

よくブランドバッグや、ブランドものの高級腕時計を身に着けたがったりする人もいます。
どうしてなのでしょうか?
ブランドに全く興味がない実利主義の人、合理的な人からみれば、ブランド品をいっぱい持っている人は全く理解できなかったりします。
例えばバッグだと、エルメス、シャネル、ルイヴィトン、グッチ、ディオール、プラダ、セリーヌなどがブランド品として人気ですが、バッグって物を入れて運ぶだけのツールにすぎないよねと考えれば、さすがにスーパーのレジ袋とはいいませんが、普通の数千円のバッグでも十分と考えがちです。
高級時計ともなれば、パテック・フィリップ、オーデマ・ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンといった世界三大時計を筆頭に、ロレックスやオメガといった名前を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、時間がわかればいいんだから、そんな高額なブランド時計なんかしなくても、1000円札1枚で買える時計だって、そこそこ正確な時間は刻んでくれるじゃないかと考えてしまいがちです。
さらに言えば、スマホにも時計がついているので、時間を確認するだけなら腕時計字体全く不要で、あんなものは生活するにあたって邪魔でしかないという考えの人すらいます。
そして、ブランド志向の人に対しては、どうせ単なる「見栄」や「贅沢」にすぎないんだろうとレッテルを貼ってしまいがちです。
しかしどうも「見栄」や「贅沢」といった言葉だけでは語れない、脳の深い仕組みが関係しているのです。
高級ブランドのバッグに惹かれる心理は、単なる「見栄」や「贅沢」といった言葉だけでは片付けられない、脳の深い仕組みが関係していて、特に、脳の内側眼窩前頭皮質(mOFC: medial Orbitofrontal Cortex)という部位は、人がモノの価値を判断する際に極めて重要な役割を果たしていることがわかっています。
ブランド好きな女性がエルメスやシャネルなどのロゴを目にしたとき、脳内ではこれらのブランドは、長い歴史の中で「高品質」「希少性」「成功者の証」という強力なイメージを確立しています。
過去にブランド品を買って良い印象をもっていれば、脳の内側眼窩前頭皮質(mOFC: medial Orbitofrontal Cortex)は、そのブランドバッグを持つことで得られる強い快感や価値を感じ、周囲からの羨望や自己肯定感を「報酬」として予測します。
そしてなんと、この脳の内側眼窩前頭皮質(mOFC: medial Orbitofrontal Cortex)は、「美しいもの」を見た際にも強く活性化します。
従って、ブランド品が提供する洗練されたデザインや素材の質感は、この部位を刺激して生理的な心地よさを生み出すのです。
また人間は社会的動物で、集団内での自分の位置を常に意識します。
高級ブランド品を持っているということは、「私はこれだけの資源(富やセンス)を持っている」という感覚になれます。
とはいえ、ブランドに全く興味を示さない人もいますが、どうしてなのでしょうか?
これには、脳の報酬系の特性や、個人の価値観の構築プロセスが関係していると言われています。
ブランドに無関心な人は、内側眼窩前頭皮質が「ブランドロゴ」という社会的シンボルに対して高い報酬価値を割り当てていないだけなのです。
その代わりに、実用性であったり、機能美であったり、知的好奇心・趣味の深化など、別の対象に対して内側眼窩前頭皮質が強く反応するようなっているだけなのです。
つまり一言で言うと、報酬の対象が異なっているだけなのです。
自己評価が何を拠り所としているかによって変わってきます。
自分の価値を「他者からの評価」や「所有物」に置く傾向がある外出的自己価値の人は、ブランド品による補強が大切です。
一方、自分の価値を「自分のスキル」や「内面的な充足」に置く内発的自己価値の人は、ブランドは不要なのでらに反応しにくくなるのです。
刺激や新しいものを求める「新規性追求」の傾向が強い人は、ブランドが放つ「華やかさ」や「限定感」にドーパミンが放出されやすいと言われていて、ドーパミン受容体の感受性も、ブランドへのこだわりに関係している可能性があります。
価値判断の多様性があり、脳が感じる価値をあえて簡略化した数式で表すと、次のようになります。
V(脳が感じる総価値)〔内側眼窩前頭皮質の活性度〕
=w₁(U)+w₂(S)+w₃(E)
w₁・w₂・w₃は、各要素への「重み付け」
(U)は、Utilityで実用性・機能
(S)は、Statusで社会的地位・記号性
(E)は、Emotionで個人的な思い出や感情的愛着
ブランドにこだわりが大きい人は、w₂の重みが大きく、ブランドに無関心な人は、w₁の実用性の重みが極端に大きいと言えます。
日本人のブランド評価において最大の特徴の一つは、「みんなが持っているから自分も持つ」という同調性であり、安心感です。
欧米では「他人と違うこと」に内側眼窩前頭皮質が報酬(快感)を感じやすい傾向があるのに対し、日本では「集団から浮かないこと」や「正解を選んでいること」に対して、脳の不安を司る部位(扁桃体など)が鎮まり、安心感という報酬を得る傾向があります。
たとえば、ルイ・ヴィトンなどの定番ブランドを持つことは、「これを買っておけば間違いない」という社会的な「正解」を手に入れる行為ともいえます。
また、時代とともに考えてみると、バブル期は高級感や富の誇示としてのブランド品であったものが、2000年代に入ると、「みんなと同じ」であることの安心感によってブランド品が手に取られ、最近ではブランド品を「消費財」としてだけでなく、「換金可能な資産」として評価する面も強くでてきている傾向があります。