米国と日本の食事ガイドラインの相違点 | 健康トピックス

米国と日本の 食事ガイドラインの 相違点 | 健康トピックス

米国では、2026年1月7日に、「Dietary Guidelines for Americans, 2025-2030」が出され、米国の栄養指針は、いわば大きな「パラダイムシフト」が起きたとも言われています。
具体的な内容について、日本と比較していきます。

「Dietary Guidelines for Americans, 2025-2030」では、その核心となる部分が、『The eat real food』、つまり自然な状態に近いもの『リアル・フード』を食べ、工業的な『偽物の食品』(非リアル・フード)を排除せよという考え方が大きな流れになっています。


また、大きなポイントとしては、蛋白質の大幅な増量を推奨飽和脂肪酸への制限を緩和しバター、ラード、牛脂などの「自然な脂」は容認人工甘味料をはじめとした添加物も避けるべきとはっきりと明記添加糖(砂糖)を徹底排除炭水化物は低GI・未精製を徹底推奨し白米やパンは大幅削減の傾向というようになっています。


米国 (2025-2030) の傾向と日本の現状

米国では「Dietary Guidelines for Americans, 2025-2030」によって「パラダイムシフト」が起こっている状況になっていますが、日本の現状はどのようになっているのか比較してみていきましょう。


まずは、核心にあたるリアルフードについて、日本ではどのようになっているのでしょうか?
米国では、リアル・フードを推奨し、加工度という視点を重視しています。
超加工食品(UPF)を明確に否定していて、工場で作られた製品より家庭料理を優先ということが明確に強くはっきりと打ち出されています。


主要な超加工食品(UPF)
① 菓子・デザート類
スナック菓子、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、ドーナツ、シリアルバー、プロテインバー、グミキャンディ、アイスクリーム
② 甘味飲料
コーラ、サイダー、加糖ジュース、果汁飲料、スポーツドリンク、エナジードリンク、加糖アイスティー
③ インスタント・即席食品
インスタントラーメン、即席焼きそば
④ 冷凍・加工主食
冷凍ピザ、冷凍パスタ、冷凍チャーハン、冷凍オムライス、冷凍ドリア
⑤ 加工肉・たんぱく食品
ソーセージ、ウインナー、ハム、ベーコン、サラミ、チキンナゲット、フィッシュフライ
⑥ パン・シリアル類
食パン(長期保存タイプ)、菓子パン、シリアル(砂糖入り)

では、日本ではどうかというと、残念ながら『リアル・フード』という言葉は行政の指針に正式採用されていません。

日本では、加工度そのものより、塩分や糖分の過剰を警戒する形になっています。

日本は依然として成分の足し算・引き算、つまり塩分を減らす、ビタミンを補うといったような視点に重点が置かれています。


そこで日本においては『リアル・フード』という言葉はないにしても、それに近い概念や記載がないか探してみました。


日本の「食育推進基本計画」では、古くから「地産地消」つまり地域の農産物を利用するということや「旬の食材」素材の味を活かして食べることを推奨してきました。
この部分が米国でいう「加工を最小限に抑えたリアルフード」と本質的に同じ部分だと思います。


2025年からの5年間をカバーする日本人の食事摂取基準では、米国と同様に蛋白質摂取が強調されていて、その中で特に高齢者の「フレイル(虚弱)」予防のため、加工品ではなく「肉・魚・卵・大豆」という「素材そのもの」からタンパク質を摂ることが強く推奨されています。


この食育とフレイル対策の部分が、米国のガイドラインと非常に一致している部分になります。


新・逆ピラミッドと食事バランスガイド(コマ型)

全体的にみていきましょう。

米国では、逆ピラミッド型の新しいフードピラミッドが提唱されました。
タンパク質と脂肪が土台の新しい図で、肉、魚、卵といった蛋白質、野菜、自然由来の健康的な脂質を土台として多く摂るように推奨され、その次に果物、ナッツ類、全乳製品がきていて、白米や白パンなどの加工された穀物や糖分は極力控えるように示されました。


日本では、これに似たものとして、「食事バランスガイド」があり、一日に「何を」「どれだけ」食べたらいいのかを、コマの形と料理のイラストで表現したものがあります。
コマは5つのグループごとに分けられ、それぞれ目安となる料理とその分量が示されているので、これにより、「何を」「どれだけ」食べたらよいのかを、簡単に理解することができます。


