

「最近、悲しくないのに涙がこぼれる」「常に目が潤んで視界がぼやける」……そんな悩みはありませんか?実はそれ、単なる加齢や疲れ目ではなく『涙道(るいどう)』という涙の通り道が詰まっているサインかもしれません。放置すると目脂や腫れの原因になることも。
そこで、意外と知られていない涙の出口の病気と、痛みをおさえた最新の検査法について分かりやすく解説していきます。
以下の項目に心当たりはありませんか?
あてはまるものが多いほど、涙の通り道(涙道)が狭くなったり、詰まったりしている可能性があります。
「もし1つつでも当てはまり長く続いている、常にそうだという方は、涙を排出するポンプ機能が低下しているか、通り道が塞がっているかもしれません。
放置すると『涙嚢炎(るいのうえん)』という炎症に繋がることもあるため、早めに受診し確認することが大切です。」

涙は、目の外側上方にある「涙腺」で作られていて、目の表面を潤した後、目頭にある『涙点』という小さな穴から吸い込まれていき、そこから鼻の奥へと入っていきます。この時、鼻の奥へと続く一本の管が「涙道」になります。
つまり、わかりやすく言うと『涙道』は「目の排水溝」のような役割を果たしています。
この排水溝がどこかで詰まったり、流れが悪くなったりすると、涙が目から溢れ出したりして日常生活に支障をきたすようになってしまいます。
それでは、この涙道に関連する疾患をみていきましょう。
『涙嚢炎(るいのうえん)』は、涙道の一部である『涙嚢(るいのう)』という袋の中に細菌が繁殖して、炎症を起こしている状態です。
症状としては、目頭のあたりが赤く腫れ、痛みを感じることがあり、指で押すと、涙点から膿が出てくることもあります。
急性涙嚢炎になると、顔全体が腫れ上がるほどの強い炎症になることがあるので早急に抗生剤治療や処置が必要になってきます。
『治療』は、細菌感染が原因であるため、まずは「消炎・殺菌」を行い、その後に「根本原因の解消」という二段階治療になります。
痛みや腫れが強い急性期は、抗生剤の点眼、内服、あるいは点滴により炎症を鎮め、膿が溜まっていれば、皮膚を少し切開して排膿することもあります。
炎症が落ち着いた慢性期では、涙道再建によって原因となっている鼻涙管閉塞を治療します。
炎症を繰り返す場合は、「涙嚢鼻腔吻合術(DCR)」が最も有効な解決策といえます。
『鼻涙管閉塞症(びるいかんへいそくしょう)』は、涙道の出口に近い部分の『鼻涙管』が詰まってしまう病気です。
症状としては、『流涙(りゅうるい)』といって目に常に涙が溜まっている状態になり、視界がぼやけたり、目やにが増えたりします。
『鼻涙管閉塞症』の原因は、加齢による粘膜の肥厚、炎症、あるいは乳児鼻涙管閉塞のように先天的なものなどがあります。
放置すると、『涙嚢炎』を引き起こす原因にもなるので、早めの受診が大切です。
『治療』としては、涙の通り道が物理的に狭くなったり、塞がったりしているので、それを「開通させる処置」が基本になってきます。
『涙道チューブ挿入術』は、涙道の狭くなっている部分を広げ、そこに細いシリコン製のチューブを数週間〜数ヶ月間留置する方法で、内視鏡を使って行われることが多く、比較的低侵襲な手術です。
『涙嚢鼻腔吻合術(DCR)』は、チューブ挿入しても改善しない重度の閉塞の場合に行われます。
鼻の骨に小さな穴を開けて、涙の袋(涙嚢)と鼻の中を直接つなぐ「新しいバイパス」を作る手術になります。
『乳幼児(先天性の場合)』は、まずは目頭のマッサージで自然開通を促し、それでも改善しない場合は、ブジーと呼ばれる専用の針を通して膜を突き破る処置をします。
『涙点閉塞・涙小管閉塞』は、『鼻涙管閉塞症』が涙道の出口に近い部分の「鼻涙管」が詰まってしまう病気だったのに対して、『涙点』といういわゆる涙道の入り口や、『涙小管』という涙点のすぐ先の細い管が塞がってしまっている状態になります。
症状としては、いわば排水溝の「入り口」が閉まってしまっているので、点眼薬などが全く吸い込まれない感覚があります。
『涙点閉塞・涙小管閉塞』の原因は、長い間点眼薬を使っていることによる副作用や、SJS(スティーブンス・ジョンソン症候群)などの全身疾患に伴うことがあります。
『治療法』としては、入り口付近が詰まっているので、「入り口を広げる・作り直す」処置が必要になってきます。
『涙点拡張術・切開術』は、涙点が膜を張ったように閉じている場合に行われ、専用の器具を使って広げたり、少しだけ切開して入り口を大きくします。
『涙小管形成術』は、涙小管(細い管)が詰まっている場合に行われ、内視鏡で見ながら詰まりを解除し、再閉塞を防ぐためにシリコンチューブを挿入します。
『結膜涙嚢吻合術』は、涙小管が広範囲に潰れて修復不可能な場合に行われ、白目の表面から涙嚢へ直接ガラス製やシリコン製の管を通す、特殊なバイパス手術を行うこともあります。
涙道の疾患としては、他には『結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)』というものもあります。
これは涙道そのものの詰まりではありませんが、結膜と言われるいわゆる白目の粘膜が加齢とともに緩み、シワとなって涙の通り道を塞いでしまっている状態で、「涙が出る」だけでなく、「ゴロゴロする」という異物感を伴うのが特徴になっています。
『治療』は、原因が「管の詰まり」ではなく「粘膜のたるみ」であるため、「たるみを取る」治療になります。
軽症の場合は、『点眼治療(対症療法)』が選択されたりします。
これはヒアルロン酸などの点眼薬で目の表面の摩擦を減らし、ゴロゴロ感や涙の溢れを緩和していく方法になります。
『結膜焼灼術(けつまくしょうしゃくじゅつ)』は、短時間で行える低侵襲な方法で、伸びてしまった結膜を、電気メスなどで軽く焼いて収縮させ、シワを伸ばす処置を行うものです。
『結膜切除・縫合術』は、余分な結膜を切り取り、ピンと張った状態で縫い合わせる手術になります。
物理的にシワがなくなるので、涙の通り道が劇的に改善することが多いとされています。
『涙道の検査』は、どこが、どの程度詰まっているのかを確認するために、いくつかのステップを踏んで検査を行います。
『涙道通水検査(るいどうつうすいけんさ)』は、最も一般的で重要な涙道検査になります。
涙点から涙道カニューレという細い管を差し込み、生理食塩水を注入していきます。
もし涙道が正常であれば、水はスムーズに鼻や喉へと流れていきます。
しかし、涙道が閉塞していれば、水は鼻へ流れず、目の方へ逆流してきます。
この逆流の仕方をみて、膿が混じっているかどうか、どの場所から戻るかなどで閉塞部位を推測していきます。
『涙道内視鏡検査』は、直径1mm以下という非常に細い内視鏡を涙道に挿入し、直接内部を観察していきます。
内視鏡なので、詰まっている原因が炎症による癒着なのか、ポリープなのか、結石なのかを直接確認できるため、精度の高い診断が可能となり、そのまま再疎通などの治療に移行することもあります。
『涙嚢造影検査(レントゲン)』は、造影剤を涙点から涙道に流し込み、レントゲン撮影(X線造影)を行います。
正常では、造影剤は流れてなくなりますが、閉塞いている場合は、閉塞している部分に造影剤が貯留します。
涙道の形や、狭窄している部分の長さを客観的に把握できます。