症候群とも言われ、日本整形外科学会が「いつまでも動ける体を」という目的で2007年に提唱したものです。


移動や移動能力と言う意味のロコモーション、あるいは移動するという意味のロコモティブと、症候群という意味のシンドロームを組み合わせた造語になっています。


ロコモとは、骨、関節、筋肉、神経などの「運動器」に障害、つまり骨折、関節の病気、筋肉の衰え、つまりロコペニアなどが原因で、立つ・歩くといった移動機能が低下した状態のことを指します。
移動機能が低下しているため、将来要支援・要介護になる可能性が高い状態です。


ロコモの原因としては、大きく分けて、「運動器自体の疾患」と、「運動器機能不全」があります。


運動器自体の疾患は、加齢に伴う筋骨格運動器系の疾患で、変形性関節症、骨粗鬆症、脊柱管狭窄症などがあり、また関節リウマチなどによる痛み、関節可動域制限、筋力低下・麻痺・骨折・痙性などによるバランス能力の低下があげられます。
運動器機能不全は、加齢による身体機能は衰えで、筋力低下、持久力低下、反応時間延長、運動速度の低下、巧緻性低下、深部感覚低下、バランス能力低下などがあげられます。


ロコモの判断基準としては、日本整形外科学会が推奨する「ロコモ度テスト」ロコチェックがあります。


簡易型の『ロコチェック』は、骨や関節、筋肉などの運動器が衰えているサインとして7つの項目をチェックしますが、1つでも該当するものがあれば、ロコモの可能性があります。


ロコチェックの7つの項目を挙げているので、参考にしてください。

ロコチェック
1.片脚立ちで靴下がはけない
2.家の中でつまずいたりすべったりする
3.階段を上がるのに手すりが必要である
4.家のやや重い仕事が困難である
5.2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
 (1Lの牛乳パック2個程度)
6.15分くらい続けて歩くことができない
7.横断歩道を青信号で渡りきれない


このロコチェックの他には、日本整形外科学会が推奨する「ロコモ度テスト」があります。
これは、次の3つのテストを行い、年齢平均値と比較することによって、年齢相応の移動能力を維持しているかを判定します。


ロコモ度テストには、下肢筋力をみる「立ち上がりテスト」、歩幅をみる「2ステップテスト」 、身体状態・生活状況をみる「ロコモ25」の3つがあり、これらの結果により、ロコモ度1、ロコモ度2を判定します。


ロコモ度1とは、筋力やバランス能力の低下がみられ、移動機能が低下してきている状態になります。
ロコモ度2とは、移動機能が低下し、日常生活に支援や介助が必要となってくるリスクが高い状態になります。


「立ち上がりテスト」では、10cm、20cm、30cm、40cmの台を用意します。
40cmの台に座り、足は肩幅に開いて少し後ろに引き、脛の角度が70度になるようにします。
そこから反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間止まります。
できたら台を低くしていきます。
両脚で20cmの高さから立ち上がれないならロコモ度2になります。


また40cmの台から立ち上がることができたら、片脚テストを同じように行います。
どちらか一方の片脚で40cmの高さから立ち上がれなければロコモ度1になります。


2ステップテストは、スタートラインを決め、両足のつま先を合わせます。
そこからできる限り大股で2歩歩き、両足を揃えますが、このときバランスをくずした場合は失敗となります。
2歩分の歩幅を測り、身長を加味した2ステップ値を算出し、ロコモ度をチェックします。
身体状態・生活状況のチェックとして、日本整形外科学会が開発した『ロコモ25』という質問票があります。


質問は全部で25問で、痛みとしびれ関連が5問、日常生活動作・ADL関連が12問、社会生活関連が4問、心の健康・満足度関連が4問となっています。


各質問に対して「過去1ヵ月間の状態」を振り返り、0点から4点のいずれか1つを選んで記入していきます。
最後に、記入した点数の合計点を出します。


合計点の判定基準に従いロコモ度を判定します。
7点以上なら、ロコモ度1で、移動機能の低下の始まりと判定されます。
16点以上なら、ロコモ度2として、移動機能の低下が進行中と判定されます。
24点以上なら、ロコモ度3として、日常生活に支障ありと判定されます。