一番上が主食として、米・パン・麺類がきていて、ここは米国とは真逆になっています。
次に副菜がきていて、ここには野菜やきのこ、いも、海藻などが該当します。
その下は主菜として肉、魚、卵、大豆などの蛋白質製品がきていて、ここも一番上に蛋白質がきていた米国とは大きく異なっています。
そしてさらにその下に、牛乳・乳製品と果物がきています。


バランスが悪いと、コマは倒れてしまいます。
しかし、1食あたりのバランスが悪いからというのではなく、あくまでコマは平均的な一日分の食事を表したもので、3日から4日、もしくは一週間といった一定期間を目安に、食生活のバランスをチェックするようにしましょうとしています。


コマの上で人が走っているのは、運動も大切ですよということを示していて、コマの芯の部分は水となっていて、水分が食事の中で欠かせない存在であることが強調されています。


菓子や嗜好飲料いついては、とりわけ必要性が低いので、ヒモで表現されています。


日米の比較

日本では、主食である炭水化物をベースとしているのに対して、米国では白米や白パンなど精製された炭水化物を控えるようになっています。
また動物性脂質も天然で健康的なものなら積極的に摂るよう推奨している米国に対して、日本はまだ、牛脂などの飽和脂肪酸は、心筋梗塞のリスクという科学的根拠を重視しており、米国ほど極端に動物性脂質を肯定されておらず、米国と大きく違いがみられます。


以下について表にまとめてみました。

注目ポイント 米国 (2025-2030) の傾向

日本 (2025年版) の傾向
食事バランスガイド

主要コンセプト・考え方

リアルフード(Real Food)を推奨
加工度を重視。超加工食品を避ける。

栄養バランスと食育
主食・主菜・副菜の組み合わせを重視。

最大の敵・避けるべきもの

超加工食品 (UPF)
(工場で作られた不自然な食品)

食塩の過剰摂取
(高血圧・胃がんの最大要因)

指導ツール

新・逆ピラミッド(タンパク質土台)
肉・魚・野菜をベースにする。

食事バランスガイド(コマ型)
炭水化物(お米・パン)を一番上に置く。

加工食品 「本物の食品(Real Food)」を優先し、高度に加工された食品を制限。 加工食品に含まれる食塩や糖類の過剰摂取を警戒。
タンパク質 全ての食事でタンパク質を優先(1.2〜1.6g/kg)。 高齢者のフレイル(虚弱)予防のためタンパク質摂取を重視。
脂質(脂肪)

飽和脂肪酸への制限を緩和。
バター、ラード、牛肉の脂を「自然な脂」と容認。

飽和脂肪酸は厳格に制限(7%以下)。
心疾患リスクを考慮し、油の種類を厳選。

炭水化物

低GI・未精製を徹底推奨。
(白米やパンは大幅削減の傾向)

主食の維持。
(「お米」を食事の軸として推奨)

糖類

添加糖(砂糖)を徹底排除。
人工甘味料も「不自然」として忌避。

糖尿病予防の観点から制限。
甘い飲料などへの注意喚起。

甘味料

人工甘味料も避けるべきと明記。
「不自然な甘み」を排除。

摂取源(飲料など)の抑制。
肥満や糖尿病対策として糖類を制限。

ライフステージ 乳幼児から高齢者まで全世代をカバー。 高齢化に伴う「骨粗鬆症」や「低栄養」への対策を強化。

日本人の食事摂取基準での改定

日本人の食事摂取基準で改定された主な部分とその背景・目的について簡単にまとめてみました。

項目 変更内容(2025年版の数値) 改定の背景・目的
タンパク質 指標に変更はないが、高齢者の摂取量確保を強調 筋肉量の減少(サルコペニア)を防ぐための「質の高いタンパク」の推奨。
食物繊維

目標量 22g/日以上(18歳以上成人)
理想は25g/日

生活習慣病(心血管疾患・糖尿病)のリスク低下。日本人の摂取不足を考慮。
ビタミンB12

4.0μg/日(18歳以上の男女)
指標が「目安量」に変更

フレイル予防。高齢者の吸収率低下を考慮し、神経機能の維持を重視。
ビタミンD

9.0μg/日(18歳以上の男女)
前回から増加

骨粗鬆症予防のため。日照時間の不足や高齢者の骨折リスクに対応。
耐容上限量の削除 遺伝的要因を除き、通常の食事での過剰症リスクが低いため制限を撤廃。
アルコール

純アルコール20g/日以下が目安
(男性40g、女性20g以上はリスク増)

