

花粉のシーズン、桜の開花の声も聞こえはじめ、やっとスギ花粉の飛散もピークを過ぎ、終わりに近づいてきたかと思いきや、まだまだ花粉症が続き、喉まで痛くなるような症状まででてきて、ゴールデンウィークまで続いてしまうという人も結構いると思います。
こうした場合は、ヒノキ花粉についてもアレルギーを起こしている可能性が高いと言えます。
患者数が多いことから、花粉症というとスギ花粉症を連想する人が多いと思いますが、ヒノキもスギについで患者数が多くなっています。
スギ花粉症の有病率は38.8%で、約3人に1人はスギ花粉症です。そして「スギ以外の花粉症(主にヒノキ)」が25.1%となっています。
<参考文献>
鼻アレルギーの全国疫学調査2019(1998年,2008年との比較)―速報―耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として―
著者: 松原 篤, 岡野 光博, 他 日本耳鼻咽喉科学会会報 123巻 6号 (2020年) p.485-490 より

スギ花粉といえば、そのアレルゲンは、Cry j 1, Cry j 2, Cry j 3があります。
最近では、大気汚染物質の花粉表面への吸着、降水などと花粉との接触による花粉粒が損傷・破裂などで、アレルゲン(Cry j 1, Cry j 2, Cry j 3)が放出し、微小粒子になり、それがアレルゲンを含む複合的な微粒子として人体呼吸器系深部の肺胞にまで到達し、アレルギーが悪化するようなことも言われています。
Cry j 1は花粉外壁や花粉表面に局在していて、Cry j 2はスギ花粉内部のデンプン粒を含む色素体内に局在しています。
Cry j 3はタウマチン様蛋白質で、スギ花粉症患者の100人中27人が陽性反応を示しています。
<参考文献>
呼吸臨床 スギ花粉症:スギ花粉の主なアレルゲン(Cry j 1とCry j 2)と都市部空中の挙動, 呼吸臨床,2017, 1(1)
一方、ヒノキをみてみると、ヒノキは、「Cha o 1」「Cha o 2」「Cha o 3」といったアレルゲンを持っていて、「Cha o 3」はスギの「Cry j 3」と構造が非常によく似ていて、高い相同性があり「交差性」がみられます。
スギとヒノキのアレルゲン(特にグループ1とグループ2)は、アミノ酸配列の約70〜80%という極めて高い相同性を持っていて、そのためスギ花粉に対して作られたIgE抗体がヒノキ花粉にも反応してしまうのです。
そうしたことから、スギ花粉症の人の4人に3人は、ヒノキ花粉症予備軍といえます。
しかもタイミングも最悪で、スギ花粉が大量に飛散している時期、鼻や喉の粘膜はすでに炎症を起こしてボロボロの状態です。
そこへもってきて、構造の似たヒノキ花粉がやってくるので、通常よりも体内に侵入しやすく、新たにヒノキに対しても過敏になりやすい環境が整っているわけです。
<参考文献>
Japanese cedar and cypress pollinosis updated: New allergens, cross-reactivity, and treatment
Osada T, Okano M. Allergology International 70(3),2021 p.281-290
ヒノキ花粉は、スギよりも少し遅く、3月下旬ごろから飛散が始まり、ピークは4月で、だいたいゴールデンウィーク開けぐらいまで飛散が続きます。
天気予報などで、スギ花粉が落ち着いてきているのに「まだ鼻水が止まらないな?」と感じたら、それはヒノキの仕業かもしれません。
スギ花粉とヒノキ花粉による症状は、同じ花粉症だけど、少し違います。
スギ花粉症は、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目の痒みなどの症状があり、特に鼻の症状が強く出やすい傾向があり、顔の赤みなど花粉皮膚炎も起こしたりします。
一方、ヒノキ花粉症は、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目の痒みなどのスギ花粉症の症状に加え、喉の違和感、咳などが見られます。
特徴としては、喉や気管支への影響が出やすくなっています。
ヒノキ花粉症は、喉に症状が出やすいのですが、スギもヒノキも、花粉そのものの大きさは約30〜40μmでそれほど変わりません。
しかし、ヒノキ花粉は乾燥や物理的な衝撃によって、さらに細かい粒子であるオービクルなどへと粉砕されやすくなっています。
そして粒子が細かくなればなるほど、鼻の粘膜(フィルター)を通り抜け、喉の奥や気管支まで到達しやすくなるため、ヒノキ花粉の場合、ヒノキ時期特有の「喉の違和感」や「乾いた咳」を引き起こしたりするのです。
他には気象的な要因もあります。
ヒノキが飛散する時期は、風が強い日が多く乾燥しているので、「繊毛運動」がうまくいかずバリア機能が低下し、付着した花粉が喉に留まりやすくなったりします。
そして乾燥で荒れた喉にヒノキのアレルゲンが刺さることで、炎症がより鋭く、強く感じられるようになります。
またスギ花粉の時期から症状が出ている人は、すでに鼻が詰まっていることが多く、無意識に「口呼吸」に頼っていたりします。
すると鼻呼吸であれば、鼻腔内で花粉をキャッチし、加湿された空気が喉に届きますが、口呼吸は外気をダイレクトに喉へ運ばれてしまいます。
ヒノキ花粉の飛散時期、「喉が痛いし、熱っぽい気がする……」という場合は、花粉症なのか風邪なのか不安になったりします。
花粉症でも微熱(37.0〜37.5℃程度)が出ることがあります。しかし高熱が出ることは稀です。
鼻水は、花粉症であれば透明でサラサラしたような状態が続きますが、風邪であれば細菌感染により黄色く粘り気がある鼻水が出たりします。
喉の痛みは、風邪の場合は「ヒリヒリ・ジンジン」といった感じですが、花粉症の場合は「イガイガ・ムズムズ」と、痒みを伴うことが多くなっています。
花粉症の人のワンポイントアドバイス
花粉は「持ち込まない」が基本です。
帰宅した時は玄関前で服を払うようにします。
花粉が吸着しにくい素材、ウールよりもツルツルしたポリエステル素材の服がお奨めです。
帰宅したらすぐに洗顔、うがいを行い、もしできるのであればシャワーを浴びて髪に付いた花粉を流すと良いでしょう。