ロコモ25の具体的な質問内容はこのようになっていますので、参考にしてみてください。

番号 質問カテゴリー 内容分類 質問内容 0点 1点 2点 3点 4点
1 痛みとしびれ 痛み 首や肩の痛みはありますか? ない 少しある 中くらい ひどくある 耐えられない
2 痛みとしびれ 痛み 背中や腰の痛みはありますか? ない 少しある 中くらい ひどくある 耐えられない
3 痛みとしびれ 痛み 腕や手の痛みはありますか? ない 少しある 中くらい ひどくある 耐えられない
4 痛みとしびれ 痛み 足や腰の痛みはありますか? ない 少しある 中くらい ひどくある 耐えられない
5 痛みとしびれ しびれ 手や足のしびれはありますか? ない 少しある 中くらい ひどくある 耐えられない
6 日常生活動作 (ADL) 動作 椅子から立ち上がるのは困難ですか? 全くない 少し 中くらい かなり できない
7 日常生活動作 (ADL) 動作 お風呂やトイレの動作は困難ですか? 全くない 少し 中くらい かなり できない
8 日常生活動作 (ADL) 動作 家の中を歩くのは困難ですか? 全くない 少し 中くらい かなり できない
9 日常生活動作 (ADL) 動作 階段を上り下りするのは困難ですか? 全くない 少し 中くらい かなり できない
10 日常生活動作 (ADL) 動作 しゃがんだり、立ち上がったりは? 全くない 少し 中くらい かなり できない
11 日常生活動作 (ADL) 動作 15分くらい立っているのは困難ですか? 全くない 少し 中くらい かなり できない
12 日常生活動作 (ADL) 動作 15分くらい続けて歩くのは困難ですか? 全くない 少し 中くらい かなり できない
13 日常生活動作 (ADL) 動作 2〜3kmくらい続けて歩くのは困難? 全くない 少し 中くらい かなり できない
14 日常生活動作 (ADL) 動作 横断歩道を青信号で渡りきれますか? 全く困らない 少し 中くらい かなり できない
15 日常生活動作 (ADL) 動作 2kg程度の買い物袋を持って歩くのは? 全くない 少し 中くらい かなり できない
16 日常生活動作 (ADL) 家事 掃除機かけなど軽い家事は困難ですか? 全くない 少し 中くらい かなり できない
17 日常生活動作 (ADL) 家事 布団の上げ下ろしなど重い家事は? 全くない 少し 中くらい かなり できない
18 社会生活 社会 近所への外出(買い物など)は? 全くない 少し 中くらい かなり できない
19 社会生活 社会 公共交通機関での外出は困難ですか? 全くない 少し 中くらい かなり できない
20 社会生活 社会 旅行や遠出をするのは困難ですか? 全くない 少し 中くらい かなり できない
21 社会生活 社会 スポーツや運動をするのは困難ですか? 全くない 少し 中くらい かなり できない
22 心の健康・満足度 心理 転びそうな不安を感じますか? 全くない 少し 中くらい かなり 非常に
23 心の健康・満足度 心理 将来、歩けなくなる不安はありますか? 全くない 少し 中くらい かなり 非常に
24 心の健康・満足度 満足度 現在の体の状態に満足していますか? 満足 やや不満 中くらい かなり不満 非常に不満
25 心の健康・満足度 生活影響 運動器の障害は日常生活に影響しますか? 全くない 少し 中くらい かなり 非常に

ロコモ25は、本人が「どれくらい不自由を感じているか」という主観的な指標になっていて、「立ち上がりテスト」や「2ステップテスト」と併せて行うことで、より正確に自分の身体の状態を把握することができます。


ロコモ25のスコアが7点以上、つまりロコモ度1になったら、スクワットなどの「ロコトレ」を生活に取り入れるサインといえます。

フレイルのチェック最後に、フレイルについて解説していきます。

最後に、フレイルについて解説していきます。


『フレイル』は、海外の老年医学の分野で使用されているフレイルティが語源となっています。
これを日本語に訳すと「虚弱」「老衰」「脆弱」などの言葉になります。


2014年5月、日本老年医学会は高齢者において起こりやすいフレイルティに対し、「適切な対策をすれば、元の健康な状態に戻れる、つまり可逆性がある」という意味があることを強調したいことから共通の日本語訳を「フレイル」という共通した日本語訳にすることが提唱されました。


厚生労働省や老年医学会も、フレイルは以下の3つの要素が連鎖することを認めていて、これはフレイル・ドミノと呼ばれています。
その3つの要素とは、筋力低下、ロコモ、低栄養などの身体的フレイルうつ状態、認知機能低下などの精神・心理的フレイル孤立、閉じこもり、経済的困窮といった社会的フレイルになります。


日本老年学会では、『フレイル』とは、活動的な生活をしている状態(健常)と要介護状態の間の状態」と定義していて、さらにその手前の軽い状態を『プレフレイル』としています。


『フレイル』は、適切な対策をすれば、元の健康な状態に戻れる一方、何も対策をせず放置していると、要介護状態になってしまうリスクが高まります。
栄養や運動習慣などの生活習慣を整えたりすることで、フレイル状態から脱却できるので、早期発見・早期対策が大事になってくるのです。
それでは、まずフレイルの中の身体的問題、身体的フレイルについてみていきます。