健康日本21(第三次)と連動し、がんや生活習慣病リスクを厳格化。

日本における超加工食品(UPF)に関する議論

日本での超加工食品(UPF)に関する議論についてみていきましょう。


日本でも、超加工食品(UPF)に関する議論は、この数年で急速に活発化しています。
米国のように「指針に明記」される段階には至っていませんが、厚生労働省の検討会や東京大学などの研究グループ、食品安全の専門家たちの間で、規制・注意喚起すべきという推進派と、いやいや定義が曖昧であるという慎重派に分かれた議論が行われています。


日本における超加工食品(UPF)研究の先駆者と言えるのが東京大学大学院の村上教授らのグループです。
このグループでは、日本人の総エネルギー摂取量の約38%~47%が超加工食品(UPF)由来であることを指摘しています。
そして、超加工食品(UPF)の摂取量が多いほど、食物繊維やビタミンが不足し、食塩や糖質が過剰になるという相関関係を明らかにしています。
日本人は和食だから大丈夫という楽観論ではなく、実際には若年層を中心に米国に近い食生活にシフトしてしまっていると警鐘を鳴らしています。
その米国が今、まさに変わろうとしているのです。


厚労省においても、2025年版の策定過程で「日本人の食事摂取基準」策定検討会にて超加工食品(UPF)についての検討が行われています。
厚労省の現状のスタンスとしては、「超加工食品(UPF)という分類そのものを基準値として採用するには、まだ科学的根拠が不十分」であるという見解になっています。
そして、超加工食品(UPF)を避けることより、そこに含まれる「食塩・飽和脂肪酸・添加糖」という個別の栄養素を管理することが先決であるという栄養学の立場を維持した形になっています。


また、学会レベルでのシンポジウムでは、日本栄養・食糧学会日本公衆衛生学会において、超加工食品(UPF)に関する論文発表が増えてきています。


面白い視点としては、日本の伝統食材はに該当するのかというものがあります。超加工食品(UPF)
つまり、和食でもよく使われているだしの素や練り製品ですが、米国の定義をそのまま当てはめると、超加工食品(UPF)に該当してくる可能性があります。
こうしたものを一律に排除することが、本当に日本人の健康に寄与するのか?ということなども芯調に議論されていくポイントになっていくのかもしれません。


日本においては、2025年版の食事摂取基準や「健康日本21(第三次)」の議論を通じて、「加工食品に偏った食事は、結果として塩分過剰と食物繊維不足を招くため、未加工の食品(リアルフード)を増やすべきだ」という方向性では米国と一致しています。

日米の相違点まとめ動画

日本での人気オイルと超加工食品(UPF)の視点でみた評価

日本で人気のオイルについて、超加工食品(UPF)の視点でみた場合、どうなっているのか一覧表でまとめてみました。

オイルの種類 米国指針(2025-2030)の評価 評価の理由
オリーブ油 最高評価(推奨) 「健康的な脂質」の代表格。果実を絞るだけの低加工(リアルフード)であり、必須脂肪酸の供給源として唯一、明確に推奨リストに残っています。
アマニ油・エゴマ油 中立〜肯定的 オメガ3供給源として評価されますが、指針は「油」として摂るよりも、アマニやエゴマを**「種(Seeds)」のまま食べる**ことをより強く推奨しています。
大豆油・綿実油 評価低下(事実上の除外) いわゆる「シードオイル(種子油)」。高度な精製工程(UPFに近い)を要するため、健康的な脂質の具体例リストから意図的に外されました。
ゴマ油 中立 大豆油ほど敵視されませんが、積極的な推奨もありません。あくまで「風味付け」や「種そのもの」の摂取が優先されます。
MCTオイル 評価保留(言及少) 加工品という性質上、リアルフードの主役にはなりませんが、新指針が「飽和脂肪酸への敵視」をやめ「ココナッツ等」を認めたため、従来より否定されにくくなっています。