『フレイル』かどうかの代表的な医学的判定指標として2020年改訂日本版CHS基準、いわゆるJ-CHS基準があります。
これは、アメリカで行われた大規模調査(CHS)の基準を、国立長寿医療研究センターが中心となって「日本人向け」に作り直したものになっています。


この基準は、医学的フレイルの診断基準として、フレイルのうちの身体的問題を判定するもので、精神・心理的問題、社会的問題については評価していません。


もう少し、J-CHS基準の中身を詳しくみていくとこのような感じになります。

項目 評価基準
体重減少 6か月で、2kg以上の(意図しない)体重減少
筋力低下 握力:男性 < 28kg、女性 < 18kg
疲労感 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
歩行速度 通常歩行速度 < 1.0m/秒
身体活動

① 軽い運動・体操をしていますか?
② 定期的な運動・スポーツをしていますか?
上記の2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答

体重減少・疲労感・活動低下・筋力低下・歩行速度低下の5項目について判定を行い、
3項目以上に該当した場合をフレイル、1~2項目に該当した場合をプレフレイル、1項目も該当しなかった場合をロバスト(健常)としています。


あくまでも「筋力や歩行速度が落ちている=身体のエネルギー効率が悪くなっている」という医学的な状態を客観的に判定することを目的となっているからです。


25項目のフレイルの「基本チェックリスト」:行政(厚生労働省)によるスクリーニング(ふるい分け)ツール


フレイルの医学的診断基準には、J-CHS基準がありますが、筋力低下や歩行速度は測るのが大変です。
しかしフレイルを早期発見・早期対策することは、介護予防の観点からも重要であることから、厚生労働省が介護予防のために25項目の質問票を作成したものが「基本チェックリスト」になります。
この「基本チェックリスト」は、市町村が行う「介護予防事業」の対象者を特定するためのフレイルのスクリーニングツールとして広く使われています。


高齢者の生活全般を俯瞰し、早期にリスクを察知して介護予防につなげるため、2020年改定日本版CHS基準(J-CHS基準)とは異なり、身体的問題のほかに、精神・心理的問題、社会的問題においてもあぶりだせるようになっています。
「この人は将来、介護が必要になるリスクがあるか?」をざっくりと判定し、予防プログラムに繋げるために使われます。


25項目のフレイルの「基本チェックリスト」は、生活機能の低下を早期に発見するための25の質問で構成されていて、日常生活、運動器、栄養、口腔、閉じこもり、認知、うつの7つのカテゴリーが組み込まれています。

No. 質問項目 回答(はい) 回答(いいえ) カテゴリー
1 バスや電車で1人で外出していますか 0 1 日常生活
2 日用品の買い物をしていますか 0 1 日常生活
3 預貯金の出し入れをしていますか 0 1 日常生活
4 友人の家を訪ねていますか 0 1 日常生活
5 家族や友人の相談にのっていますか 0 1 日常生活
6 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか 0 1 運動器
7 椅子に座った状態から何もつかまらずにたちあがっていますか 0 1 運動器
8 15分くらい続けて歩いていますか 0 1 運動器
9 この1年間に転んだことがありますか 1 0 運動器
10 転倒に対する不安は大きいですか 1 0 運動器
11 6ヵ月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか 1 0 栄養
12 BMIが18.5未満である(体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m) 1 0 栄養
13 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか 1 0 口腔
14 お茶や汁物等でむせることがありますか 1 0 口腔
15 口の渇きが気になりますか 1 0 口腔
16 週に1回以上は外出していますか 0 1 閉じこもり
17 昨年と比べて外出の回数が減っていますか 1 0 閉じこもり
18 周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあるといわれますか 1 0 認知
19 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか 0 1 認知
20 今日が何月何日かわからない時がありますか 1 0 認知
21 (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない 1 0 うつ
22 (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった 1 0 うつ
23 (ここ2週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる 1 0 うつ
24 (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない 1 0 うつ
25 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする 1 0 うつ

25項目のチェックというと、この厚生労働省が出している『25項目のフレイルの基本チェックリスト』の他に、日本整形外科学会が出している『ロコモ25』を思い出し、どう違うのか混乱する人もいるかもしれません。
『25項目のフレイルの基本チェックリスト』は、フレイル・要介護リスクの早期発見のための問診票という位置づけにあり、『ロコモ25』はロコモの度合を判定するツールという位置づけになっています。

比較項目 基本チェックリスト ロコモ25
主な出典 厚生労働省 日本整形外科学会
主な対象 フレイル・要介護リスクの早期発見のための問診票 ロコモ(移動機能低下)の度合い測定・判定
項目の幅 認知、栄養、うつ、口腔など非常に幅広い 痛み・しびれ・具体的な動作能力に特化
回答形式 はい・いいえ の2択 0〜4点(または5段階)の点数制


行政と医学の「使い分け」

現在、日本の行政現場(市区町村の保健事業など)では、J-CHS基準よりも、以下のツールが主流になりつつあります。


後期高齢者の質問票(15項目):
2020年から始まった75歳以上を対象とした質問票。これには「会食の有無(社会性)」や「物忘れ(認知)」、「生活の満足度(心理)」が含まれており、J-CHSの弱点を補う形で運用されています。

カテゴリー 質問内容(要約)
健康状態 ① 健康状態はよいか
心の健康 ② 毎日の生活に充実感があるか
食習慣 ③ 以前より硬いものが食べにくくなったか / ④ お茶や汁物でむせることがあるか
栄養状態 ⑤ 6ヶ月で2〜3kg以上の体重減少があったか
身体機能 ⑥ 昨年と比べて外出回数が減ったか / ⑦ 1km程度歩けるか / ⑧ 転倒が不安か
社会参加 ⑨ 週に1回以上外出しているか / ⑩ 普段から家族や友人と付き合いがあるか
認知機能 ⑪ 物忘れが気になるか / ⑫ 今日の日付が言えるか
喫煙 ⑬ 現在、習慣的に喫煙しているか
口腔機能 ⑭ 1日1回以上は歯をみがいているか / ⑮ 歯や入れ歯でしっかり噛めているか


東京大学・飯島勝矢教授らの「イレブンチェック」:
指わっかテストに加え、食、運動、社会参加(文化活動やボランティア)をバランスよく評価するもので、社会性の欠如が身体的フレイルの入り口になることを強調しています。

ほぼ毎日、外出していますか? 社会参加
週に1回以上は、友達と会ったり、趣味の集まりに参加していますか? 社会参加
毎日、どなたかと一緒に食事をしていますか?(共食) 社会参加
1日3食、しっかり食べていますか? 栄養(食事)
魚、肉、卵、大豆製品、牛乳のいずれかを毎日2回以上食べていますか? 栄養(食事)
野菜を毎日、手のひら2杯分以上食べていますか? 栄養(食事)
半年前と比べて、硬いものが食べにくくなりましたか? 栄養(食事)
お茶や汁物で、むせることがありますか? 栄養(口腔)
ほぼ毎日、何らかの運動や体操をしていますか? 運動
昨年と比べて、歩く速さが遅くなったと感じますか? 運動
1kmくらい続けて歩けますか? 運動


精神・心理的フレイルの評価ツール

GDS(老年期うつ病評価尺度):
高齢者の「うつ状態」を早期に発見するためのスクリーニングツール
高齢者の場合、身体の衰えが「加齢によるもの」か「うつによるもの」か判別しにくいため、「気持ちの持ちよう」に特化して評価する工夫として、一般的なうつ病の診断基準と異なり、食欲不振や不眠などに関する質問が排除されています。


判定: 通常は15項目の質問票(GDS-15)が使われ、5〜6点以上でうつの疑い、10点以上で中等度以上のうつと判定


MMSE(ミニメンタルステート検査):
認知機能の低下(認知症の疑い)を客観的に評価する世界共通のテスト
見当識、記憶、計算、図形の模写など、30点満点で採点。


判定: 23点以下で認知障害の疑いあり、27点以下で軽度認知障害(MCI)の疑い
近年では、身体的フレイルと認知機能低下が合併した状態を「コグニティブ(認知)フレイル」と呼び、非常に重要視されています。


社会的フレイルの評価ツール

社会的フレイルは、「独居」「交流の欠如」「社会貢献の喪失」などがきっかけで、生活の活力が失われる状態です。


HALFT(ハルフト):
日本の研究グループによって開発された、社会的フレイルを手軽に判定する5つの指標。


以下の5つの頭文字をとっています。

Help(助け):困った時に助けてくれる人がいない
Alone(独居):一人暮らしである
Leisure(余暇):趣味や余暇活動を一緒にする人がいない
Friends(友人):近所に気兼ねなく話せる友人がいない
Talk(会話):毎日誰かと話をしていない


牧迫(まきざこ)らの指標(5項目):
日本の地域保健でよく使われる別の尺度
以下の5項目中、2項目以上に該当すると社会的フレイルと判定されます。
「外出の回数が昨年より減った」
「友人の家を訪ねていない」
「家族や友人の役に立っていると感じない」
「一人暮らしである」
「毎日誰かと話をしていない」

まとめ動画

簡単なまとめ動画になっています。